おわりに
第19話 「小説」に期待する事
出版社が担う役目は現在多岐に渡り、新聞等のマスメディアから娯楽としての小説まで、人々の生活に深く根差した物となっています。
それでも出版業界が斜陽だと言われるのは、情報を誰でも簡単に手に入れられる時代になったからでしょう。
スマホの普及による消費者行動の変化。
Amazonに代表されるパラダイムシフト。
SNSによって拡散される様々な情報。
より多くの人に、より多くの情報が触れられるようになりました。
しかし、小説は”単なる情報”ではありません。
誰でも作り出す事はできますし、似たような内容のものであっても、同じものは一つとしてないでしょう。
そして、生きていく上で必須でもなければ、人類の未来を発展させるための研究でもありません。
役に立つ情報が載っているわけでも、資格取得のメソッドが語られているわけでもないのです。
言ってしまえば、無くても良いものであり、現状では需要と供給が釣り合っていません。
では、何故そもそも「小説」というコンテンツは出来上がったのでしょうか。
――「面白い」からです。
作家は自分の考える最高に「面白い」話を人に届け、相手を「感動」させたいと願いました。
「感動」とは心の動きです。
泣いたり、笑ったり、憧れたり、気味悪がったり。
そういった読者の心を揺さぶり、思考を書き換え、何年たっても色あせない情動を刻み付けたい。
誰かを自分の言葉で毒したい。
そういった”欲求”によって動いている生き物だと思います。
出版業界の在り方が変わったとしても、作り手の根本は変わらないでしょう。
しかし、「小説」の在り方は変わってきました。
今後も変わっていく事でしょう。
何もそれが悪い事だとは思っていません。
至極当然の事です。
読む人が、世代が、時代が、社会が変わっているのですから。
では、それら変化の中で「小説」が必要とされなくなった時。
作家はどうすれば良いのでしょうか。
「小説」に期待されている事は面白いかどうかであり、それを判断するのは読者です。
「読者=消費者」ではなくなってきた現在、小説は新たなステップへと進んでいます。
その行きつく先がどこであれ、きっと私は小説を愛し、そして小説を書いている事でしょう。
作家とは、本来そういった生き物なのですから。
これにて、本エッセイは完結となります。
最後になりましたが、ここまでお付き合いいただき、誠にありがとうございました。
少しでも皆さまにとって、意義のある論考になっていれば幸いです。
――橘ミコト
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます