第2話 夢の続き

「おはようございますヒカルさん。気分はいかがですか?」まぶしい笑顔のソエルが目の前のにいる。


「…………」


 あ、ありのまま今起こった事を話すぜ!

 目を覚ましたと思ったら夢の続きを見ていた。な、何を言ってるか分からないと思うが俺も何が起きてるのか分からない。

 だが……催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねぇもっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……。


「どうしたんですか??」


「い、いやそのちょ!ちょっと待って下さいね!」


「はあ。」


 落ち着けヒカル!落ち着いて考えるんだ。俺はさっきまで何をしてた?

 寝ていた。そう、寝ていたんだ。そして不思議な夢を見た。あまりにリアルな夢………そこで気を失って、今起きた。………目の前には夢の中で会った美少女………つまりは、


 ①さっきのは夢ではなく現実。

 ②あり得ない確率だがさっきのは予知夢で今見ているのは現実。

 ③今見ているのは夢の続きで現実の俺はまだ寝ている。


 ……こんなところか?しかしまぁすごい夢だな。

 いや~夢で良かった。よし寝よう!


「ヒカルさんもう朝ですよ。ご飯の用意も出来ているんですが……」


「あ、わざわざすみません。いただきます。」


「はい。では温めてお持ちするので少々お待ち下さい。」そう言ってソエルは奥の部屋に入っていった。


 って待て待て待て!夢じゃないのか!?どうするヒカル?!?


(落ち着け、ヒカル小佐!)


(は!軍曹!し、しかし俺はどうすれば!?)


(まず落ち着く事だ、慌てるのと急ぐのは違う。落ち着いてよく考えるんだ、今何をするべきなのか。)


(今何をするべきなのか……。)


(まず考えなくてはならないのはこれが現実だった場合の事だ。夢だったなら何が起きても現実の君にダメージはない。しかし、これが現実だったら?)


(これが現実だったなら。俺が今いるのは明らかに知らない部屋。ソエルさんも確実に初対面だ。つまり誘拐?!?)


(落ち着ついて考えて、本当にそう思うか?)


(いや誘拐にしては親切すぎますね。ご飯を用意するとか、それに俺の体は自由だし。)


(うむ。そうだな。ではさっき夢だと思った事について考えてみよう。)


(さっきの夢、真っ暗な部屋にソエルさんがいて。魔法少年になりませんか?と聞かれて最後にキスを………)


 !?!?!?!?!?!?!?!?

 やっちまってる!!!!!

 さっきのが現実ならやっちまってるぞ俺!!

 裁判で金を毟り取られる!?

 いやいやそれをネタに脅されてヤバい事をさせられるとか!?

 いやもしくは単純に殺されるとか!?


 どうするどうするどうする!?!?


 ??いや………待てよ。おかしいな……そもそも俺は家で寝ていたのに何であの空間にいたんだ?


 ソエルさんが俺を誘拐?それはさっき無いって言ったよな。

 もし本当に夢じゃないなら……


「私と契約して魔法少年になってくれませんか?」


 ……魔法?いやあるわけないよね、魔法なんて。やっぱり夢………



「お待たせしました。」ソエルがお盆を持って部屋に入ってくる。

 それを部屋の中央にあるテーブルに置き、

「さぁ、冷めないうちに召し上がれ。」


 まぁ夢だし、大丈夫だよね?

「あ、はい。いただきます!」

 テーブルには2人分の食事がある。

 恐らく俺が起きるのを待っててくれたんだろう。

 メニューはご飯に味噌汁、魚?の焼き物だ。………魚????


「あの、ソエルさん。これって何の魚ですか??」


「それは魔界カジキサンマルクですよ。」

 何でもないように言うと「いただきます」とソエルも食べ始める。魔界カジキサンマルクを。


 ……………いや、魔界カジキサンマルクって何????


「どうしました??あ、もしかしてお魚は嫌いでしたか?」ソエルがシュンとして聞いてくる。


 そんな顔で見ないでくれ(泣)

 全然まったく嫌いじゃない!嫌いじゃないけどコレは………


 何なんだコレは、見た目はサンマに近い、がまったく別物と言うか、まず色が赤い。そして背びれが異様に大きく、目は飛びだし…………動くのだ体全体が。ピクピクいやビクビクと。

 焦げ目はついてるけど………生きてるの??


 しかし、食べないで残すわけには……軍曹どう思う?

(ヒカル小佐、この言葉を送ろう。据え膳食わぬは男の恥だ。)


(軍曹……!分かりました。)


(うむ。君に幸あれ!)


「あのヒカルさん?」


「あぁごめんなさい。……アンマリオイシソウダカラテガトマッテシマイマシタ。デハイタダキマス。」

 無心!無心になれヒカル!これはサンマだ。魔界カジキサンマルクではない。俺はサンマを食べるんだ!


 目を閉じてサンマ(仮)に箸を突き刺す。

「ぐえっ」

 …………………


「あ、あのヒカルさん?無理しなくて大丈夫ですよ?」


「イエダイジョウブデスヨ。オレサンマダイスキダカラ。」


 さっきのは幻聴だ!サンマが喋るはずない。大丈夫だ。これはサンマだ。


「ぐええっ」


 サンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマサンマ


 よし。

 イメージ完了。目を開きサンマの肉を箸でつかむ。

「ぐえっぐえっ」


 もはや何も聞こえない。リバースする覚悟を決めた漢に敵は無い!


「いただきます。」

 ………………!?!

 こ、これは!!!!!!!

「う、美味い!!!さっぱり爽やかなようでこってり濃厚でサクサクのフワフワでトロトロ!?!?!ものすごい新感覚!!!すごく美味しいです!!」


「えへへ喜んでもらえて良かったです。おかわりもあるのでいっぱい食べて下さいね。」

 ソエルは満面の笑みを浮かべる。


 …………

 こうしてソエルさんと朝ごはんを食べた。

 ちなみにご飯は普通に白米だった。

 味噌汁は中の具が例の如く相当アレ(骨と目玉)だったが、味は劇的に美味しかった。天使風と言われるらしい。

 ………具材については怖くて聞けなかった。

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