第12話 鎧の魔族は真面目ちゃん。


「さて、どうしましょうかこの状況。」

 相変わらず人がいないFクラスの教室でカマセさん、ソエルさんと俺は机で三角形を作って話し合っている。


 先日の決闘で俺に負けた事になっているカマセさんはFクラスでいいとして、何故俺もまだFにいるかと言うと、ちょっとした理由がある。


 まずあの演技について、あれはソエルさんのアドリブらしい。

 台詞を決めると演技っぽくなるとかなんとか。

 ちなみにカマセさんの手の怪我については、

「アドリブって事はあの爆発した短剣も即興なんですか??」

「ええ、そうな」

「そんな危ない事するはずないじゃないですか。ねぇカマセさん?(ニッコリ)」

「あ、あはは、そうでした。そうでした。演技ですよ。エンギ。」

 と、言う訳で、ドンマイ!カマセさん。って感じ。


 あの魔王設定については

「だってカッコいいじゃないですか。」と、笑顔で言われればただの人間の俺は突っ込む気力も失せるとゆうものだ。


「まぁそれだけでは無いんですけどね、正直今の私達は弱いです。Aクラスになれば確実に下の人達に決闘を申し込まれるでしょう。魔王発言はそうならないための保険です。とりあえずはFクラスで実力をつけて、それからまた上を目指しましょう。」


 と言う訳で力を着けるためにAクラスには上がらずFにいるわけだ。

 それは良いとして問題は魔王発言の方だ。

 二人の迫真の演技であれを見ていた者は確実に信じた。


 と思いきや、


 俺の魔界での初めてのあだ名は

 元・魔王(笑)だ。

 勿論、陰口。


 どうやら演技に入る前、俺が突っ込む前にカマセさんが出した光の魔法。あれが良くなかったらしい。


 何もせずに負けるのは怪しいと言う事で出したらしいが、完全に逆効果。

 あの場面で何故あんな魔法を出したのか、と騒然としていた所で突然の魔王発言。


 アリーナには聞こえないが観客席は笑い声で溢れかえっていたようだ。


 決闘を申し込まれないようにする、とゆう意味では狙い通りだが………。

 恐ろしい元・魔王だから戦わない、のと八百長ハッタリ野郎、元・魔王(笑)と戦わないのではまったく意味合いが違う。


 まぁ今さら仕方ないし、よく考えたら怖がられてイジメられるよりましだ思っていたら、

 まさかの展開。


 あの鎧の人、決闘を見ていたらしいが周りの人が笑っている中あの人はソエルさんの演技を真面目に信じてしまったらしい。

 それに、当事者ですら、馬鹿にされているのを知っているのにあの人は噂話とか聞かない、もしくは友達とかいないのか?と心配になってしまうよ。


「と言うかあの人って角生えてましたけど、魔族ってやつですか?」

と、俺が言う。


「ええ、それも純血の。今時純血の魔族と言えば、かなり有力な家柄の方だと思われます。」


「そんな人が何で勇者を目指しているんでしょうか?カマセさんは話した事あるんですよね?何か知りませんか?」


「すみません、残念ながら個人的な事は何も。勇者の話しかしない方でしたし。2日目からはずっとこの教室で人が来るのを待っていたので。」


「そうですか………。う~ん。本当の事を話して納得してもらうってのはどうでしょう?」


「恐らく信じてはくれないでしょうね。まぁ手が無い訳ではありません。」


「本当ですか!?さすがソエルさん。どうするんです?」


「決闘で勝利し、彼女にもヒカルさんの手下になってもらう……どうですか?」


「いやいやいやAクラスの人を決闘で倒すなんて、と言うかあの人って女性なんですか??」

正直鎧のせいで完全に男だと思っていた。確かに女だと言われればそんな気もする。


「はい、魔族の角の先端は男性は真上に、女性は外側を向いていますから。」


なるほど、確かに外側を向いていた。


「そうなんですね。でも、女性だとしても俺達にAクラスの人を倒せるんですか?正直言ってさっきの剣、俺にはまったく見えませんでした。その上、魔法まで使われたら、」


どう考えても勝てる要素が無い。


「いいえ、彼女は魔法を使わない。いや使えないんです。」


「ああ、なるほど。そうゆう事ですか。」と、カマセさんが納得したように言う。


「あの、どういう事ですか??」


「つまりですね。ユウリさんはヒカルさんが元・魔王だと信じている。つまりあの演技を全部信じているんです。」


「???それが一体………」

演技を全部???………ってああ、なるほど。


「「つまりヒカルさん(俺)が魔力を奪う魔力を持っている、と信じている訳です。(ですね?)」」

カマセさんと理解した俺が同時にしゃべる。


「「あ、ははは。」」

何だか照れるな。


「そうゆう事です。魔法を使わないのであればAクラスでもFクラスでも関係ありません。確かに彼女は剣も使えるのでしょうが、魔法を使える私達の方が圧倒的に有利です。どうしますか?ヒカルさん。」


どうするか………とは言っても他に手は無いだろうし、しかし本当に勝てるのか?俺が?


「あの、……ソエルさんは勝てると思いますか?」


「勿論ですよ。さっき本人にも言いましたけど、ヒカルさんが負けるはずありません!」


ソエルさんは何でそんなに……。


「それは何で……ですか?」


「決まってるじゃないですか。ヒカルさんが強いからですよ!」

笑顔で言い切ったソエルさん。


俺が強いって?何で?どこが?何でなんだ?俺なんて強くも何とも………


「?どうしたんですか??」

心配そうに下からこちらを覗き込むソエルさん。


………まぁしかし、やるしかないよな。ソエルさんの力になるって決めたんだから、こんな所で終われないよな。


「あぁ、いえ、何でも無いんです。それより魔法の練習しましょうか。ユウリさんに勝つために。」


「えへへ、そうですね!行きましょう!」

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