第31話 図書室勉強会の一時

「それで交際期間なんだけど一ヶ月貰えないかな?」


と、鈴が提案します。

怪しんでるというより珠音女子の皆は彼氏がいることを信じてしまってる感じだからそれほど期間はいらない。

でも短すぎた場合、逆に怪しまれる。

怪しまれて誤解が解けるという手もある。

けど、定着した自分の像が崩れた時の結果がどうしても見えないし、何より僕が彼氏か相応しいかを判断するために来るから、バレたときの反動が大きいはず。


おそらくだけど、お姉様と慕われている鈴にこんな一面があったという事を前提で見ている可能性が高い。

なら、そのお姉様像を崩さずかつ彼氏の前では違う一面を見せているという事を見せるのなら、やることは一つ。


後は、別れる時の理由。

別れを告げるのなら僕からする方がいいかな。

そして、いつか僕が鈴の兄とバレる恐れを考えたらやっぱりこれしかない。


期間としては長すぎると江菜さんは耐えてくれそうな気がしますけど雪はたまらずに割り込んできそうなんですよね。

それを踏まえると一ヶ月くらいが妥当かな。


「お兄ちゃん?」


「あ、ごめん、一ヶ月で良いよ。江菜さんと雪もそれで良いよね」


「妥当かと」


「私もそれでいいよ」


「で、蓮地。これからどうするんだ」


「それなんだけどね。鈴、その代表の子達って予定とか言ってた?」


「まだ。でもこの期間お兄ちゃん、彼氏は勉強してるからって言ったら、きーちゃんが勉強を教えてもらえばって提案して。それで今日みたいに勉強会してほしい」


少し俯き、上目遣い状態で鈴は見つめる。


「それなら私達も手伝う」


「雪さんすいませんが間に合ってるので」


即答で鈴は返しました。


「ぐぬぬ……江菜は良いの?女の子だよ女の子」


「私は蓮地さんを信じてますから……浮気なんて絶対になさらないですよ」


しませんしません。しませんけど、めちゃくちゃ怖い。口は笑ってるのに目は冷徹な瞳を僕に捕らえて「したら分かってますよね」と語ってるようです。


「絶対にしません」


「はい。頑張ってください」


あの後の満面な笑みは可愛いなんかじゃなくて恐怖に感じます。


「それでいつにする?」


「お兄ちゃんが都合つく日で良いよ。私達まだ中学生だから」


「じゃあ明日にしよっか。バイト休みだから。それと迎えにいこうか?女子四人って危ないし」


「明日、一応聞いてみるね」


「COMINEのアカないの?」


「ない。ごめんねお兄ちゃん。明日聞いたらすぐメッセージ送るから」


「お願い。じゃあ、今後の事を軽く話そう」


それから大まかに方針を説明しました。

これが吉と出るか凶出るか。


◇◇◇


翌日金曜日。昼休みになり、僕達は勉強会を図書室で行い。今は昼食を食べています。

その時、鈴からメッセージが来ました。


《鈴奈》三人とも来てほしいって。お迎えよろしく


《蓮地》了解――――


「鈴奈さんからですか?」


「はい、迎えに来てほしいそうです」


「気を付けてくださいね」


冷たい目で言われたらそんな気無くても断れませんよ。

その後、江菜さんは「あ」と口を開け、僕は口の中にだし巻き卵をいれました。

「ん」と自然に漏れた声と卵を口にいれた時の艶やかな唇が色っぽい。


「蓮、私もほしい」


そう言って、雪も「あ」と口を開けました。


「ん……ほいひい」


こっちもこっちで色っぽい。

普通の男子ならイチコロですね。

つまり、余り僕はドキドキしてません。悲しいことに。

不意に可愛い所を見せられたり、密着されれば流石にドキドキしますけどね。


今僕は放課後共にできない代わりにこの昼食の時間に毎回二人にあーんをすることになりました。

あと、パターン時々違うそうです。


「樹、ごめん」


隣に座る樹一人にした事への謝罪をしました。


「ん?気にすんな……よし、じゃあ俺が蓮地に食わせてやる」


「え?何でそうなるのさ!」


樹は椅子から立ち上がって少し前屈みになり、僕の顎をクイッと持ち上げ言いました。


「俺じゃダメか?」


ヤバいこれ女子されたら惚れそう。


「なぁ!蓮何で頬ほんのり赤くしてるの?」


「え?」


「まさか、自分の恋愛に興味がないのではなくて女子に興味が」


「違いますよ。それなら江菜さんと付き合いませんし、雪の返事もはっきりしてるよ」


樹に意外な行動をされて不意を突かれた。

イケメンだと認識してたけど、意識はしてなかったみたいです。


「そうそう、蓮地は優柔不断な所あるけど、最後ははっきりするのは遠くから見てきた江菜さんも近くで見てきた雪もわかるだろ」


「「はい」」


もしかしたら樹がこの中では僕を分かってくれてるかもしれないと思いました。

僕も樹を一番分からないと。


「僕、樹と出会って良かったよ」


「それはお互い様だ」


拳と拳をぶつけて互いの目を見つめ合いました。


「蓮地さん!」

「蓮!」


凄い鬼気迫る形相で睨む二人は口を開けていました。


「「あーん」」

「…はい」


それから江菜さんと雪には延々あーんで口に運ばされました。

そして、本当に樹があーんで僕に食べさせてくれました。


楽しそうにしてる辺り絶対にわざと楽しんでやってる。





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