第9話 VSイヌール・カマセ(本番)
それからさらに数日。
「ではよろしくお願いします。」
そう言ってカマセは丁寧に頭を下げる。
「本当にいいんですね?」
と一応の確認をする。
「勿論です。やっぱり自分に相応しい立ち位置が一番落ち着きますから。」
それは分かるんですが…………
人の手下が相応しいってのも変では無いだろうか。
「では、行きましょうか。」
そう言ってカマセは教室を出る。
「あ、はい!」
俺とソエルさんもその後に続く。
これから向かうのは校舎横に設置されている転移装置。
転移装置と言っても他の町や村に行くための物では無く、学園の上空にある、練習場と闘技場に行くための物である。
練習場には毎日通ってソエルさんと魔力コントロールの練習をしているが闘技場に行くのは初めてだ。
「では、ヒカルさんソエルさんまた後で。」
そう言ってカマセは薄赤く光る台座に乗る。
すると一瞬で姿が消える。
「それでは私達も行きましょうか。」
そう言ってソエルさんはカマセが乗った台座の隣、薄青く光る台座に乗って消える。
この転移装置、練習場行きは各クラスに設置されていて、ここ校舎横の物は闘技場行きになっている。
赤と青の台座はその日決闘を行う者用、緑が観覧者用になっている。
ちなみに赤い方が勝負を受ける者、青い方が挑戦者、となっている。
では、初めての決闘、行ってみますか。台本があるとは言っても初めては初めてだもんね。
青い台座に乗ると一瞬視界が白い光に包まれそれが晴れると目の前の景色が一変する。
そこにあったのは石造りの巨大な建造物。
話には聞いてたけど実際見ると凄いな。
「どうしました?」
先に転移したソエルさんが聞いてくる。
「あぁいえ、こうゆう建物を見るのは初めてなので圧倒されると言うか凄いなって。」
「そうですか。ヒカルさんは建築物とか見るの好きなんですか?」
「え?いえそんな事は無いんですけど、何でしょう、こっちに来てから初めて異世界っぽい建物を見たからかな。」
とは言っても外国に行けば向こうでもこれくらいの物は見られるんだろうけど。まぁ日本から出ないどころか旅行にも行った事無かったしな。
「なるほど。確かに学園も外の町並みも人間界とそう変わらないですもんね。暇が出来たらもっと魔界らしいところを見に行ってみますか?私も魔界については本の知識しかないので。」
「魔界らしいところですか………」
魔界らしいと聞いて最初に思い出すのはソエルさんの料理……いや魔界カジキサンマルクなんだよね。
そう考えると綺麗な景色ではなく、例えばマグマの海とか、魔獣の森とか危険地帯に連れて行かれそうな気が………
「どうしたんですか?ヒカルさん。あの、やっぱり私とお出かけするのは嫌、ですか?」
しゅんとするソエルさん。
そんな顔で見ないでくれ(泣)
全然嫌じゃないですよ!!
「そんな訳無いじゃないですか。俺もソエルさんと遊びに行ってみたいです。」
「本当ですか!良かった。実はずっと行ってみたかった場所があるんです。」
「へぇー!どんな場所なんですか??」
「えへへ、それは後のお楽しみです。でも、約束ですよ。」
「分かりました。楽しみにしてますね。」
そう言って二人で笑いあう。
と、
「あの~お取り込み中すみません。」
突然声を掛けられた。申し訳なさそうな声だがその顔はローブの影で見えない。
「あ、はい。なんですか?」
「すみません。決闘の準備は出来てるんですが~、よろしいですか?」
そう言えばカマセさんと決闘しに来たんだった。
「あ!すみません!すぐに行きます。行きましょうソエルさん。」
そう言って走り出そうとする俺は転びそうになった。
ソエルさんに腕を捕まれて、
「ちょっ!ソエルさん?どうし、んむっ………」
(憑依完了!ですね!)
明るい声でソエルさんは言った。
―――――――――――――――――――
階段をかけあがり闘技場の中へ入る。
客席は2階建てになっており、多分1万か2万人は入ると思われるが、
生徒総数は2000、明らかに広すぎるがこれはまぁアリーナが広いため(半径100メートルの円形闘技場)仕方がない。
アリーナと観客席の間には見えない壁がある。これは魔法が観客席に当たらないようにするためと中に観客席からの声と魔法が届かないようにするためである。
中からの声は外から聞こえる。それ以外は通さないとゆう訳だ。
助言等を防ぐためだが応援も聞こえないので戦闘科以外の生徒からは評判が悪い。
この観客席、勿論 戦闘科の者が他の者の戦いかたや魔法を見るためでもあるがそれ以上に普通科と回復科の娯楽になっている。
中にいると聞こえないが観客席の野次は毎回凄まじく、それは大概普通科と回復科の生徒だ。
まぁここに来るものはほぼ全員と言っていいほど指定のローブを着用するので断定は出来ないが。
ちなみにこのローブ、ヒカルはソエルが売り払ってしまったので知らないが、実は魔法の品で、顔が見えないのは影になっているからでは無くて、色彩魔法でどの角度からでも見えないようになっている。
これは様々な種族が在学しているため、種族間の争いを無くすためである。
で、話は戻って4話の続きから、
「じゃあ解除しますよ。」
俺は炎を解除しようと
「ま、待って下さい。今準備するので、」
そう言ってカマセは地面をゴロゴロと転がる。
「あの、なにしてるんですか??」
「汚れをつけてるんです。さすがに炎に包まれて無傷はおかしいので、とお待たせしました。お願いします。」
「分かりました。」
魔力を止めて炎を消す。
(そう言えば勝敗判定ってどうするんですか?)
(負けを認めるか審判が勝負ありと判断するかどちらかですね。)
(審判って……あの人形ですか?)
最初の掛け声を言った人形、俺とカマセさん以外にいるのはあれだけだ。
(そうです。ちなみに名前は審判ちゃん、実況部の方々が魔力で操っていて視界はこの闘技場内全てを映し、戦っている生徒の身体状態、残りの魔力や体力、出血量などの健康状態で決闘が続行可能か判断します。)
すげーハイスペックだな審判ちゃん。案山子にカツラをかぶせたみたいな見た目のくせに。
(でもそれならカマセさんがダメージを受けてないって審判ちゃんは分かってる訳ですか?)
(まぁそうなりますね。)
(……それって演技だって少なくともその実況部ですか?その人達にはモロバレなんじゃないですか?)
(大丈夫です。実況部はその名の通り実況をする部活動。戦闘科の生徒以外で組織されていますし、彼らは人の秘密は絶対に漏らしません。)
(何ですかその組織。てゆーか実況だけじゃなくて審判もやってるんですよね?)
(まぁ実況部とは表向きの姿。その実態は決闘に関わる全てを管理する部活動ですから。ちなみに決闘の勝敗で不当な賭け事をした生徒は彼らに消されるので気をつけて下さいね。)
(………はぁそうですか。)
何か俺の知ってる部活動と全然違うけどもういいや。突っ込んだら負けな気がする。
(ではヒカルさんこの後は私がやるので入れ替わってもらえますか。)
(はい。分かりました。)
入れ替わる とは体と精神を入れ替える事だ。つまりソエルさんが俺の体を動かして、俺は精神体として中に入るわけだ。
しかし、練習で何回か入れ替わった事あるけどやっぱり自分の体の中にいるなんて変な感じだな。
それにしても後の展開って何するんだ?二人で話し合ってたけど秘密だって聞かせてくれなかったんだよね。
そんな事を考えてる間にソエルさんは動き始める。
「クックックッ、ハーーハッハッハッハッ!!!」手を広げて、上を向く程のけ反りまるで悪役のようなと言うより悪役そのものの笑い声を上げる。
(ちょ!ソエルさん!?!?)
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