第25話 勇者部


 ソエルさんとユウちゃんの謹慎が明けしばらく経った。

 そんないつも通りのある日の事。




「勇者ガラディーンを知ってるか?」


「「「は?」」」

 ユウちゃんの謎の問いかけに俺、ソエルさん、カマセさんが?を浮かべる。


「勇者ガラディーンだよ!ガラディーン!!あの伝説の魔王テローンを倒した勇者!」


 魔王テローンって……すげー弱そうだな。


「ぷっ。魔王テローンて笑わせたいんですか?ぶふっ」

 とソエルさん。


「お前、テローンを知らないのか?」

 真面目な顔で言うユウちゃん。


「ふっ………ふふっ」

 カマセさんは下を向いているが小刻みに震えている。


「いきなりどうしたんですか?」と俺。


「なぁみんな、部活を作ってみないか?」


「「「部活??」」」

 何なんだ今日のユウちゃんはテンション高いし、意味わからんな。


「実は昨日読んだ『月刊☆勇者』でガラディーンの特集が載っててだな。何でも彼のパーティーメンバーは全員学生時代の部活仲間らしいんだ!」


「「「へ~。」」」

 だからどうしたって感じだが。


「おいおい何だその興味ないふりは?」


 ふりじゃなくて実際興味ないんだけど。

「え~と、それでどうして部活を作るって言い出したの?」


「フンッ鈍いやつめ。魔王退治をする為の戦力集めだ。」


「「何で部活 (なんですか)?」」

 俺とソエルさんが同時に聞く。


「何でって、それは」


「雑誌に影響されて?ぷぷぷっ」

 手で口元を押さえて意地の悪い笑みを浮かべるソエルさん。


「ち、違う!前から考えていたんだ!謹慎中だったから言い出せなかっただけで!」


「じゃあ何の部活をやるんですか?」


「え?それは……その……勇者部だ!」


 うわ、直球だな。

「何ですか勇者部って?」


「その名の通り勇者を目指す部活だ!どうだ、楽しそうだろう?みんなも一緒に」


「「「ごめんなさい。」」」


「即答!?なぜだ!お前達どうせ暇してるだろ?」


「私、朝はヒカルさんと魔法の練習、夜はヒカルさんのご飯作ったり暇じゃないですから。」

「俺もソエルさんと魔法の練習して、午後は生徒会の仕事があるから。」

「僕はソエルさんの奴れ、ヒカルさんの手下なので……。あはは。」


 カマセさん一体何を言いかけたんだ。

 ソエルさんがニコニコなんですが。


「ぬぬぬぬ。」

 兜で隠れて表情は分からないがどうやら納得いってないようだ。


「ならたまに来てくれるだけでいい!頼む、4人以上いないと部活が作れないんだ。」

 手を合わせ懇願するユウちゃん。


「う~ん、入るだけならいいけどそれって今ある部活に入るんじゃダメなの?」


「ダメだ!そもそも勇者っぽい部活なんて無い!」


 そりゃそうだ。

「そのテローンだっけ?勇者は何の部活をしてたの?」


「テローンは魔王!勇者はガラディーンだ!!」

 俺の胸ぐらを掴み大声で叫ぶユウちゃん。


「あ、あぁ、ごめんなさい。」


「ちっ。ガラディーンは決闘部だ。今と違って昔の魔法学校では殺しあいが基本だったからな。無益な殺しあいでは無くお互いを高めあう決闘をしよう。との思いから始まった部活で、今の決闘制度の元になったとも言われている。ちなみに生徒会が殺しあうのは過去の名残だ。」


 なるほど。

 ガラディーンがいなかったら今でも学園で殺しあいが行われていたかもしれないのか。


「すごいなガラディーン!ダサい魔王を倒したダサい勇者かと思ってたよ!」


「フッフッフそうだろうそうだろう。ん?ダサい?」


「いや~すごいな。っとそろそろ生徒会室に行かなきゃ。じゃあまたねみんな。」


「「いってらっしゃいヒカルさん。」」

 カマセさんとソエルさんがにこやかに手を振ってくれる。


「ちょ!まだ話は終わってないぞヒカル!」


「入るだけでいいんでしょ?俺はOKだよ。じゃっ!」

 それだけ言って俺は教室を飛び出した。

 正直もう面倒事はごめんなので。

 というわけで寮に帰って寝た。


 ―――

「さて、それじゃ私達も行きましょうか。」

「はい。」


「お前達は?入ってくれないか?」


「ヒカルさんが入るなら私が入らない訳にはいかないので。」

「僕も同じです。」


「そうか!ありがとう!」


「えぇ、それじゃまた。」

「失礼します。」


「あぁ、またな。」

 フッフッフ、これで部員は4人。

 まずは部室を手に入れて、それから部員探しだ。

 待ってろよ魔王め。

 最高の勇者を集めてやる!


「フッフッフ、ハーーハッハッハッハッハ。」

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