第25話 遊園地デート2 合流
「次はどこに参りましょうか?」
「うーん、僕はどこでもいいんですけどね」
少し困った顔をしながら微笑み返すと、江菜さんはムスッとしたで近づいて来ました。
「もう!それじゃ意味がないんです!これはデートなのですよ、デ・エ・ト」
「そう言われても」
「でもも何もありません!だって、」
すると自分の唇に左手人差し指を添えて答えました。
「私は彼女で、蓮地さんを惚れさせる為にいるのですから。その為にもプランを立て合って一緒に楽しむ事は大事だと思うんです」
確かに江菜さんの言う通りです。
自分が行きたい場所だけのプランを立てても、それがイコール相手も楽しいとは限らないですし、自分だけが楽しい独りよがりデートになることもあるそうですから。
遊園地ってデートとして結構上手く行くと思われがちですけど、そうでもないんですよね。
依頼の一つで中学生ですけど、遊園地デートをしたいってメッセージがきたので、それならプランを事前に考えておく事ってメッセージを送って暫くして返って来た返信に危機感覚えましたから。
その依頼人は男子だったんですけど、好きな女の子をこのアトラクションに連れていきたい、この店で食事したい等、それは自分だけで考えたプランでした。
長く付き合っている恋人同士ならアトラクションで何系が好きかも分かってくると思います。
でも、まだ二人は互いの事を何も知らない同級生。苦手な物を察するのは難しい。
だから、互いの意見をし合って立ててみるのが良いのです。
時と場合等によりますけど、遊園地デートはやるべきだと思って、直ぐにメッセージを返しました。
その時、夜も遅かったので、プランは当日立て合って楽しんだみたいです。
勉強が出来ても活用できないと意味が無いのと同じ。
今日、江菜さんに改めて教えてもらった。
「それじゃあ……もう一つ定番のところに行ってみます?」
「定番?」
「お化け屋敷です」
◇◇◇
「いやああああああ…!!」
早速、砂漠エリアを抜けた先にあるワンダーランドエリアにある『ゴーストフォレスト~テラーツアー~』というアトラクションに入ったわけです。
何でもワンダーランドに誰も知らない森を発見したという設定だそうです。
「!?…びっくりした」
進んでいく途中で先に入っている女性の突然の叫びに思わずびっくりしてしまいました。
「ふふ、そうですね」
「江菜さん、お化け屋敷とか大丈夫なんですね」
「蓮地さんこそ、怖くはないのですか?」
映画とかなら苦手ですけど、お化け屋敷は…そうでもない?ですね。
「僕、始めてなんで」
「そうなんですか?私てっきり、恋愛相談の…「ァァァァ」会話の邪魔、しないでください」
………。曲がった先の通路の壁から突然出て来たゾンビに笑顔のまま僕の彼女は語りかけると「ぅぅぅぅ」と、そのゾンビの人は演技を続けたまま…って演技って言っちゃった。まあ、良いかな。
そのゾンビの人は背中を寂しくさせて定位置に戻っていきました。
不憫です。
江菜さんは物凄くホラーに耐性があるようです。
「それで、話の続きですけど、恋愛相談の参考の為にリサー「くびぃ〜!」うるさいですよ」
「す、すいません」
「………」
今、首なしの人、普通に謝りましたよね。
確かに江菜さんの怒ってる雰囲気の方が怖いと思いますけど。
僕の場合、話を邪魔されて不機嫌になってるだけに見えます。ちょっと可愛いかも?
