第29話 これは禁断です
静まり返る僕、春咲蓮地の部屋。
「…えっと」
「私と付き合って!」
「……」
妹に告白はこれで二度目です。
勿論断るつもりでした。
「――――――」
隣にいる彼女に視線向けると彼女はコクンと頷きました。
「分かった、良いよ」
僕は妹と禁断のお付き合いをすることになりました。
何故そうなったのか少し時間を遡ります。
◇◇◇
江菜さんのはからいで学校直近にある喫茶店『Calm《カーム》』でバイト先が決まりました。
最初の1ヶ月は研修期間を設けていて、週三日、放課後にバイトすることになりました。
勉強会も1ヶ月のため平日は短時間、休日は朝から昼までと調整して行う事になってから二週間目の木曜日。
「蓮地さん、バイトの方順調ですか?」
「順調ですよ。といっても最近やっとメニューを全部覚えられたですよね」
「ふふ、みたいですね」
放課後にバイトが入っている日、江菜さんはバイトを終えるまで待ってくれているんです。更に、その間教えるための問題、説明を考えてくれているみたいなんです。
こっそりマスターから聞きました。
「応援してますので頑張ってください」
「はい。江菜さんの為にも頑張りますよ」
「蓮地さん」
瞳は潤み頬を赤らめて微笑んでうっとりした表情になる江菜さん。
可愛いと思うのは可笑しいでしょうか。
「良いなぁ、部活が無かったら私も蓮のバイト先に行ってるのに」
と、雪は腕枕を作って机に突っ伏する。
ここで部活を辞めるなんて事と言わないのはやっぱりテニスが好きだから。
だからなのか、先週の土日はその分構ってと甘えてきた。
今日は木曜日なんですけど、早めに切り上げたみたいです。
「蓮〜頭撫でて」
という風に。
休み時間は僕も図書室に行くことは無くなりましたけど、江菜さんと交際している事を隠しているからか、そういったことはないです。
無自覚にも飛びついて胸が押し当てられますけど。でも、これは前からなので別にいいんです。
気にしてなかったので…。
なので、さらっと了承してしまうんです。
でも、江菜さんの前でそれはいけないことなんですよね。
「良いよ」
「駄目です!」
そのあとこう付け加えます。
「するのでしたら、まずは私から」
「良いじゃん!江菜のケチ。この二週間ずっとそう。たまには先に堪能させてよ」
ケチと言われて困ったと眉を潜めます。
「…分かりました」
「ありがとう、江菜大好き!」
「もう、雪は」
抱きつき頬ずりする雪を江菜さんは仕方ないなという表情で嬉しそうな雰囲気を出している。
友達とかライバルっていうよりも姉妹みたいに見えます。
姉は江菜さんで、妹が雪ですね。
「蓮地」
と囁いて呼ぶ樹の方に顔を向けます。
「何?」
「二人のあの仲睦まじく抱き締めあってるの、あれ良いな」
これはもしかして。
「もしかして樹、女子に襲われ過ぎて百合好きに目覚めた?」
「百合…女子同士のか…そうかもな。女子は苦手だが、見るのは悪くない気持ちではないかも」
何とここで樹が百合に目覚めてしまった。
これは女子と向き合う事に支障が大きく出そうな予感がして堪りません。
せっかく学校で素を出して頑張り始めたのに
、土曜日の花見後の頑張りって…。
でも、新しい道が開けただけでも祝うべきですかね。
「おめでとう?」
「サンキュー?あ、蓮地ここ間違ってるぞ」
「え?…あ」
「凡ミスだな、前半と何故か答えはあってるけど、後半の最初の答えが間違ってるな。まあ答えがあってるってことは頭の中では正しいのが出来てるわけだ。書くときの凡ミス無くせば大丈夫だな」
「ありがとう樹」
「おう。雪×江菜、いや江菜×雪か?」
「樹、妄想するならせめて二人のいない時か、別の誰かにして」
目の前にいるのに流石にそれは駄目だと分かったようで樹は「そうだよな」と妄想を止めた。
そして、これは祝うべきなのか改め直す僕でした。
そのあと思い出したかのように雪が頭を差し出し、僕は撫でました。
次いで雪は膝に頭を乗せると、江菜さんが「私だってまだ何ですよ!」と抗議して雪を僕から離すと、「知らない!」言い返します。
結果、勉強会所では無くなりました。
これを止める手段となると、これですかね。
「あの二人とも」
「「何(ですか)!?」」
「……人間には足は二本あります。なので半々に」
「「却下(です)!!二本で一つだから気持ちいいの(です)!!とにかく蓮(蓮地さん)は黙って(ください)」」
「……はい」
いや、負けるなよって思いますよね。
めちゃくちゃ圧が強くて怖いんですよ。
逆らったら般若と雪女に殺されますよ。
「蓮地とりあえず勉強しようぜ」
「……う、ん」
「よし、分からないところは容赦なく聞け」
僕と樹は言い争う江菜さんと雪中で勉強を続けました。
それから30分経って科目を変えようとした時、ドンドンドンと階段を駆け上ってくる足音がしました。
バタッ
「お兄ちゃん!」
「鈴どうしたの?血相変えて」
勢いよく扉が開かれ、言い争っていた二人もそれで止まりました。
鈴は荒くしている息を整えて、不安そうな表情で鈴は言いました。
「あのね……付き合ってください!」
鈴のカップをリビングに取りに行って、部屋に置いてあるお茶を淹れて、一口飲んで本当に落ち着いてきた鈴。
静まり返る僕、春咲蓮地の部屋。
「…えっと」
「私と付き合って!」
「……」
妹に告白はこれで二度目です。
勿論断るつもりです。
「遊園地でパレード二人で場所探ししてたでしょ。学校の同級生達もその時来てて、パレードの写真を撮ってた時に偶々写ってたんだ」
「それだけなら」
「誤魔化そうと思ったんだけど、知ったの今日で…弁明出来ないほどに話が広まってて」
「でも、何で今日知ったの?」
「聞きづらかったらしくて、やっと言えたのが」
今日と。
あの皆さん、 定着してから聞かないでください。否定しづらいので。
「お願いお兄ちゃん、江菜さん!」
立ち上がり鈴は頭を下げた。
僕は構わない。でも、江菜さんがいいかどうか。それを訊ねようと視線を向けると江菜さんは考えを察したのかコクンと頷きました。
雪にも視線を向けるとうんと頷いた。
「分かった、良いよ」
「ありがとうお兄ちゃん!」
こうして、僕と妹、鈴とな禁断の交際が始まる日になりました。
――――――――――――――――――――
どうも翔丸です。
という訳で妹編的なのがスタートです。
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