第30話 春咲鈴奈は断れない(鈴奈視点)
「皆さん、おはようござ…」
「「春咲さん、彼氏がいたんですね(だね)!!」」(クラスメイト一同)
私の通う珠音女子中学、三年一組の教室に入った瞬間、私はクラスメイトの皆の驚愕の一言に呆然した。
「私は誰ともお付き合いはしてないですけど」
「「またまたぁ〜」」(クラス以下略)
なんでそんな噂が流れてるの、そして皆、なんで噂を信じてるの。
すると、一人のクラスメイトが自分のスマホ画面に撮った写真を見せてくれた。
そこに写ってたのは、その子と二人の女の子が楽しそうにしている写真。その二人は別のクラスにいる友達で、クラスメイトの子は遊園地に遊びにいって、その写真はパレードの時の写真だった。
その遊園地は私が二週間前くらいに雪さんと行って偶々そこでデート中だったお兄ちゃんと江菜さんと遊んだところ。
クラスメイトの女の子が写真の端をアップにした部分に私がお兄ちゃんの腕に抱きついてデレデレしてる瞬間が写ってた。
確かにこれは恋人にしか見えない。
しかも、こんなデレデレした顔を普段私は学校で見せない分が上乗せされてるな。
………緊急会議ーー!
『どどどどどどうしよ!』(私)
『とにかく落ち着いてください』(堅実)
『こんなので心乱すなんてダメね(私)』(ツン)
『そう言う(ツン)ちゃんは体がスマホみたいになってるよ』(素直)
『こ、これはただの運動だから勘違いしないでよね』(ツン)
『そこで、デレはおかしい(笑)』(素直)
『話の焦点、ズレてるわよ〜』(セクシー)
『そうね、無駄話は終わり。まず最初にクラスメイトの様子からして浸透率は学校全土にまで言ってると思います』(堅実)
『私もそれも思った。でも、なんで今更?』(私)
『あれじゃないかな。私達ってお姉様なんて言われてるよね。だから話しかけづらかったとか?』(素直)
『私は誤解されたままとか嫌だし正直に言うべき』(ツン)
『えぇ〜私は誤解されたままが良いなあ』(素直)
『難しい所ですね。(予想だけの)浸透率では………』
『ならこれを機に夜に襲…』
『『『『それはダメ!』』』』(4人の鈴奈)
『えぇ〜でも〜ここに私がいるってことは(私)が〜…』(セクシー)
『はい、提案。一ヶ月だけ一ヶ月だけお兄ちゃんに彼氏になって貰おう』(私)
『成る程、その後に都合をつけて別れたことを言えば良いと。ですが、単純な理由ではダメです』(堅実)
『なら〜レ…』(セクシー)
『『『『ちょっとお前は黙れ!』』』』(4人の鈴奈)
「春咲さん」
「な、何!」
写真を見せてくれたクラスメイトが声をかけて意識が戻った。
まだ決まってないのに。タイミング悪く名前を呼ばれた。 しかも声上ずって変になったし。
「春咲さんが良ければ、彼氏さんに会わせていただけませんか!?」
「……な、何で?」
私は笑顔で問い返す。
「春咲さんに相応しい方か知りたいからです」
と、別のクラスの子が返答した。
皆を見ていくと、皆が同意を示す頷きをした。
しかも、その目が怖い。病んでるのかな。お兄ちゃんに危害が及ぶことを恐れて私は咄嗟に言ってた。
「あの人は私の兄なんです」
「これは兄妹の密着度ではありませんよね」
私はするの私は。でもそれを信じてくれる程この学校での3年間の私は薄くない。自分でも破壊するのは困難だ。
……一ヶ月だけなら。
「はぁ、分かりました。ご紹介します。ですが、一つ聞きたいことが」
「何ですか?」
この珠音女子中学では、男性との恋愛は禁止されてる。恋愛をしていた場合、バレると恐ろしい厳罰をくらうとか。
それは絶対に嫌だ。
「先生には言ってませんよね」
「「勿論です」」(クラス一同)
「あと、知られてる可能性は……そうだよね、知ってたら今頃呼び出しあるね」
ただ、今はお兄ちゃん(皆の中では私の彼氏)が勉強してて、高校生で最近バイトもしてるから都合が余りつかないことを説明した。
「なら、勉強教えてもらえば良いじゃない?」
そう言ったのは今来たであろう私の親友のきーちゃん、木更弓月だった。
「木更さん確かにそれはそうですが」
「でも、皆は行きたそうだよ」
皆の声に耳を傾けると「お姉様のお部屋」「畏れ多い、でも興奮が」「代表を決めましょう!」などの私が否定の意見を言ったら確実に落ち込む、期待の顔をしながら皆が話し合っていた。
その間に私はきーちゃんに小声で話しかけた。
「きーちゃんどういうつもり?というか来るの遅い」
「ごめん。弟二人が走り回っててお母さん手伝ってたらギリギリだったんだ」
弓月ちゃんには小さな弟が二人いる。だから、仕方ないけど。メッセージくらいは欲しかったな。
「で、さっきのどういうつもり?」
「多分だけど、長引かせると押し掛けに来るよ」
「まさかそんな」
でもなんでだろう。それ聞いてから背中の寒気が治まらない。
まさか、ね。
「春咲さん、代表として私達三人が伺わせていただきます」
決まって言えなくなった。
放課後、急いで帰った。江菜さんもいたから話の手間が省けた。
私は大まかに事を伝えた。
そしたら江菜さんもお兄ちゃんも了承してくれた。
実を言えば、理由はどうあれお兄ちゃんの彼氏と言われて嬉しかった。それもあって断る弁解するという考えを余りしなかったかもしれない。
でもそのお陰で限定だけどお兄ちゃんが恋人になった。
嬉しかった。胸高鳴った。
二度とないかもしれないこの絶好のチャンスを満喫する。
いっそ取り上げようかな。
なぁんて。
別れるのは嫌だけど、一ヶ月の間に別れる理由考えないと……
……本当に?
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