「私はリサーチしていたと思っていました」
やっと言えて江菜さんは嬉しそうです。
「中学生でしたからね。それに、全く怖くない人もいるみたいですから、参考になるかどうか」
そう言った僕の視線が無意識にチラッと江菜さんの方へ視線が向きました。
「最後の私を見て仰いましたよね」
「…見てないですよぉ」
そう言うと、江菜さんに目を細めて見つられ、僕は眉を八の字に寄せて苦笑いをしました。
「本当は私も悲鳴を上げて、蓮地さんに抱きついたり、心配されたりしたいです」
「それなら、敢えてわざとすれば」
「あざといのは嫌いです」
そう言った江菜さんは何処か少し怖かった。でもそれだけ本気だってことですよね。
「すいません」
「何故、蓮地さんが謝るんですか?私は、ありのままの私に振り向いてほしい、それだけです」
「……」
どう言えば良いのか僕は言葉がでません。
それは僕のなかに江菜さんの気持ちに対して応えられるものが無いから。
それでも、頑張ってどうにか口にしよう、そう思って口を開こうとした瞬間、
「蓮地さん、無理に私の好意に応えようとなさらなくてよろしいのです」
気持ちを察したのか、江菜さんは僕の頬を両手で挟んで自分の方へ持っていき、ニコッと目元を和ませ、笑みを浮かべながら言い、そして、言葉を続けました。
「今は、聞いてくれるだけで良いのです」
「分かりました。いつかちゃんと…返します」
「お待ちしております。さて、少し驚く程度ですし、早くここから出ましょうか。」
「そうですね。…あ」
「どうしました?」
「……やっぱり良いです」
「気になります、仰ってください!」
敢えて抱きついたら吊り橋効果で、もしかしたらドキッとさせられた可能性あったのかなぁって思いましたけど。
これ僕が思った時点で駄目ですよね。
「蓮地さん、教えて「この者の首を切れぇ」だまってください」
やっぱり江菜さんは滅茶苦茶肝が据わってるみたいです。
そして、僕達は少し驚く程度のままお化け屋敷の出口まで辿り着きました。
本当にお化け屋敷の従業員さん。怖がれずですいません。
◇◇◇
お化け屋敷から出た後、時間を確認してみるとまだ午後1時前。
明日は登校日だけど、帰るにしてもまだまだ余裕。
そういえばここ、何があるのか知らない。
確か、ここのマップサイトがあったはず。早速開いてみると15時に各エリアでパレードが開催されるみたいです。
このパレードを予定候補としてその間に行ける場所と何処のエリアのパレードにするかを相談しないと。
「江菜さん、つ…」
「……何でしょうか」
あれから、お化け屋敷を抜ける最後まで言わなかった事で江菜さんはそっぽ向いて、不貞腐れてます。
謝るべきかな。
でも、只謝罪して欲しいわけではないと思うんですよね。
途中で切った言葉の続きも言って謝るべきですよね。
でも言う程の事では無いですよね。逆に、そ!は言っても全然構わない事。
「…さっきのお化け屋敷で言いかけ「お兄ちゃんだぁ〜〜!!」たぁ!」
「蓮地さぁーーーーん!」
聞き覚えのある声と共に江菜さんの叫び声を聞きながら飛ばされ、最後、ズルズルと僕はコンクリートの地面を滑っていきました。
滅茶苦茶痛い。
そして、何か?…上に乗ってて、ちょっと重いです。
顔を上げて見てみると、ニコニコと満面な笑みを浮かべた妹の姿がありました。
「お兄ちゃん発見!」
「うん。お兄ぢゃん…見つかちゃった」
最終的に僕はそこで鈴にKOされました。
つまり、気絶です。
◇◇◇
少し前
「遊園地なんて久しぶりで楽しい!」
「雪さん、雪さん、次どこ行きますか?」
雪さんと二人っていうのが少し物足りない。こういうのはやっぱり、家族とか友達多めで来るべきなんだろうな。
後はやっぱり私はお兄ちゃんと二人きりで。
でも、1時間前に家で
私は何があるのか、雪さんに手に持っているマップを見てもらった。
「えっとね、今いるのが砂漠エリアで、その奥がワンダーランドエリア。この右に白亜期エリアがあって…あ、真ん中にワールドヴィレッジていう橋渡れば移動できるみたい」
悩ませるなぁ。エリアによってアトラクション違うみたいだし。
それにこの遊園地って写真スポットも多いんだよね。
確か、ワールドヴィレッジもその一つとか。学校の何人かの女子生徒が映える場所だって話してたような。
ん?
「鈴奈、スリルありそうだし、白亜期エリアに」
「ここにお兄ちゃんがいます」
「え!?蓮が?まさか」
「本当です。私のお兄ちゃんレーダーが反応してます」
「ド○ゴ○レーダー吸収したギ○みたい」
私はロボットじゃないです。というか、なんとも斜めな。そこは鬼○郎とかなのでは?
