第21話 VSカグツチ(前編)

「うわぁ。デカイですね。」


「ハァハァそれに硬くて」

「まっすぐ勃ってる♥️ハァハァ」


……変態共の言ってる事は間違いではない。

俺達の視線の先には高い塔がある。

ガンダム学園の校舎のようだが一体なぜ塔の形なのか謎は深まるばかりだ。


「で、カチコミってどうするんですか?」


「ふっふっふっまぁ見てなさい。百聞は一見にしかず、よ。」

そう言うと会長はアイリさんと見つめあい。


「アイリ………」

「冬子……………」

二人の距離はどんどん縮まり


「「ちゅっ」」


「………」

キス……した。


「「んっ……はぁ………ンン……じゅるっ………」」


「………」

とりあえず上を向き綺麗な空を見ていた俺の耳に聞いてはならない音が聞こえてきた。

もう……帰りたい。


「憑依完了!!」

会長の方に顔を戻すとそこにアイリさんの姿は無く、口の周りが何故かベタベタになった変態が一人だけ。


「じゃあヒカル君!行ってくる!」

叫ぶやいなや会長は腰の刀で居合いのように空を切る。と


その先にあったもの。

巨大な校門が崩れ落ち、喧しい音を立てる。


すると塔の中からローブの男が出てきて、こちらに走る。


「き、貴様何者だ!?」


「ふ、私はマジンダー学園生徒会長雪山冬子だ!これ以上学園を壊されたくなければ生徒会長を出せ、ぶっ殺してやる。」

刀を鞘に戻しながら言う会長。

もはやヤクザにしか見えない。何か恨みでもあるんだろうか。


「ひ、ひい~~!カチコミだー!マジンダー学園がカチコミに来たぞー!」

わざとらしく叫び、塔の中に走って行くローブ男。


しばらくすると、中から人が出てきた。

ゆっくりと近づいてくる何者か。

その頭はなんと言うかトカゲのようで、ジャージのような物を着たその体は人の形をしているが、袖から覗く手には鳥のように長い鉤爪がある。

身長は2メートルくらいだろうか。

生徒会長=学園の代表と考えればなるほどいかにも強そうだ。


崩れた校門の元で歩みを止め会長を睨み付ける。

「待たせたな、俺はここガンダム学園の生徒会長カグツチだ。ヨロシク。」

腕を組み、睨み顔のまま言うカグツチ。


「カッコいい名前ね。私はマジンダー学園の雪山冬子、あっちにうちの大将がいるけど気にしないでね。」


「大将だと?」

少し離れたところにいる俺に視線を向ける。


「始めまして、新田ヒカルです。」

とりあえずお辞儀した。


すると何故かカグツチは驚きの表情を浮かべる。

―――――――――――

新田ヒカル!?!?

何故奴がここにいる!?

俺がここに来たのはつい昨日。俺が会長になった事はまだうちの生徒ですらほとんどの者が知らないはずだ!


偶然か?いや、それならもっと驚くはずだ。何せ自分が挑発した魔王の四天王がいきなり現れた訳だからな。


俺を知らない?いや、それもあり得ない。ドラグリウス様の転生者を名乗った以上、狙われるのは確実。こちらの戦力は把握していて当然。


つまり何らかの理由で俺がここにいる事を知り、早速殺しに来た訳か。

ヒッヒッヒ、馬鹿が。わざわざ襲いに行く手間が省けた。

望み通りぶち殺してやるぜ。

――――――――――――――

うわぁ。

なんだこの人。

人の顔見て驚き顔で固まったと思ったら急に笑いだしたぞ。

やっぱり生徒会長ってみんな頭おかしいんだな。

まぁうちの会長ほどじゃないか。


カグツチさんがこっち見て固まってる間に地面凍らせてるし。

気付かれるだろ。


「おい、カグツチ。さっさと始めよう。それとも怖気づいたか?トカゲ野郎。」

分かりやすく挑発する会長。


「あ"ぁあん!?誰がだコうわわっ!!」


ズッテーーーン!!

会長の方を振り向きながら足を踏み出したカグツチが凍った地面に気付かず飛び込むように転けた。


うわぁぁぁぁぁーーーーー!!!!!

転んだーーーーーーー!!!!


「えいっ」

サクッと

目の前で盛大に転け、うつ伏せでプルプルと震えるカグツチの頭を


「刺したぁぁぁぁーーーー!?!?」

思わず叫んでしまう俺。


しかし


「あ れ?」


「ヒッヒッヒ」


カグツチの笑い声がきこえた直後


ボォォッ!!!

巨大な火柱が立ち上る。


「キャアアアアァァァァァァァァ!!!!」


火柱の中にあった会長の右腕が刀と共に溶けた。


「会長っ!!!」

会長の元に走る。


「ヒッヒッヒ、ヒーーーーヒッヒッヒッヒ!!!!」

火柱を上げながら立ち上るカグツチ。

足元の氷が溶け、すぐさま蒸発する。


「っアイリ!!」

会長が叫ぶと

パキパキ

となくなった右腕の先端、二の腕の半ばが凍る。


「会長!大丈夫ですか!」


「あっはっは、ふざけすぎちゃったみたい。とりあえずヒカル君、逃げて。」

こちらを見ず前方の炎を見つめたま会長は言った。


「何言ってるんですか!?負けを認めて帰してもらいましょう!!」

会長の肩を掴み説得しようとするが、


「ダメだよ。自分から仕掛けて逃げるなんて、最後までやらないとね。」


「最後までなんて、本気で死ぬ気ですか!?体が無くなったら生き返れないんですよ!?」


カグツチはもはや先程までの普通サイズの人の形を保っていない。

笑い声を上げながら火柱がどんどんと形を整え巨大な火の巨人になる。

そばにいるだけで火傷しそうな程の熱気。

いや実際会長のそばにいなければ火傷しているだろう。

この熱気の中にありながら会長の足元の氷は溶けていない。


しかしとりあえず逃げないとな!

魔力を足と腕に集め、

「キャッ!ヒ、ヒカル君??」

会長を抱え、全力で走る。


「ヒッヒッヒ、ヒッヒッヒ!!!逃がしゃしねぇよ!!!!」


シュンッ!


と俺の前に回り込むカグツチ。


嘘だろ。チィッ、巨大化したくせに早いのかよっ!


「ヒッヒッヒ、死ね!!!」

猛然と振り下ろされる炎の拳。


ああ、くそっ!!こんな時、こんな時俺に力があれば!!!


いくら願えど俺は普通の人間。

土壇場で覚醒イベントなど起こるはずも無く。


目を閉じる。燃え盛る炎が近づき俺達は


「ハアアアアアァァァァァァ!!!!!!」

会長の叫び。


バキボキボキバキ!!!

不自然な破壊音に目を開ける。

目前に迫るのは巨人の拳

ではなく分厚い氷の壁だった。


会長が作った物だろう。

しかし拳を止める事は敵わず、氷を叩きつけられた俺達は水平に飛びガンダム学園の校舎、塔の壁にぶち当たる


事は無く

バチャッ!

と水に包まれた。


衝撃が収まると水は消え、会長を抱えたまま前のめりに倒れた。


「ぐ……う、い、今のは?」

水で壁への衝突は避けられたとは言え叩きつけられた氷のダメージはある。

しかしそこまで重いダメージでは無いのは恐らく直撃を受けた会長が魔力で体を硬くしていたからだろう。


「あっはっは、すごい……でしょ?うちのアイリは天才……だからさ。」

弱々しく笑う会長。

強がっているけどその体は震えている。


ダメだ。逃げられない。やるしかない。そうだ。こんなところで死ぬ訳には行かないんだ。俺が、俺がやるしかないんだ!!


「ヒッヒッヒ、一発でグロッキーだな雑魚共が。次で消炭にしてやるよ。」

余裕たっぷりとこちらに歩いてくる炎の巨人。


俺は立ちあがり拳を構える。

その時、心の中に声が聞こえた。


(えへへ、やっぱりヒカルさんはカッコいいですね。)

(フンッ私を倒したんだ、カス魔族になど負けられては困る。)

(ヒカルさん!僕達はヒカルさんの手下です。一緒に戦わせて下さい!)

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