第14話 疲未
「まずさぐりん。さっきはごめん。なんだか脅迫したみたいになって...。でもそこまでしないとついて来れないと思った。私は言いたいことがあってついてきたの。そして、なんで私があなた達の昨日のことを知っているか話す前に言っておかないといけないことがある。」
さっきまでのニコニコ顔と打って変わって冷酷な顔になる。
俺はそれを少し怖いと思ってしまった。
「秋咲、唯未」
噛み締めるように雲水は呟いた。
「なによ」
ぶっきらぼうに秋咲は答える。
「あたし、あんたが嫌い。」
「あっそ。」
さすがクール系美少女秋咲。人望の高い雲水に直接「嫌い」と言われてもビクともしない。
でもなんで雲水は秋咲のことが嫌いなんだろう。話してるの見たことないけど。
考えているうちに雲水は続けた。
「だから私はあなたが持っていない深くてひろい交友関係を手に入れた。けれど、もうそんなもの要らない。実は私、昨日秋先の後をつけたの。」
「えっ?」
ここで秋咲のポーカーフェイスは崩れた。
「そこですべて聞いた。さぐりんの過去やあなた達のテニスの試合も見た。」
ああ、そういうことか。少しずつ繋がってきた。
「あんなもの見せられたら誰でも惚れちゃうでしょ。もちろんさぐりんと付き合えば、秋咲が好きなさぐりんを手に入れて優位に立てる。そういう下心もある。でもそういうのを抜きにしても私は生まれて初めて本当に好きな人が出来たの。」
そう言って雲水は一旦深呼吸して笑顔をこちらに見せた。
「だからさぐりん、私と付き合ってください。」
なんか色々わからん。なんで昨日のやつを見ただけで俺なんかのことが好きになるんだ?
でも、なんかもういいや。
ファミリアたんが俺に笑いかけてくれて告白してくれた。なら答えはひとつ
「うん。よろし──」
「だめえぇぇぇぇぇぇぇえ」
あぶねぇぇえ。秋咲が叫ぶまで雲水のことを本気でファミリアたんだと思ってた。
よし、秋咲、ここはガツンと言ってやれ。
と横目で秋咲を見ると、さっきのクールな秋咲はいなかった。プクーと口をふくらませて、ほっぺを赤くしている。
何これ、可愛い。
「探君の正体は私が先に知ったんだよ!確かに昨日の探君をみて惚れちゃうのはしょうがないけど、私の方が先に探君のことを知ったの!だから私が探君と付き合うの~~~~~!!!」
ん?話が変な方向になってるんだけど?
まぁよくわかんないからいいや
こんなに可愛い生物が付き合うって言ってるんだし、答えはひとつ。
「うん。付きあ──」
「は!?そんなの関係ないじゃん!しかも何その喋り方。いつものクールさはどうしたんですかーー?」
あっぶねぇぇぇえ。またOKするところだった。俺いつからこんなにチョロくなったんだろう.....
「そっちこそそんなの関係ないじゃん!というか下心ありで付き合うとか舐めてんの?」
「そっちだって絶対あるでしょ」
「あぁん? バチバチ」
「あぁん? バチバチ」
うわぁすげぇバチってるよ。関わりたくねぇ。でも俺のせいでこうなってるんだよなぁ。はぁ止めるか。
この場合すぐに解決する方法は俺がどちらかを選ぶということ。
けど、今は選べないから....
「高校二年が終わる頃に必ず選んで付き合うよ!」
言ってしまった。
まぁその時になったら誤魔化せばいいか!
そう思っていると雲水がポケットからゴソゴソとなにか取り出す。
「言質とったよ!!!」
盗聴器だった。
うそぉぉぉおおおん!!
もうダメだ。ただ平穏に過ごしたいだけなのに....
俺は、明日から始まる不穏な日々を覚悟したのだった.......
────────────────────
こんにちは。嵩いの李です。皆さん、いつも読んでくださって、本当にありがとうございます。
レビューやいいね、コメントして下さりますと、とても喜びますし、モチベーションがすごく上がります。質問等もお待ちしております。
毎日投稿を心がけておりますが、嵩いの李は
これからも『ラブコメ主人公は爪隠す』をよろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます