第18話 生徒会長参上


 生徒会室前――

 真っ白な扉の前に立つ。

 フクエルさんの話では生徒会長は俺と同じ人間界の人で、日本人。

 さらに氷の精霊の契約者だという。

 明るくて優しい人だって言われたが、緊張する。

 魔界に来て初めて俺以外の人間に会う。

 仲良く出来るといいが………。

 はぁ迷ってても仕方ない。


 コンコンコン

 ドアをノックする。

「どうぞ。」

 明るい声が聞こえてくる。


「失礼します。」


 な、何だコレ???

 入ってすぐの足元に落書きがある。

 六芒星と複雑な模様が描かれた魔方陣だ。


「おぉ!君は!」

 正面には机が5つ並んでいて4つが向かい合い1つは奥側に置かれている。その奥側の少し大きめの机に座っていた人物が立ち上がる。


 和風美人、この言葉がぴったりだと思う。艶やかな黒髪を腰まで伸ばし、白い肌に凜とした切れ長の目。


 これだけで十分だが、その腰にぶら下がったモノが和風美人と感じた理由だ。


 黒光りする細長い棒。

 そう、刀だ。


 ガチャリと刀を鳴らしながらこちらに近づく和風美人。

 この人が生徒会長だろうか?


「あの、初めまして、俺」

 フクエルさんに言われて来ました。


 という前に

「待った!何も言わずにその魔方陣の中心に立ってくれる?」


「は?はぁ。」

 ???何だかよく分からないが言われた通り魔方陣の中心に立つ。


 すると会長(?)は跪き、

「お待ちしておりました魔王様。この度は我々の召喚に応じて頂き誠にありがとうございます。」


「は?え?」

 何を言ってるのか分からない。


「も~ヒカル君、ノリ悪いぞ!そこは何のようだ?とか生贄はどこだ?とか言ってくれないと。もう一回最初からね!」


 そう言ってとまたさっきと同じ台詞を言う会長(?)。


 どうしようこの人、すごく変な人だ。

 とは言っても………合わせないと話が進まないし、仕方ない。


「クックック、我を喚ぶとはいい度胸だ。下らない目的の為に召喚したのなら、命は無いと思え。」


「はっ!心得ております。」


「うむ。して我に何をして欲しいのだ?」


「実は我が生徒会は今人数不足に悩まされておりまして、そこで是非魔王様のお力を貸して頂きたく。」


 どんな理由だよ!

 と思ったがさてボケたのかマジなのか………。


 ここはボケ返しで行くか。

「クックック良いだろう。我が必殺のそろばん術を見せてくれるわ!」


「あっはっは。魔王なのにそろばん術て、ウケる。」

 おお、女子高生っぽい。会長(?)が手を叩いて笑う。


「いや~付き合ってくれてありがと。その魔方陣、ヒカル君を迎える用に書いたら楽しくってさ。最初はただ円と星だけのつもりが、気付いたらそんなになっててね。」


「確かにすごい凝ってるって言うか時間掛かってそうですね。」

 多分俺一人でやったらこれを見ながらでも丸1日くらいかかると思う。


「でしょ~。2日かけて書いた超大作だからね。それなのにフクちゃんたら怒るんだよ。生徒会室に落書きしないで下さい!って。ひどいよね?」


 いやいやどう考えてもあなたが悪いですよ。

 てか2日かけたって暇なのか?


「あはは、まぁ床に落書きはちょっと……。」

 微妙な反応を返すと。


「も~、ヒカル君もフクちゃんの味方するんだね!まったく皆してフクエルさんフクエルさんって、そんなに可愛い子が好きなの!?」


 それはもう大好きですよ!!!

 なんて言えるはずもなく


「いや、その、会長は可愛いより綺麗って感じですもんね。俺は好みですよ。同じ日本人として。」


 って何言ってるんだヒカル!?

 これじゃあ口説いてるみたいじゃないか!!


「え~本当に!?いきなりそんな事言っちゃうなんてさすが魔王様。大胆だね!」


「いや~それほどでも……。」


「って、あれ?そう言えば何でヒカル君が生徒会室に??」


 スゲー今さら感。

「あはは、実はさっきフクエルさんに生き返らせてもらって、その時話を聞いたんです。生徒会長が俺に入って欲しいって。」


「そうだったんだ。とりあえず御愁傷様。それで、ここに来たって事は生徒会に入ってくれるって事??」


「えぇ、まぁ自分で良ければ。と言っても事務作業とか計算とか得意じゃないんで、あんまり役に立たないと思いますよ?」


「あっはっは。そんなの全然問題無いよ!何なら私も頭悪いし!とにかく強ければいいからさ。」


 は?強さって何だ??生徒会の話だよね???


「あの、生徒会……ですよね?強さって関係あるんですか??」


「も~ヒカル君たら何言ってるの?あ、もしかして生徒会って人間界のと同じの想像してた?」


「え?違うんですか??」



「あ~~、なるほど。そっか、そうだよね。う~んまぁ分かりやすく言うと、生徒会長って向こうで言うところの番長みたいなものなんだよね。」


 は?番長??何を言ってるんだこの人は??

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る