まあ、良いです。
「そんな事よりお兄ちゃんは確かにここにいます。ビンビンきてます」
「本当、鈴太郎」
「誰か鈴太郎だぁ!」
「ヤバい、可愛い!」
もう、雪さんは昔からこういう所ありますよね。可愛い物好きというか。
その度に抱きつくのはどうしてだろう。
そして、抱きつかれる度に胸の大きさに妬ましさを感じる。
さっき私の部屋で少しさわったけど、やっぱり大きくなってる。
やっぱり巨乳雪女だ。いや、魔女だ。
それよりお兄ちゃんは何処?
「……!?見つけた。お兄ちゃぁん」
私はこの時お兄ちゃんがいたという嬉しさのあまり、デートしている事を忘れていた。
◇◇◇
「というわけ。えへへ〜」
「本当に偶然なんですね。それにしても雪がデートに交ざるのをやめていたのは少し驚き…驚いたわ。それより、」
「まあ、鈴奈に言われて私も確かにそうだなぁって思ったから。それより」
「「いつまでくっついてるの(ですか)鈴奈(ちゃん)!!」」
「良いじゃないですか。合流しちゃったんですから」
「それは、そうですが…蓮地さん他人のようにしていても無駄ですよ」
ですよね。
僕達は今、ワンダーランドエリアのフード店にいます。ここも満席で、座れたのは本当に幸運です。
それより、雪をここに来るようにあえて写真を送っていたなんて、そっちもびっくりですよ。
あと、砂漠エリアからワンダーランドエリアの距離って隣といっても距離あるのに、お兄ちゃんレーダー範囲広すぎないですか?
まあ、とにかく鈴と雪と出会っちゃいましたし。
「江菜さん」
「分かってます。雪が来たら三人で楽しむつもりでしたから」
「蓮、女の子二人に挟まれて幸せ者ですなぁ」
そう言うと僕の腕にくっついている鈴はムッとした表情で雪を睨むように見ました。
「雪さん、私が抜けてますけど」
「鈴奈は妹だからノーカン」
「な!?」
どうしよう。二人が睨み合い始めました。
もう、何でいきなり仲悪くなったんだろう。
仕方ない、気乗りしないですけど。
「雪、喧嘩するつもりなら、江菜さんとのデート続けるけど」
「う、うん。ごめん」
「お兄ちゃん大好き!」
直後、鈴は抱きつくのを腕から全身に変わりました。
「シスコン」
「シスコンですね」
シスコンなのかな?
只、せっかく遊園地に来たのに喧嘩するのはどうかと思って言っただけなんですけど。
意外だったのは江菜さんにまで言われたことです。
「それで、15時にパレードがあって皆どうで…かな?行く?」
「私は賛成」
「お兄ちゃんが行くなら何処でも」
「私も賛成です。ですが」
「?」
「蓮地さん、敬語止めませんか?」
そう言う江菜さんの表情は申し訳無さそうな表情です。
江菜さんに対しては敬語で、鈴や雪にはフラットだからってことですよね。
寧ろ僕が申し訳ないです。
「分かりました…分かった、江菜さん」
この時僕はこっそりスマホで江菜さんにメッセージを送りました。
僕からのメッセージ表示で察した江菜さんもこっそり目だけで見てくれました。―――
《蓮地》
江菜さん。江菜さんだけのときは敬語で良いですか?
何かその方がしっくりので
《江菜》
勿論です!?
特別感あって良いですね。――
「江菜さん、どうかしたんですか?お兄ちゃん見て、突然にやにやして」
「何でもありませんよ、鈴奈ちゃん」
江菜さんは誤魔化すも鈴は怪しんでいます。
三人といると飽きないかも。
「そう言えば、二人お昼は?」
「まだだよ。蓮と江菜は?」
「こっちもまだ」
という訳で皆で昼食を取ることになりました。遊園地はカロリーをよく使うという事で殆どの店のメニューがジャンクフード。
ここはハンバーガーメインの店みたいです
「ハンバーガー初めてなので楽しみです」
(((やっぱりお嬢様!!)))
きっと二人も同じ事を思いましたよね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます