第10話 VSイヌール・カマセ(事後)
「クックックッ、ハーーハッハッハッハッ!!!」
(ちょ!ソエルさん!?!?)
心で叫ぶがソエルさんはまるで聞こえていないかのように俺の体を操る。
「これが大魔導師の一番弟子の実力か………フッ、はっきり言ってカスだな。」
腕を組み、地面にうつぶせで倒れているカマセを見下しながらソエルさんは言った。
「く……そ…が。」
カマセはこちらを睨みながら掠れた声で呟く。
「無理をするなよカス。体を焼いた上で貴様の魔力は全て奪った。もはや立ち上がる事も出来ないはずだ。」
「う……ぐ……う」
カマセはもぞもぞと動くが体に力が入らないようだ。
(迫真の演技ですね。マジで。)
「クックック、だが俺様も鬼じゃあない。貴様に一つチャンスをやろう。」
「な……に……?」
「一生俺様の手下になると誓え、そうすれば魔力は返してやろう。もしくは今ここで死ぬか。さあ選べ。」
そう言ってソエルさんはカマセの前に何かを放り投げた。
地面に突き刺さったそれは……燃えるように赤い、短剣?
勿論俺はそんな物は持っていないので。
恐らくはソエルさんが魔力で作った物だろう。
(それにしても救いの無い選択肢だなぁ。どうするんだカマセさん?)
「ふざ……ける……な。誰……が……貴……様……など、に」
言いながらゆっくりと短剣に手を伸ばすカマセ。
「フッ、死を選ぶか。だが、」
冷ややかな目でカマセを見下ろすソエルさん。
カマセの手が短剣に触れた瞬間。
「ギャアアアアアァァァァァ!!!」
強烈な爆発音とカマセの悲鳴が響き渡る。
(うわわわわ。手が血だらけだよ。大丈夫なのカマセさん!?ソエルさんひどすぎるよ!)
「クックックッ、ハーーハッハッハッハッ!!!敗者に選択の権利など与えるはずがあるまいカスが!」
ソエルさんの足元でドガッ!と鈍い音が鳴る。
「ぐう……ひ……きょ……う……もの……め」
頭を踏まれたまま声を絞り出すカマセ。
それに対しソエルさんは
「う、る、さ、い、ん、だよ。カス!!その点々入れた喋り方入力するの面倒なんだかんなカスが!!」
???何を言ってるかよく分からないがキレながらカマセの頭を何度も踏みつける。
(凄いな、全然力入ってないのに音は派手だし、動きはリアルだし。)
「う……う……う」
しばらくしてカマセが動かなくなると蹴るのを止めて、血まみれになったカマセの手を持ち上げる。
「では、お互い納得出来たところで契約に入ろうか。」
そう言ってソエルさんはカマセの手についた血を指で掬う。
「我、新田ヒカルの名において命ずる汝イヌール・カマセは我に対し絶対の忠誠を、そしてその膨大な魔力を我に捧げる事を誓う。これを破れば汝は死ぬ。こんなところか。」
そう言って指についたカマセの血を舐める。
するとカマセの血まみれの右手とソエルさん(俺)の右手が光り、何かの模様が浮かび上がる。
「クックックックッ!ハーーハッハッハッハッ!!!」
カマセの手を放し、笑い出すソエルさん。
「この声は聞こえているのだろう?我が名は新田ヒカル!精霊の契約者は仮の姿!してその正体は!第666魔界の魔王にして、魔力を奪う力を持つ者!奪魔の王ドラグリウス。その転生者である!!!」
(…………フッ、終わったな俺の普通な学生生活。………いや、最初から普通じゃなかったか。)
「だが、恐れる事は無い。戦いの毎日に疲れたからこそ無力な人間に転生したのだ。今の俺様に争いを起こす気は無い。だがしかし!戦いを挑む者に容赦はしない!もし俺様に挑むのなら覚悟しておく事だ、そこに転がっているカスのように我が手下となるか、永遠の死か。クックックックッ、ハーーハッハッハッハッ!!!」
ソエルさんはそう言って笑いながら闘技場を後にした。
―――――――――――――――――
ざわめく観客席の中、周りに誰もいない場所で一人決闘を見ていた生徒は呟いた。
「人間が、汚らわしい魔王を名乗るとは…………私が切り刻んでやる。」
そう言って歩き出す。金属の鎧を鳴らしながら。
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