第24話 女の悩みは同時に妬みの火種

早朝、蓮と公園で会って、いつの間にか寝て

いたらしくて、目が覚めたら自分の部屋のベッドだった。

物凄く悔しかった。せっかく二人きりだったのに。特に何かしたい訳じゃなかった。

蓮と何の変哲もない会話をする。それでだけで今は幸せだったから。


だから私は早朝の分を、ううん、それ以上を取ろうと思って春咲家に行った。


普段なら二階のすぐ隣が蓮の部屋だからそこから入るんだけど。

あ、部屋から直接行くのは蓮が部屋にいるときだけだよ。


でも、蓮はいなくて、一階にかと思った私は普通に玄関から尋ねた。普通に。

玄関から水樹さんが出て来て、誰ともいってないけど、私の気持ちを知ってて告白の件も知ってる。だから、蓮が朝早くに出掛けた事を教えてくれた。


何処に行ったかは、その時掃除してたらしくて、聞いてないそう。

ただ、「行ってきます」って言われたから出掛けたことが分かったみたい。


それで、帰ろうと思ったんだけど、水樹さんが「せっかく来たんだからお茶くらい飲んでいったら」って言ってくれたから、お言葉に甘えて、リビングでお茶をいただいていた。

まあ、普通に聞けば蓮なら教えてくれるかもしれない…けど、蓮だって一人になりたいときくらいある。


もしかしたら今日になって昨日告白の気持ちの整理をしたくなったのかもしれない。

朝ランをしてたのもそれが理由かもしれない。

でも、逆に私は蓮への気持ちが抑えられないくて今凄く会いたくて仕方がない。

恋敵だけどそれ以前に親友である江菜に聞いてみよっかな。

そう思ってメッセージを送ったら、江菜は知っている事がわかった。


それで、何処にいるか聞くと一枚写真が送られてきた。


滅茶苦茶羨ましい。

何が羨ましいのか。


江菜から送られてきた写真は蓮と江菜がお互いの飲み物を飲ませ合ってるもの。

私も飲み合いたい。間接キスとか、色々。

とか思ってたら、無意識に感情任せなメッセージを飛ばしてた。―――


《雪》うにゃああああ!江菜今何処なの?

行って私も交ざるぅぅぅ。


《江菜》教えろと言われて教える人はいないわ雪。

ドヤ顔スタンプ2


《雪》絶対探してやるぅぅぅ!鈴奈と協力して行ってやる!


