第4話 魔王は魔物の長


「魔王! 観念しろ!」


「勇者ごときが、本当に私を倒せると思っているのか!?」


「いや……そうじゃなくてな。魔王。お前、俺の部下になれ」


「なっ!? そんな話、どうして魔王である私が聞かなければならぬのだ」


「あのさ、魔物は、強い者に従うんだよな?」


「当然だ。だからこそ、最も強き私が、王となった」


「……魔物は相手の強さを事前に計ることができる、そうだな?」


「うむ……。して、何が言いたい?」


「だったら、わかるだろう。お前に勝ち目は無い」


「だとして。お前は魔物に徒(あだ)なすもの。

 私は魔王。勝ち目無くても戦うは必然で……」


「話を聞けよ魔王。俺は別に悪い話をしに来たんじゃない」


「部下になれ、というのが悪い話ではなく何なのだ!」


「じゃあ、このまま俺がお前を倒したとする。

 そうすると、魔物はいなくなるのか?」


「いや、それはない。魔物は、新たな魔王を擁立(ようりつ)するだけだ」


「ならお前を倒してもムダじゃないか。

 それなら生かして、コントロールするほうがいい」


「魔王には誇りもある。部下にはならぬ。それなら死んだ方がマシだ!」


「実はさ、俺はもう詰んでるんだ。

 お前を倒しても、倒さなくても、俺の命が危ない」


「ふん。当然だ。人間は汚いからな。

 祝勝の儀式だとかいって勇者を呼び出し、

 民衆の前で後ろからぷすっといくのだろう」


「そうそう。なんせ、魔王がいなくなれば、勇者は最大の脅威だからな。

 そこでだ。人助けと思って……」


「ならば、お前が私の部下になれ」


「無理だ。勇者は人間の敵、魔王の仲間扱いされて、死期をはやめちまう」


「それは事実なのだから、仕方なかろう?

 それとも、私をを口説くのに全人類を敵にする覚悟も無いのか?」


「いや、口説いているわけじゃ……」


「……ひとつ尋ねる。お前はそんなに生きのびたいのか?」


「当然だろ!? 俺は、死にたくないから、ここまで来れたんだ」


「ならば、私から折衷(せっちゅう)案を提案しよう。

 我は人間に姿を変える。パートナーとして共に人の国へ向うのだ」


「それで、魔王を倒したと報告するわけか。

 でも、それだと、俺はやっぱりコロされる」


「安心しろ。そのときは命をかけて、私が護(まも)る」


「なんでそうなるんだよ! 本気か!?」


「パートナーに先に死なれては困るからな」


「いきなり、何を言い出すんだ、魔王!?」


「一人はなにかと退屈だ。

 それに何を驚く。最初に口説いてきたのはそっちだろう?」


「そういう意味で口説いたわけじゃ……」


「取り消しは出来ぬぞ。

 その後、魔王としてこの国を統(す)べてもらうのだからな」


「なんで俺が魔王になるんだよ!


「魔王とは、この世で一番強き者。

 最初にお前がいったことだろう? ならばお前こそがふさわしい」



やっとセリフだけで書けた!

なろう系とかでもよくある「倒したその後」っていうお話で、ここに出てくる魔王は、過去には勇者だった。そして、普通に魔王を倒したけど、魔王を倒しても、世界は平和にならないことを知り、命を狙われ、結局、人間界を捨て、魔物の世界へはいった。

 そこで、強さを認められ、魔王となって、すべての魔物が、人間に迷惑をかけないよう、統べて来た。でも、魔王は後悔してた。得た終わりなき命は、ひとりだと、余りにも長く、退屈で、つらかった。

 長い時間の中で、人間に多大な迷惑をかける「特別変異」がでてきて、再び勇者が生まれ、魔王を討伐しよう、という機運が高まった。その時魔王が思ったことは「助かりたい」じゃなくて「ああ、そろそろ順番を誰かに譲りたいなあ、死にたいなあ」という感じ。

 そこに、そこそこ動けて、なんか、魔王目線から見て、甘い台詞をかけられると、ぽろっと心を許してしまった、みたいなチョロイン的ラノベなお話でした。

 物語って「2人が一緒にくっつきました。おしまい」っていうのが多いけど、本当にそこで終わりかっていうと、よくわからなくて、その後どうなるか、のほうが大事なんじゃないの? とか思うことも多いんだよね。

 でも、今回書いたような「魔王を倒した後」の話って、実際に書いたとき、どこが「終わり」にふさわしいのかいまいちわからなくて。やっぱりハッピーエンドになるのは「世界の頂点」になるところなのかな。それは一度魔王を倒した以上の幸福なの? っていうと、やっぱり終わりどころがわからない。

 例えば、幸せに人生を過ごし、いい形で年を取って、亡くなりました。は、ハッピーエンドなのかな?


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