第10話 理不尽な事には屈しない!
鎧を着こんだ人たちを合わせ総勢十四名に包囲されてどことなくピンチな感じがする雰囲気の中メルさんが口を開いた。
「お待ちなさい。あなた方に何の権限があって私たちを捕まえるのですか?」
「私は副ギルドマスターだッ、私にそのような態度を取ってただで済むと思うなよッ。お前たちソイツ等を捕まえろ」
副ギルドマスターと名乗った男は部下に俺たちを捕まえる様に命令を下した。
「あまりこれは使いたくないのですが……、副ギルドマスターこれを見てもまだこの暴挙を続けますか?」
メルさんは懐から意匠の凝った短剣を出して副ギルドマスターに見せた。
「そ、それはまさか……、なぜ貴様のようなメイド風情がソレを持っているッ」
「私の所属は王室騎士団第三師団隊長メルリア・グライツです。今回の件は上に報告させてもらいます」
まさかの新情報、メルさんは騎士だったみたいだ。
「クソッ、こうなったら皆殺しにして情報を改ざんするしかないな」
副ギルドマスターはやけくそ気味にそう言うと兵士どもに手で合図をした。
「ユーマ様、ヒメナ様、ここは私が食い止めますのでお二人はお逃げください」
メルさんはどうにか俺たちだけでも逃がしたいみたいだけど兵士たちの包囲網に隙が無く逃げるのは難しいだろう。
「「だが断るッ‼」」
俺と姫姉の言葉がハモった。
「メルさん、別にアレを倒してしまっても構わんのだろう?」
俺は一生に一度は言ってみたいセリフを二つも言えて大分ハイになっていた。
「彼らは相当の手練れです。そう簡単に勝てる相手ではありません」
そうは言うけどあまり強そうには思えない。
俺はそう思い兵士たちの持っている武器にスティールを使い全て奪い取った。
「武器は全部奪わせて貰った。これでお前らの優位性は失われた。さあ降参するなら今の内だぞ」
なんか俺が悪役みたいになってないでもないがまあこの位は大目に見て貰おう。
「くそッどうなってやがる! 俺たちの武器が急に消えてなくなったぞ!」
「まさかあれが悪名高いスティールなのか!」
意外とスティールは知られてるみたいだな。
「だが盗技スキルのスティールは成功率が相当低いはず。なぜこんなに成功するんだ!」
「メルさんとりあえずあいつらをやっちゃってもいいですか?」
「はい、向こうが先に剣を抜いたので正当防衛です。お好きになさって下さい」
「では遠慮なく。さあ姫姉あいつらを懲らしめてやろう」
「久々に腕が鳴るよ」
俺たちはそう言いながら目の前で明らかに戸惑っている兵士たちを一方的に倒していった。
それから数分もしないうちに立っているのは副ギルドマスターだけとなった。
「はは、さあ副ギルドマスターさん。もう立っているのはあなただけになってしまいましたよ。もうあなたに味方する人は誰も残っていないみたいですよ」
軽く脅しを掛けてみると副ギルドマスター漏らしてしまった。
「た、頼む。見逃してくれ。金ならいくらでもやる。だからお願いだ、許してくれ」
副ギルドマスターは頭を地面につけて懇願した。所謂ジャパニーズDOGEZAだ。
この世界でも土下座ってあるんだなぁとか事を考えているとギルドの戸が勢いよく開かれ、大勢の騎士たちが押し寄せてきた。
「善良な市民からの通報で参った。王室騎士団の人間が多勢に襲われたと聞いて駆け付けたがこれはどういう状況なのだ」
騎士が戸惑うのも無理はないだろう。なんせガチガチに武装した兵士が全員倒れ伏しているのだから。
「私が王室騎士団第三師団隊長メルリアです。そこに倒れている兵士が不届き物です。連れて行って下さい。後の処理は任せても宜しいですか?」
メルさんが短剣を騎士に見せ、これからの事を軽く指示していた。
「はっ、お任せください。彼らは私どもが責任をもって連行いたします。ところで、なぜそのような格好を?」
「これは第一王女の命令です。好きでこんな格好をしているわけではありません」
なんで王室騎士団の人がこんな格好をしているのか気になってたけど、お姫様の命令だったのか。
「これは失礼しました。では我々は彼らを連行いたしますのでこれにて」
そう言い兵士たちを連行しようとしていると老人がこちらに歩み寄って来た。
「ちょっと待ってもらえんかの」
「ギルドマスター! 私は無実です! 嵌められたのです! 助けて下さい!」
さっきまで項垂れていた副ギルドマスターが急に老人に助けを求めた。と言うかこの老人がギルドマスターなのかよ。
「黙れっこの恥知らずが! 貴様などもう副ギルドマスターではないッ! ただの犯罪者じゃ! 騎士の皆さん少しこの馬鹿と話をさせてはもらえないだろうか?」
「これはギルドマスター。話をするのは構いませんが早めに済ませて下さい」
騎士の一人がそう言うとギルドマスターは元副ギルドマスターと話をし始めた。
「ふう、面倒なことがありましたがユーマ様、ヒメナ様、お怪我はございませんか?」
「俺はこの通りピンピンしてますよ」
「私もこの位では傷一つつきませんよ」
俺と姫姉はメルさんに怪我がないことをアピールした。
「それはよかったですが、あまり無茶なことをしないで頂きたいです。あなた方になにかあれば私が責任を取らされるのですよ」
「あはは、それはご愁傷さまです」
「しかし助かったのも事実ですし、ありがとうございました。流石に一人であの人数は少し手に余りましたし」
まあ多勢に無勢だったし、数の暴力はなめてかかると痛い目を見るからな。
「まあ私と優君にかかればあの倍は対応できますよ」
まあ今回の戦いでは姫姉はユニークスキルを使ってなかったみたいだし、あれならユニークなしでも倍は行けるだろうしユニークスキルを使えばその倍は相手に出来ると思う。
「そうですか。ではとりあえずここに居てももう何もありませんし、他の場所でも見に行くか王城へ帰還なさいますか?」
「待ってくれ。まだこの冒険者ギルドでやり残したことがあるんだ」
「はて、何かありましたでしょうか?」
「「もちろん。冒険者ギルドに来たら冒険者登録をしなきゃ」」
またしても姫姉とハモりながらメルさんに詰め寄った。
「はぁ、冒険者登録ですか。なぜそのようなことを」
やっぱり異世界に来たらまずは冒険者登録をして身分証明書を手に入れないと。
「それは、ロマンです! なのでさあ行きましょう」
俺と姫姉はメルさんを引き連れて職員がいるカウンターまで行くのだった。
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