《江菜》気を付けて来てくださいね―――


絶対行ってやる――



――って思ったけど、一人で探すのは難しい。ヒントは二人が飲ませ合ってる写真だけ。

でも、この羨ましい写真だけじゃ分からない

。タピオカドリンクなんて今じゃいろんな所で飲めるから、特定するのが難しい。

諦めよっかなぁと思いながらとある部屋に足を運んだ。


「それで、何で私の部屋なんですか?」


私は、二階にある鈴奈の部屋にいて、来るまでの事を簡単に話したら、滅茶苦茶嫌がれた。


「暇だから?そんな事より鈴奈、おでこどうしたの?ドジった?」


「ドジりました悪いですか!?」


そう言ってハリセンボンが警戒するときみたいに頬をぷくぅと膨らませて不貞腐れた。

本当鈴奈、可愛いなぁ。


ごほん。とりあえず私は鈴奈が寝ているベッドにもたれ掛かった。


「悪くない、寧ろ可愛いよ」


「そういうのはお兄ちゃんに言ってもらいたかったです。あと寛ぐ気満々ですね」


「良いじゃん、別に」


昨日もそうだけど相変わらずブラコンやってる。拗らせたりしたら危なそう。

でも、鈴奈は蓮が嫌がることってしないもんね。したとしても直ぐに止めるし。

だから、蓮も時々鈴奈の過剰なワガママを控えめに抑えてから応えてる。


「改めて思うと、蓮も蓮でシスコンかも」


「そうですよ。お兄ちゃんは私と一つのベッドで一夜を過ごすことを許してくれるくらいのシスコンです」


布団から顔だけ出して寝てる鈴奈はドヤ顔を私に向けた。

帰ってきたときにでも蓮にベッドの件聞くか。


「ま、今日は彼女に御執心かもだけど」


「どういう事ですか?まさか、お兄ちゃんと江菜さんに何か!?」


バッと勢い良く起き上がった鈴奈に先程の写真を見せた。


「ふやぁぁぁぁぁぁ!」


鈴奈は私のスマホを取ってその写真をまじまじと見始めた。

何か私と似た同じ反応だなぁ。

羨ましいよねぇ。


「鈴奈なら場所、分かる?」


「これだけじゃ分かりませんよ。私をなんだと思ってるんですか?」


「ブラコン?」


「…まあ正解です。只、分かったとしても私は行きません。なので行くなら頑張ってください」


予想外の言葉で私は一瞬呆然としてしまった。


「意外、見せたら鈴奈は血眼になって探すと思ってた」


「……私だって本当はそうしたいです。でも、お兄ちゃん達は一応恋人同士ですから。

驚きはしましたけど、あれくらいやらないとお兄ちゃんの恋愛感情生まれないと思いますし」


「でも、この間、デートを追跡したんでしょ?」


「あれは江菜さんがお兄ちゃんと付き合うに足り得るかどうか確かめるために追跡しただけ…時々羨ましいとは思ったけど」


「最後なんて言ったの?」


「あの日まともに出来なかったから行かせてあげたいって言ったんです!」


何か誤魔化した感じがするけど、まぁ良いかな。可愛いし。

それに確かに色々あって蓮達、デートがまともに出来なかったんだよね。

私は諦めから納得に変わった。


なので、私は本棚から一冊の漫画を手に取りベッドに再度もたれかかった。


「だから、何で部屋から出ずくつろいでるんですか?」


また、鈴奈に部屋からでてほしいという嫌そうな表情で見られた。

二回目は傷付くよ。


「暇だからだよ」


「だからって私の部屋で漫画とってくつろがないでください」


頑固な。なら私にだって考えがある。


「ふぅん、じゃあ蓮の部屋に行って漫画借りて部屋でくつろぐ…」


私は態とらしい言い方で部屋を後にしようと立ち上った。すると、それを阻止しようと鈴奈は服を掴んだ。


「分かりました、私の部屋でくつろいでください」


「やったぁ、鈴奈大好き!」


言質はとったぜ。

態と口に出しせば、部屋に留まる事を許可してくれると思った。

蓮がいたら許すけど、いないときだと鈴奈は蓮ほ部屋に入れさせない。

蓮がいないから来るまで部屋の本読もうかなって思って入ろうとしたら必死に蓮の部屋の扉を塞ぐ。


だから、音をたてずにそっと入ろうとしたけど、失敗。窓から入っても、直ぐにバレた。

そう、実証済み。


「雪さん、胸で窒息…する」


「ご、ごめん」


「ぷはっ…本当、どうやったらそんなに大きくなるんですか?」


「自然と?」


中学からDくらいになってて、今はEかF?くらい。でも、大き過ぎるのってそんなに良いものでもない。


「羨ましい」


「肩すぐ凝るから悩みの種なんだよ」


「羨ましい悩みですね」


そう言ってじーっと胸を見る鈴奈の視線に嫌なものを感じたので咄嗟に胸を隠した。


「悩みの種なら、その種を少し分けてください!」


「わっ!ちょっ、鈴奈!」


コンコンコン


「鈴奈、雪ちゃん、はい…二人ってそういった関係、じゃないよね」


「「違う(います)!」」


床に押し倒されて鈴奈に胸を鷲掴みされてるというシーンで水樹さんに変な勘違いをされてしまった。


「で、お、お母さんどうしたの?」


私から離れて鈴奈はすこし顔を赤くして水樹さんに聞いた。


「そうだった。はい、これ」


個々に一枚ずつ手渡されたのは遊園地のチケットでした。


「良いんですか?」


「全然良い…って言いたいけど、リビング掃除してたら見つかったから」


「うーんでも、私が貰うのは」


「なら雪さん、私にください。今度、お兄ちゃん誘って行きますから」


む。それは聞き捨てならない。


「なら鈴奈の私に譲るべきじゃないかな?兄妹なんだし行こうと思ったらいつでも行けるでしょ。私は、ぶ・か・つ、があるから日が合わなくて中々行けないし」


「何処かに遊びに行けても遊園地なんて高校生と中学生がホイホイ行ける場所ではありません」


ムッかつく言い方。このブラコン半端乳魔人め。


「聞こえてますよ。誰が半端だ!この巨乳雪女!」


声に出てた。そんな事より


「誰が雪女なのかな?」


「雪さんです。知ってます?雪女って男を連れ込んで誘惑するんですよ。巨乳で誘惑、雪さんにピッタリだと思いますよ」


「それはありがとう。じゃあ蓮を鈴奈が持ってないこの武器使って今度誘惑してみるよ。もしかしたら恋愛感情湧くかもねぇ」


私は腕を組んで自分の強調するように胸を下から押し上げながら言った。

押し上げてる間は結構重かった。


「争ってる所悪いけど、それ今日までなんだよね」


「「え?」」


よく見たら期限が今日まででした。


「仕方ないですね。勿体無いですから、仕方なく一緒に行って上げます」


「不本意だけど、中学生一人じゃ心配だし付いて行って上げる」




「何で、今日こんなに二人仲悪いわけ?」

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