第9話 テンプレ通り絡まれた

 王城から飛び出し俺たちは自由を満喫していた。

 街並みは中世ヨーロッパのような感じだった、テンプレだね。

「ユーマ様、ヒメナ様、まずはどちらに向かわれますか?」

「「冒険者ギルド!」」

 俺たちは口をそろえて同じ場所を言った。

 やっぱり異世界に来たら冒険者ギルドで絡まれないとな。

「あそこはあまりオススメできませんが、ですがまあ私がいるので大丈夫でしょう。それでは案内いたします。くれぐれもはぐれない様にお願いします」

 それから俺たちはメイドのメルさんに連れられて冒険者ギルドにやって来た。

 冒険者ギルドの外観は結構立派で人の出入りも多い。

「それでは入りましょうか」

 メルさんに促され俺たちは冒険者ギルドの戸を開いて中に入る。

 ギルド内は少しアルコールの匂いがしていた。

「この冒険者ギルドは昼間はあまり人がいません。大体の冒険者は昼間に依頼をこなしているのでここに居るのは、依頼が早く終わった者か依頼を受けていない冒険者です。何か質問はございますか?」

「俺達でも冒険者になれますか?」

「なれますがあまりオススメは出来ません」

 そんな話をしていると酔っぱらった冒険者らしき人物がこっちにやって来た。

「おう坊主、俺もソコの美人ちゃんたちと遊ばせてくれや」

 下卑た笑みを浮かべた冒険者は俺たちに話しかけてきた。

「すまない、俺にそれを決めることは出来ない」

「そうか、なあ美人ちゃん。俺と遊ぼうや」

 俺がそう言うと冒険者は二人の方に向き肩を掴んで引っ張った。

「すいませんが放してもらえませんか。忙しいのであなたの相手をしている暇はありませんので」

「そうよ、放しなさいよ」

 メルさんと姫姉がそう言うが冒険者は引き下がらなかった。

「おいおい俺様を誰だと思ってるんだ。Dランク冒険者のゴルゾ様だぞ」

「すいませんが存じ上げません」

「私も知らない」

 そりゃ姫姉は昨日この世界に来たんだから知ってる方がおかしいだろう。

「俺を知らないだとッ。なら分からせてやる。ついて来いッ」

 そういうとゴンゾは姫姉とメルさんを強引に引っ張って行こうとした。

 だがそれは叶わなかった。

 なぜなら姫姉が肩を掴んでいた手を強引に引き剥がしたからだ。

「くッ、なんだこの力は放しやがれッ」

 ゴンゾはメルさんを掴んでいた手を放すと姫姉に殴りかかった。

 姫姉は迫りくる拳を空いている手で軽く受け流し掴んでいた手を放した。

 するとゴンゾは体制を崩して倒れてしまった。

「女の子に手を挙げるからそうなるのよ」

 姫姉はかっこよくそう言い放つとその場で決めポーズをとっていた。

「クソッ、なめやがって。もう許さねえ、半殺しにして立場を分からせてやるッ」

 ゴンゾはそう言うと腰に携えた剣を抜き放った。

「メルさんこの場合はやり返しても問題ないですか?」

 姫姉がメルさんに質問した。

「はい問題ございませんが、素手で剣を持った冒険者に挑むなど危険です。ここは私が囮になりますので逃げて下さい」

「大丈夫ですよ、あの程度なら私一人で取り押さえれますよ」

 姫姉がそう言うと同時にゴンゾが斬り掛かって来た。

「危ないっ」

 メルさんがそう叫ぶ、だが姫姉は身体を少し反らしてそれを避けてしまった。

「クソッ避けんじゃねぇ」

 それから数度の剣戟を全て紙一重で躱していった。

「そろそろ終わりにするかな、もう見切ったし」

 そう言うと姫姉は剣を振り下ろすゴンゾの懐に潜り込み剣を叩き落とすとそのまま足を掛けてゴンゾを転ばした。

「まだ続ける?それとも降参する?」

 姫姉は叩き落とした剣を拾いゴンゾの首に軽く当て問い掛けた。

「参った、降参する」

 ゴンゾは両手を挙げて降参の意思を示した。

 姫姉は剣を引きゴンゾに返してこっちを向いた。

 その瞬間ゴンゾがニタリと笑い姫姉に斬り掛かって来た。

「ははっ馬鹿が、死ねぇッ!」

 三下のようなセリフを吐き斬り掛かったゴンゾは次の瞬間、姫姉が無限収納アイテムボックスから取り出した真銀ミスリルの剣によって腕を斬られていた。

「はへ。あ、あぁ俺の腕があァッ、いてぇ、いてぇよッ、誰かッポーションをッ早くポーションを、死んじまうッ」

 ゴンゾは腕を斬られたことに気付きのた打ち回りながら周りに助けを求めたが、誰も助けようとはしなかった。

「大丈夫でしたかヒメナ様。お怪我はありませんか?」

「大丈夫ですよメルさん。あの程度の技量じゃ私に傷一つ付けれませんよ」

 姫姉はメルさんに笑ってそう答えた。

「ですが卑怯にも不意打ちなど人として最低です。この冒険者は即刻衛兵に突き出します」

 そんな会話をしていると高そうな服を着た男とその服を少しグレードダウンさせた服を着た男がこちらにやって来た。

「貴様らに一つ聞きたいのだが、ここで何があったのだ?」

 高そうな服を着た男は剣を持っていた姫姉に高圧的な態度でそう問い掛けた。

「そこにいる男がいきなり斬りかかって来たので返り討ちにしました。何か文句でもありますか?」

 姫姉は少し声を荒げて男の問いに答えた。

「そうか、なら事情を聞くためにも君たちを捕らえさせて頂きます。こやつらを捕らえろッ」

 男がそう言うと奥から鎧に身を包んだ人が十人ほど出てきて俺たちを包囲した。

 

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