第26話 ユウちゃんと勧誘ポスター ~バットエンドその4~


ユウちゃんが部活を作ると言い出した翌日。

ソエルさんとカマセさんは用事があると言って図書室に行った。


教室には俺とユウちゃんだけ。


「ジャジャーン!!どうだヒカル。良くできてるだろう?」

そう言ってユウちゃんは一枚の大きな紙を見せてきた。


「……来たれ勇者?何これ、習字みたいな。」

A1サイズくらいの大きさの白い紙に筆書きで来たれ勇者!とでかでかと書かれていて、端っこに部室棟3階勇者部部室にて待つ!とある。


「勇者部の勧誘ポスターだ。我ながら上手く書けた。」


まぁ確かに上手く書けているんだろうが

あ、その前に解説。


今更ながら俺が魔界の人達と普通に話せるのは学生証のおかげである。

魔法使いは職業柄様々な土地に行くため色々な言語を使えないとならない。

でも勉強してる時間なんて……、

助けてドラ○もーん!!


ってな感じで誕生した魔道具である。

勿論魔法使いの免許みたいな物の事で、

この学生証はその簡易版みたいな物だ。

話が出来るのはこの第7魔界と近くの魔界の言語のみ。

とは言ってもここの言語は標準語みたいな物らしいのでほぼどこに行っても話は出来るとの事。

で、それと同じように魔界文字も読めると言うわけだ。残念ながら自分で字を書く事は出来ないが。


とゆうわけで字は読めるが

「何で文字だけなの?」


「カッコいいだろう?」

例によって兜に隠れて表情は読めないがその声は自慢気だ。


カッコいい?カッコ悪くは無いだろうけど

「うん。でも勧誘ポスターとしてどうなの?まったく何をするのか伝わらないんだけど。」


「フンッ魔王のお前には分からないだろうがこれを見た勇者には絶対に伝わるはずだ。」


「……あ~そう言えば俺が勇者部に入って大丈夫?本物の魔王じゃないとは言っても学園の皆が俺の事、魔王って呼んでるし。」


「フンッ馬鹿馬鹿しい有象無象の言う事など気にしていたら魔王など務まらんだろう。」


「いや、だから魔王じゃ」


「それにお前は勇者の資格を持っているだろ?」


「勇者の資格?」

そんな血筋は無いはずだが。

それともあれか、英雄色を好むって言うし変態だって言いたいのか?


「そう。勇気だ。」


「勇気?」


「そうだ。私がソエルを斬り殺そうとした時、お前はあいつを守った。最初の時もそうだし、決闘の後もそうだ。そしてついこの前もお前は生徒会長を守るために一人で戦おうとしたじゃないか。」


「それは……自分で言うのもなんだけど、勇気じゃなくて無謀ってやつだと思う。」

実際ユウちゃんとソエルさんには一回殺されてるし、カグツチさんの時は皆が助けてくれなかったら確実に死んでたしな。


「フンッ自虐的な奴だな。無理、無駄、無謀、これを聞いて諦める奴が勇者になれると思うか?あの時のお前は間違いなく勇者だったぞ。」


「あ、ありがとう。」

何だろう先週ずっと変態と一緒にいたからだろうか。

この感じ、すごくドキドキする。


「ん?どうしたんだ?赤くなって、照れてるのか?」

そう言ってユウちゃんは俺の頬に右手を触れさせ顔を寄せる。


「なっ!?べっ、別に照れてるわけじゃないし!」

兜の隙間から覗く、嗜虐的な視線に耐えきれず横を向く。


「ふふっ可愛い奴め。」

そう言ってユウちゃんは右手を離し、


コトッ

とゆう音が聞こえた。

多分兜を外したんだろう。


「照れてないならこっちを向いてくれよ。」


今度は両手で俺の顔を優しく挟み、正面を向かせようとしてくる。


熱くなった顔にひんやりした籠手が触れて気持ちいい。

ううう、抵抗出来ない。

されるまま正面を向くとそこには頭から角が生えた金髪美少女の顔が。

至近距離に。


「やっぱり照れてるじゃないか、顔が真っ赤だぞ。」

「ちちちち、違う違う。き、今日は朝から熱っぽくて」


「そうか。なら私が計ってやろう。」

そう言ってユウちゃんはおでこをくっつける。

「………。(ドキドキ)」

「………ふふっ。」

吐息が触合い、目が合うと。

ユウちゃんは目を閉じ、頬を挟んでいた手を俺の肩に置く。


据え膳食わぬは男子の恥……か。


ユウちゃんの腰に手を回し、今まさに唇が触れようと


ガラガラガラ

「「!?!?」」

「……何してるんですか?」


いきなり教室の扉が開き、驚きそちらを見た俺達の目に飛び込んで来たのは、


炎の魔神イフリートがあらわれた!!


全身を炎で包んだ怪物、そうソエルさんだ。

つい最近もっと巨大な火の化物と戦ったはずだが………これ程の殺気は感じなかった。

一目見て分かる

確実に殺される

と。


「「あ、これはその」」


「死ね。」


「「ギャアアアアアアアァァァァァァァァ!!!!!!」」



短く言い放った魔神は俺達を絶死の炎で包んだ。

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