第28話 勇者部部室にて


 部室棟

 様々な部活の部室や備品置き場、更衣室など、部活関連の教室がある校舎だ。

 ここの3階に勇者部の部室がある。


 今俺はソエルさん、カマセさんと共に部室前にいる。

 勇者部に関してはあの後特に何も手伝ったりしていない。

 ソエルさんとカマセさんも同じようでユウちゃんが一人で活動していたみたいだ。

 活動と言ってもポスターを作った事しか知らないが。


 それで今日こうして部室に来たのはユウちゃんに呼ばれたからだ。

 本人曰く

「部室が完成した!みんなで見に来てくれ。」

 らしい。部室を飾る前に何する部活なのか教えてくれって感じだ。


「じゃあ行きますよ。」

 そう言って俺はドアをノックする。


 コンコンコン

「どうぞ。」


「「「お邪魔します。」」」

 …………。中に入るとそこには


「普通……だね。」

 意外な事におかしな物は何も無い。

 ソファーとテーブルが何個かあるだけの部屋。

 もっと鎧とか剣が並んでるもんかと思ったが。


「うむ。まぁ、あまり物があっても邪魔なだけだからな。」


「それで何をするかは決まったんですか?」とソエルさん。


「ああ。やはり勇者たる者、人助けをしないといけないし、強くなくてはならない、とゆう事で依頼を受ける事にしようと思う。」


「依頼って確か3年生以上じゃないと受けられないんじゃないの?」

 依頼とは

 勿論魔法使いが受ける依頼の事だ。

 S~Cまでの難度が定められ、自分の実力にあった依頼を受けられる。

 と言っても俺達はまだ学生なのでBランクの依頼までしか受けられない。

 まぁ3年生になってからの話だが。


「それは個人の場合だな。私達が1人で依頼を受ける事は出来ないが、

 ついて行く事は禁止されていない。」


「へ~そうだったんだ。じゃあ助っ人みたいな感じの事やるの?」


「うむ。そうだ!だが適当な者について行くよりは、やはりうちに入ってもらって好きな時に行けるようにしたいな。」


「なるほどね~。そんな物好きな人いればいいけど。」


「フンッいるに決まっているだろう。魔法使いを目指す者は皆勇者を目指していると言っても過言ではない!」


「そうなの?ソエルさん。」


「いえ過言だと思いますけど。そもそも魔法使いを目指す人はほとんどお金目的で正義の為に戦うなんて聞いた事ありませんし。」

 うわぁ。さすが魔界。


「はぁ。やれやれこれだから精霊は。」

 手を広げて首を振るユウちゃん。


「は?何ですか?似非勇者が、何か言いたい事があるならはっきり言って下さい。」

 ソエルさんがユウちゃんに掴みかかる。

 またこのパターンか。勘弁してくれよ。


「まぁまぁ二人とも落ち着いてよ。」


「「うるさい!」」


 うるさいのはどっちだよ。

「あはは、まぁ一旦離れてさ。せっかく同じ部活するんだから仲良くしようよ。」


「私は数合わせで入ってるだけなので関係ありません!」


「フンッこいつは一人じゃ寂しいだろうと思って入れてやってるだけだ!」


「は!お気遣いどうもありがとう。じゃあ辞めてもいいわけですね?私が抜けたら定員数満たせず創部して3日で廃部ですけど!」


「好きにすればいい。廃部になるのは一週間後、それまでに部員を一人見つければいいだけの話だ!」


「あはは!こんな意味不明な部活に人が来ると思ってるんですか?」


「ハハハ!バカな精霊には理解出来ないのか、可哀想に。」


「馬鹿だぁ?」

「何だやる気か?」

 二人が近距離で睨み合う。

 これで勇者目指すんですか?


「あーもう!落ち着いてよ!こうなったら必殺!イケメン召喚!お願いしますカマセさん!」


「ウワワワ!!ヒカルさん押さないで下さいイイイイイイイイ!!!」


「カマセさんそれ人間界では押せって意味なんですよ!」

 抵抗するカマセさんを二人の元にぐいぐい押し込ませる。


 飛んで火に入る夏の虫、

 喧嘩中の美少女2人の前にイケメンを置けば当然


「「さっきからうるさいんだよ!下僕のくせに!!」」


「フギャッ!うぅ痛いです。」

 殴られるよね。うん。


「うぅうヒドイですよ。ヒカルさん。なんでニコニコしてるんですかぁ。」

 床に倒れたイケメンが涙目で俺を見上げている。

 ヤバイな。興奮してきたゼ。


「何なんですかさっきから邪魔ばっかりして!ヒカルさんはどっちの味方何ですか!?」


「フンッ私に決まってるだろ、バカめ。」

「また馬鹿って言ったな、てめぇ!」


 おいおいおいてめぇとか言ったらマズイだろ。


「私ですよね?」

「私だろう?」

 優しい声音に可愛い笑顔。なのに何なんだこの霊圧は!?


「……何………だと……」


「「あ"?」」


「ヒィ!?」

 ものすごく怖い顔で睨まれた。


「あの~その~」

 あー!こんな時俺がイケメンだったなら!いやさっき殴られてたか。


 どうするヒカル?どうすればこの場を穏便に収められる?


 ①ソエルさんの味方

「ああそうか!もういいお前など死んでしまえ!」

 ズバッ!!


 ②ユウちゃんの味方

「そうですか。分かりましたさようなら。」

 ボォッッ!!


 ③それ以外

 論外だ。二人に殺られる。


 何だろうそんなはず無いのに殺される未来しか思い浮かばない。

 さすがに3日連続は駄目だろ。勘弁してくれよ。

 あぁ神様仏様!助けて下さい!


 その時

 俺の祈りは

 通じた。


 ガァン!!

 扉が勢いよく開かれ


「コラー!!弱いものイジメはこの私が許さないぞ!月に変わってぶちのめす!!」


「お取り込み中すみません。何やら不穏な空気だったので。」


 そこにいたのは3メートルを越えそうな大男とその肩に乗った幼女だった。

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