第32話 妹(限定彼女)のクラスメイト代表
キーンコーンカーンコーン
放課後。帰りに何をするか、部活早く行こうなど、他愛ない会話が広がる中で、僕は鈴からのメッセージを読んでいました。
《鈴奈》お兄ちゃん、もうすぐ家に着くよ。
《蓮地》分かった。今終わったすぐ家に帰
「あ、違う違う」
《蓮地》分かった。今終わったからすぐに鈴の家に行くよ。
《鈴奈》浮気は無しね
《蓮地》ないよw
してほしいならするけど?
《鈴奈》やめてよ。
怒りスタンプ(モンキーさん)――――
「じゃあ行こっかな」
「蓮、バレたらダメだよ」
「そうならないように時々遊びにいきますね」
あの二人とも、何だが元気付けられてる感じがしませんけども。
一階正面玄関の下駄箱に行き、靴を履き替えた後、僕は駐輪場に向かいます。
そこに置いている自分のバイクのハンドルにかけているヘルメットをかぶり、その中に入れていたグローブをつけてから、エンジンをかけて専用口から家に向かいました。
ピンポーン
自分の家なのにインターホン押すって変な気分。
『はい。どちら様ですか?』
よりによって母さん。そこは鈴の方がやり易かったんですけど。
いや、これは楽しんでる。カメラあるんだから。
実行すると決めた後、母さんにも事情を説明して協力してもらうことになった。説明中大爆笑で、最後は「断れないって兄妹ね」と僕と鈴の頭を優しく撫でながら言いました。
楽しんでて、ついボロが出たみたいなことはあってほしくないです。
そういえば上の名字考えてなかった。
「……蓮地です」
『どこの蓮地君ですか?』
「……
『逸羽ね…あーハイ鈴の彼氏君な。開けさせるから待ってて』
やっぱり楽しんでる。一ヶ月、ずっと弄られるのかな。
カチャ
扉を開けて鈴が嬉しそうに飛び付いてきました
「蓮兄!」
一ヶ月の間の呼び名は蓮兄となりました。
蓮地、蓮、蓮さん、等々試したら他人過ぎはまらず、そうして決まったのか蓮兄です。
で、何で普段通りの鈴を出しているのかというと昨日の勉強会の時に遡ります。
一つ、弓月ちゃんにある程度同級生の子達に情報を流してもらう。
普段どんなことをしているのかとか詳細なプライベートじゃなく、デートする日とかデート場所と簡単な情報。
「それも自然に会話に入れる感じでしてほしいんだ」
『良いですよ』
スマホ越しから頼もしい声で答える弓月ちゃん。隣だから来ればいいのにと思います。
二つ目、鈴には普段通りにしてほしいということ。僕に見せる鈴と、僕が知らない学校の皆が知ってる鈴の二つです。
それで、違う面があることを認識させるのが狙いです。
「初日の前半は主に学校での鈴でお願いできるかな?」
「うん…普段ってことはやりたいことやっていいの?抱きついたりしていいの?」
躊躇いがちに上目遣いになりながら訊ねる。
子犬みたいです。
ポンと頭の上に手を置いて撫でながら僕は言いました。
「鈴がしたいことをすればいいよ。少し自重はしてね」
「うん分かった。自重しながら遠慮なく甘えるね」
うん。本当に分かってるのかな僕の妹は。
現在
「おに…蓮兄待ってたよぉ」
鈴は頬ずりする。
「春咲さん?」
と後ろから動揺する女の子の声が聞こえました。視線をそっちに移すと三人の鈴と同じ上下ともに白の制服を着た女の子が階段近くで立っていました。
「鈴」
僕が耳元で囁く「うん」と、鈴は小さく言い返して僕から離れくるっと三人のクラスメイトの方に振り返りました。
「す、すいません」
「いえ、春咲さんの知らない一面に驚いただけです」
「凛としたお姉様も良いですけど可愛いお姉様もまた素敵」
本当にお姉様って呼ばれてるんだ。
隠してきたというか隠していかざるえなくなった鈴にとって普段の一面の一部を今になってみられるのは抵抗感がやっぱりあるようで耳が真っ赤です。
正面に回ると顔も赤くなってるかも。
「お姉様、家に戻ってください」
「そうね。行きましょうか、蓮地さん」
「ん?蓮兄じゃないの、鈴?さっき言ってたよね?」
「……意地悪、良いから蓮兄」
初々しい。知らない鈴を聞ける機会でもあるしとことん聞いてみようと思いながら家に上がります。
「お邪魔します《ただいま》」
そして、僕はどうしようもない変な気分に苛まれながら階段を上って鈴の部屋に入りました。
鈴の部屋に入るのは鈴が中学生になってからは入っていません。
中は綺麗に整理整頓されていて、ベッドが増えたり、本棚に知らない本が沢山あったり、水玉の丸型カーペットなど、色々変わっていました。
「お姉様、そちらの人が彼氏ですか?」
コホンと小さく咳き込んでから丁寧な仕草で話始めた。
「はい、こちらが私がお付き合いしている…逸羽蓮地さんです」
「初めまして、鈴の彼氏の逸羽蓮地です。鈴が学校でお世話になってます」
「私は
七海さんはショートボブで目がくりとし、高い声で可愛い、アニメ声のような声が特徴の女の子です。
「私は
森川さんはミディアムヘアに赤色のカチューシャと赤の眼鏡で委員長という雰囲気の女の子ですね。
「最後は私ですね。初めまして、
朝空さんはロングヘアにブリーチをかけ、毛先が少し茶色を帯び、実るところが中学生にしては実っていて、印象は明るい女の子です。
明るい雰囲気が何となく弓月ちゃんに似てるかも。
と、それぞれの紹介を軽く済ませて丸テーブルの前に腰掛けます。
テーブル右側に朝空さん、左に七海さん、向かいに森川さん、そして、僕は鈴と隣同士で座る形になりました。
「一つ忘れてましたけど、ロリコンではないので安心してください」
そう言うと七海さん達は目をぱちくりさせながらクスクスと笑い始めました。
「お姉様、逸羽さんって変わってますね〜」
「そう?私は普通だと思うけど、美雨さんと悠さんはどうですか?」
「まあ、お姉様のような方がいるので浮気はしないとは思いますね」
「つまり、悠ちゃんは真面目な方と思ってるんですね」
「勝手に解釈しないでください、まったく」
溜め息を吐いてるけど、口元が微かに緩んでる森川さん。
「森川さんと七海さんは長い付き合いなの?」
「はい、悠ちゃんとは小1の頃からの付き合いです。真面目ですけど、とても可愛いんですよ」
「ちょっと美雨、逸羽さんに何教えてるの!」
「じゃあ悠ちゃんも美雨ちゃんの何か教えたらどう〜?」
「ちょっと比奈ちゃん!?」
「仲良いんだね」
「同学年であればこのくらいは普通ですね」
感心しつつ、じゃあ鈴はどうなんだろうと、鈴の方を振り向く。
すると、視線に気づいた鈴は僕から視線を外しました。
三人の雰囲気と三者面談の時にから予想してたけど、頼られてるんだね。
「私の場合はなんかそのちょっと違いますから」
キリッと鈴は僕に言いました。
「確かに雰囲気もいつもと違うね。凛としてる」
「逸羽さんの時のお姉様聞きたいです!」
森川さんはテーブルに手をついて前のめりにぐいっと近づいて目をキラキラさせている。
尻尾をブンブン振ってる幻覚が見える。
「そうだね。僕の知ってる鈴は、僕に結構甘えてきて、たまに可愛いドジを踏む可愛い女の子だね。口調も少し違って、僕からしたら今はちょっと遠慮がちな感じだよ」
「甘えたがりで、たまにドジ、想像するだけでも可愛いですね」
「逸羽さんは」
「蓮地でいいよ、七海さん」
「では、蓮地先輩で。私も美雨で大丈夫です」
おぉ、久しぶりに呼ばれた。
陸上部ではよく呼ばれてたなぁ。
「蓮地先輩はどうして蓮兄と呼ばれてるんですか?」
ついに来た。
「隣とかじゃないんだけど、鈴とは昔からの知り合いで、親とも昔からの付き合いだったから鈴はよく遊びに来てたんだよ。それでいつの間にか蓮兄って呼ばれてたんだ」
「はいはい、私も質問良いですか?蓮地先輩はお姉様を鈴って呼んでますよね。いつからなんですか」
「えっと、確か鈴が小学校に入った頃かな?その時に」
「それより蓮兄、勉強教えてください!その為に呼んだんだから!」
余程恥ずかしかったらしく、耳まで真っ赤にして話を切りに来ました。
恥ずかしいなら止めれば良かったのに。
今更か。
もっと聞きたいと鈴に三人がお願いするが、頑なに反対され続け、最後には諦めてました。一面知りたいと楽しそうです。
鈴も何だかんだで楽しそう。
これは僕いる?
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