第5話 魔王の間に誰もいない

「何故魔王の間に魔王がいないんだ!?」


「それは私が魔王だからだ」


「どうして後ろにいる君が!?

 君は僕の仲間で、魔王な訳がないじやないか……」


「勇者の動きを逐一監視するには、

 パーティーに入っていた方が都合がいいからな」


「冗談はやめなよ。

 もし君が魔王なら、ここに来る前に僕を殺す機会が一杯あっただろ?」


「……ふっ……思ったより、お前との冒険が楽しくてな……

 ここまできてしまったのだ」


「またまた、厨二病こじらすのは話し方だけにしてくれよ!」


「ふん、お前はお人好しすぎるのだ。

 四天王すら倒さずここまで来たではないか!」


「当然だ、魔物も生き物。罪なくば殺してはならない。違うか?」


「そう思う人間はお前くらいだ……

 みんながおまえのようであるなら、世界も平和だろうに」


「とはいえ、倒した魔物も何匹かはいるぞ」


「殺した魔物は、魔界でも裁かれるべき者のみ。

 お前は見事、魔物の警察役をこなしてくれただけだ」


「そうか……

 でも、僕が本当に強ければ、殺さずに済む方法もあったはずなんだ……」


「案ずるな。ともかくだ。

 魔王たる私と、勇者であるお前は、ここで戦わねばならぬ!」


「どうしてさ! 魔王はいなかった。それでいいじゃないか!」


「勇者が魔王の前まで行きました。

 魔王はいませんでした。そんなの誰が信じる?」


「……それもそうだな。……でも、僕にはお前を殺せない」


「知っているさ。ずっと一緒にいた、仲間だものな。

 しかし、我は王、魔界のため、勇者は倒さねばならぬ」


「どうしても、君が望むなら、戦おう。

 でも……理由を教えてくれないか?」


「魔王が死ねばどうなると思う?

 ……魔界の法はくずれ、暴走する」


「ああ、そうか。わかったぞ。

 勇者は死んだって、次の、新しい勇者が擁立されるだけ……何も変わらない」


「そうだ。故に魔王は死んではならぬ」


「魔物と人間が共存できればいいのに……」


「それは、無理なのだ」


「勇者の僕が話を付けるなら、もしや……うまくいくかもしれない!」


「無理なのだよ。人間は魔族と違って寿命が短すぎるからな」


「どうして!? やってみなきゃわからないじゃないか!」


「過去の魔王が試みたのだよ。一旦は合意するが――」


「なら、平和になるじゃないか」


「―—王の世代が変われば、すぐ反故になり。

 魔王を退治するという勇者に倒された」


「……人間は魔物がいること自体が許せない、ってことか……

 わかった。僕が倒されるよ」


「待って!」


「君に僕は殺せない。 でも、僕が死ねば、君は生き残れるだろ?」


「新しい勇者が来て、私が殺されるかもしれないぞ!?」


「大丈夫。君は十分強い……。僕は己の剣で、死ぬとするよ」


「ごめんね……勇者。

 お前が生まれ変わるまでに、こんなばかげた仕組みをなくしてみせる……」


「……無理な約束はしちゃだめだよ。絶対果たそうと、無茶するから……」


「無理じゃない。

 あと、どれほどの時が経とうとも、必ず私はお前を、待つ。だから……」


「……だから……?」


「生まれ変わっても、また私に、会いに来て、くれないか」


「そっか。魔物は長生きだものね…… わかった……」



パーティーの中に魔王がいる話を書いてみたのだけど、きづいていたら、なぜか勇者が魔王Loveで、自害する話になってた。よくわかんないけど、きっと魔王も勇者くんLoveで、勇者が生まれ変わったら、そのころには、もう魔王とか魔物とかいなくて、魔王ちゃんが、すぐに迎えいに行って、お互いが見た目は変わってるけど、すぐに気づいて、幸せに暮らしました、みたいなハッピーエンドになると思う。でも、魔王の寿命って、その生まれ変わった勇者よりも、さらに長いから……結局、幸せに暮らした先は、魔王がまた一人になるのかな……。

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