第30話 2年生最強の実力
「フーフーフー逃げずによく来たな、褒美に必殺魔法で相手をしてやろう。」
ゆったりとした口調とそよ風のように優しい声音にまったくそぐわない台詞を使う魔法少女。
「これで103回目か、今日こそ受けきって見せるぞ!!」
全身を鎧で覆い、その上からはっきり視認できるほど魔力で守りを固めた男が叫ぶ。
「では行くぞ!!
必殺!翠玉の颶風エメラルド・ハリケーン!!!」
―――――――――――――
決闘場観覧席
「いや~初めて来たけどすごいですね。」
ここで戦ったのは2回だけど観覧席に入るのは今日が初めてだ。
遠くてよく見えないと思っていたがそんな事は無かった。
アリーナ部分の上に決闘の様子が見えるように大きな映像が写し出されている。
決闘部いや審判ちゃんの視界を写した物らしい。
2つ並んだ画面にはまだ1人の男しか見えない。
「あの人が風たんですか?」
前に座っているライさんに尋ねる。
「違うよ~。あの人はドMマン。」
「ドMマン??」
何だそれ。
鎧を着たその姿からはそんな変態感は微塵も感じない。
確かに武器らしい物は持っていないようだが
「もう風たんと戦うの100回は越えてるんじゃないかな。全然相手にならないのに何回も勝負してるんだよ?」
「100回って、すごいですね。」
挑む方もすごいが毎回付き合ってるその風たんって人も大概だな。
「まぁ風たんに挑むのはあの人くらいだよ。多分兄たんの次に強いよ。」
兄たん、ジンさんの事か。
「やっぱりジンさんって強いんですね。お二人は精霊……なんですか?」
「そうだよ~、双子なのだ!」
双子……。
「でも精霊って人間と契約しないと魔力を使えないんじゃ?」
「あ~普通ならね。私達は精霊と人間の間に生れたからさ。っと来た来た。」
右側の入り口からゆっくりと入って来たのは
コスプレ??
緑を基調としたいかにも魔法少女!といった格好をした女の子。
年は俺の一つ上、17らしいが
見た目は中学生くらいだ。
「あの人が?」
「そう、風吹風香ちゃん多分学園一強いよ。」
ライさんの隣に座るジンさんが言った。
「えー!一番は兄たんだよ!」
「いや~、俺なんか底辺もいいとこだ。」
「そんなに強いんですか?」
「うん。本気でやればね。見てれば分かるよ今日は遊びみたいだし。」
遊び?
『さぁ!!皆様大変長らくお待たせしました!!言わずと知れた名物試合!ヨロイVS風吹!!本日で合計103回目の挑戦です!!今日こそ耐えきる事が出来るのでしょうか!!?それとも今日も!吹き飛ばされてしまうのか!!?3年Aの5ヨロイVS2年Fの20風吹!試合開始です!!』
――――――――――――――
「向き合って!礼!!!構え!!始め!!!!!」
審判ちゃんの合図で二人が動く。
ヨロイは足を踏ん張り防御の姿勢をとる。
風香は短い杖をクルクルと器用に回し魔力に包まれていく。
「では行くぞ!!
必殺!翠玉の颶風エメラルド・ハリケーン!!!」
風香が叫ぶと全身の魔力が緑に輝き、
その刹那、ヨロイの足元から竜巻が巻き起こった。
「フーフーフーもうこれでダメージを受ける事は無いようだな。」
下から上に風が突き抜ける。
そね中心にいたヨロイはしかし微動だにしていない。
「当然、今日こそは受け切る。」
「フッでは次だ
超絶奥義!踊る暴風ダンシング・トルネード!!!」
風香が横に手を薙ぐと
先程の竜巻が四方からヨロイに襲いかかる。
「うおおおおおおおおお!!!」
鎧の上にさらに魔力の鎧を纏い気合いの雄叫びを上げるヨロイ。
魔力を通さないこの透明な壁のせいで分からないが普通なら攻撃に耐えるどころか地に足をつけている事すら出来ないはずだ。
4つの竜巻は1つに重なりとてつもない回転を見せる。
しかしそれでも、
「へ~やるね~ヨロイちゃん!」
のんびりした口調から一転、心底驚いたように明るい声で風香は言った。
「ハァハァ。当然だ。さぁ次で終わりなんだろ?来いよ。」
「耐えられると良いね、やるよシルフォン。」
ニコッと屈託の無い笑顔を浮かべ
「嵐テンペスト」
さっきまでの大袈裟な必殺技と違い何の気負いも無く呟いた。
――――――――――
「…………これが遊び……なんですか?」
「言ったでしょ、兄たんの次に強いよって。」
今アリーナに立っているのは風香一人だけ。
勝利宣言を受け立ち去る彼女の後ろには巨大なクレーター
その中心には先程まで人間だった物が転がっている。
細切れになった鎧と肉、周りには血が飛び散っている。
これが2年最強の力。……異次元すぎる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます