第49話 もはや最終兵器

 あれからゴールデンウィークが過ぎ、テストも無事終わった翌日の試験後休み。


 僕は樹、江菜さん、雪、鈴奈すず達とショッピングモールに来ています。


 鈴との一件後、支えてくれている江菜さん達に何かお礼がしたいと言うと、予想通りというか皆裏切らないと言いますか、デートをご所望とされまして。

 でもゴールデンウィークは10連休丸々使ってしまう事情があってゴールデンウィークでの皆との交流は勉強会のみでした。


 勿論、こってり責められました。

 事情が何なのかを教えてほしいなんて何度も言われました。

 言えないので必死に渋々納得してもらいましたけど。


 そして、テストも終わり、次の期末が終われば夏休みという事でテスト終わりの休日に早めに水着を一緒に選ぶことになりました。


 当然、


「蓮地さんあそこですね」


「蓮早く」


「お兄ちゃんゴールデンウィーク分は今日と夏休みで返してね」


 三人の水着をです。


「蓮地」


 樹が僕の肩に手をおいて隣に立ち、神妙な顔で見つめてくる。


「ドンマイ」


「やかましいよ!」


 というかね樹さん、こんなシチュエーションはラブコメ小説じゃないと出来ないんだから逆においしいと思いますよ。


 ◇◇◇


 水着ショップのある場所はモール三階中央のイエローエリアと呼ばれる所。


 店名は『Surf Island』。

 彩り溢れた水着が陳列されています。


 でも、まだ5月後半に差し掛かったところ。お客さんの数はまだ少ないです。


「うーん、どれならお兄ちゃん気に入るかなぁ」


「水着、豊富にありすぎて悩み悩みます」


「うぅ〜サイズ合うのがないよぉ」


 水着の豊富さに皆が頭を悩ませています。

 一人、雪だけは別の理由ですが。

 そんな雪に殺気めいた視線が向けられていることに僕は気づきました。


 辿るとハイライトの失った瞳だけを向けて江菜さんと鈴が凝視していました。


 その瞬間僕は寒気がしました。

 水着がないショックで雪が気付いていない事が幸いです。

 でもこのまま殺気を孕ませた視線出させるのも向けられているのも見ててなんだか辛い。


 まず江菜さんの所に行こう。


「江菜さん決まりました」


「蓮地さん。いえ中々選べなくて」


「それなら色々見繕って試着してみれば」


「ですが……その申しておいて何ですが、余りお手を煩わせるのもどうかと思い」


 なるほど、僕の事を考えて範囲が狭まっていると。


「江菜さん構いませんよ。色んな江菜さんを見せてください」


「はい!ではこれとこれとこれと……」


 あっ、結構あるんですね。それなら、覚悟を決めて挑むとしますか。

 それで鈴は、まだ睨んでるよ。

 わさと聞こえるように会話の声大きめにしたのに。

 ん?

 いや、違った!江菜さんまで標的だぁ!


 まずい。何かが危ないと叫んでいる。

 止めないと。


「す、鈴さん」


「………あ、お兄ちゃん!」


 怖っ!さっきまで江菜さんを睨んでいたのに僕の方を振り向いた瞬間、表情が一変して満面の笑顔になるなんて。


 鈴、なんて恐ろしい妹。


 そういえば樹は、


「お兄さん、この水着なんていかがでしょう、とてもお似合いだと思いますよ」


「あなたは何をいっているのこっちのハワイアンちっくな水着の方が〝断然〟似合ってるわよ」


 うん。店員さん同士で争ってるけど大丈夫そうだ。いつもの事、いつもの事。


「お兄ちゃん?」


 まず僕は鈴をどうにかしないとだ。


「鈴は決まった?」


「うーん、今はこの二つで悩んでる」


 僕に見せてくれたのは、サロペット風ワンピースタイプとトップがリボンデザインの水着。

 どちらも可愛らしいし、鈴に似合ってるとは思うけど。


「鈴はスタイル良いんだからビキニタイプを幾つか試着してみたら?」


「えへへ、そうかな。うん、うんそうする」


 嬉しそうに鈴は幾つか水着を持って江菜さん同様試着室に入っていった。

 なんか回避できたみたいで良かった。


「雪あった?」


「……れ〜ん〜みつからないよぉ」


 雪が泣きついてきた。こういう時女の子は困り者だ。


「一緒に探そ」


「……うん、ありがと」


「最初…から探し直してみよ」


「れ〜ん〜好き〜」


 雪はぶれない。

 まだ苦笑いでしか好意に対応できないけど、まあそれは近い内ね。


 まずはもう一度最初から探してみた。

 やっぱりサイズは無くて、違う店にしようか提案しようと思った所に一つの水着に目が入った。


「雪、これは?」


「え?」


「ホルターネック。これなら大丈夫じゃないかな」


 あと、唯一ギリギリあった白の三角ビキニを渡して試着室に行かせた。


「蓮地さんいらっしゃいますか?」


「いますよ」


「カーテンを開けますので見てもらえますか?」


「もちろんです」


 次の瞬間、カーテンが開けられ水着姿の江菜さんが出てきました。


 江菜さんの試着している水着は、色が赤でトップがクロスデザイン。

 ほどよいセクシーさが江菜さんとマッチしている。


「良いです。綺麗です」


「ふふ、色々試着してみて良かったです」


 どうやら中で何度も試着を繰り返して決めたものらしい。

 自分の為にと思うと恥ずかしいけど、嬉しく思います。


「お兄ちゃーん、私も決まったから見てみて」


 鈴もあれこれ悩んで決まったらしい。


 鈴の試着している水着はトップスがフリルの黒のビキニ。

 鈴は僕の意見を参考にしつつと可愛らしいものを選んでいました。

 それに合わせて髪も後ろでまとめてうなじを出している。


 大人っぽくそして、可愛い。


「妹にするには勿体ないかも」


 と僕はついボソボソっと呟いていた。


「やった!」


 どうやら聞こえてたみたいです。


「やりますね、鈴奈さん」


「いえいえ、江菜さんこそ」


 おお、女の修羅場。視線の火花が見える気がする。


 あのあと、鈴だけには真実を話した。

 家族という事もあるけど、今回は辛い思いをさせたから。結局話したら辛い思いは多少はすることになったけど、逆に鈴には感謝をされてしまいました。知らない方がいい事もあるけど、鈴の場合は知って良かった事だったみたいです。いつか、家族と一緒に墓参りにいくつもり。


「れ〜ん〜。これは流石にダメ〜」


 今日はとても弱々しくなってしまっている雪は着替えが終わったみたいです。


 どっちに着替えたのか分からないけど一体何がダメなんだろう。


 とりあえず、見せてもらうことにしよう。


「雪、とりあえず見せてみて」


「無理」


 相当恥ずかしいみたい。

 でも、これだと何がダメかわからない。


「一瞬でも良いから」


「………………分かったちょっと、だけ」


 そう言うと、ゆっくりカーテンを開けて雪が出てきました。


「「な!」」


 江菜さんと鈴は絶句した。

 うん、確かにこれはダメだと僕はおもいました。

 雪が最初に着たのは白の三角ビキニでした。


 でも、胸が主張しすぎてこれは、危険な香りもするんですけど、


「やらしい」


「蓮が渡したんじゃん!」


「だってサイズ合いそうなの渡して合うから持っていったんだよね」


「うぅ〜だけどぉ……もう一着の着る」


「うん、そうした方がいい」


 雪はカーテンを閉めて試着室に戻っていった。


「あれは最早兵器です」


「私のは兵器にすらならないのに」


 凄い言われようだ。男には分からない胸に対する嫉妬が女の子にはやはりあるのだろう。

 執着が凄いな。


「そうだ、江菜さん。雪さんが出てきたら誰の水着姿が一番良いかお兄ちゃんに選んでもらいましょう」


 ああ、それはまあそうなりますか。


「争っても仕方ないですが、蓮地さんの一番になるのなら譲れない所ですね」


 これは好きな人には自分だけを見てほしい独占欲が二人とも出てるのかな。

 なるべくね。


「蓮……その、終わったよ」


「うん。見せてもらってもいい?」


 すると、雪がカーテンを開けて出てきました。今度は普通に開けた。

 大丈夫だっ…


 ブッ!


「んぐ」


 雪の水色のホルターネックの水着姿はとても素敵で、強調されてた胸を包んだことによってふわふわでマシュマロみたいな胸がふわわんと引き立っていました。


 それを見た直後、何故か僕の鼻から鼻血が出たので、すぐに押さえた。


「おっぱいですか!おっぱいなんですね!」


「お兄ちゃんだけは違ってたはずなのに。雪さんのおっぱいは兵器じゃなくて最終兵器だよ。けしからんおっぱいめ!」


「私にも雪みたいな最終兵器おっぱいがあったら…」


「もぉ〜二人ともそんなおっぱいを連呼するなぁ!恥ずかしいよぉ」


 結果、僕が鼻血を出したことによって自然と雪の水着姿が一番に決まり、買う水着も決まりました。


 当の本人は、胸で決まった感じがして結果に不満あるみたいです。


 そういえば、江菜さんと鈴には選ぶアドバイスはしたけど雪みたいに水着を選んでなかった。


――――――――

どうも翔丸です。


ちょっと定番っぽいストーリーにしてみました。

雪の胸は最終兵器です。

それはもう、女の人が絶句するくらい。


それは女子テニス部に男子が集るわけです。


雪「こらぁー!作者恥ずかしいからやめろー!」


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