第15話 Amazonによるパラダイムシフト

 すいません。電子書籍について話す前に、まず触れておきたい事があります。


『商品をネットで買う』という考えを全世界的に浸透させる事に成功した企業「Amazon」についてです。


 アマゾンは「AtoZ」。つまり、「何でも買える」を掲げており、実際その文言に近いサービスを提供しています。

 そして、そのサービスを提供するプラットフォームこそが小売業界にパラダイムシフトを引き起こしました。


 アマゾンの価格破壊です。



 小売業界には「この商品はこのくらいの価値があるよね」という暗黙のルールというか、最低保証値のようなものがありました。

 世間一般の相場とも言えます。


 そのため、例外的に安く商品を売っている企業/店舗があったとしても、人々にその安値がと認識はされませんでいた。

「安いからには何か理由があるんだろう」と言ったネガティブな意見だってあります。


 また、ひと昔前では近くの類似製品を扱っている店舗へ直接赴き、実際に目で見て値段を比較し購入するという購買行動が取られていました。


 ネットが普及し始めてきても「ネットで比較して店舗で買う」という動きは残っていたのです。



 ところが、アマゾンでは企業に関わらず大量の商品を比較する事ができ、最安値を消費者が簡単に見つけることができます。

 そして、「レビュー」という使用者の使い心地まで分かるようになりました。


 その結果、「多少高くても良い商品」から「安くて人気な商品」へ消費者のニーズが変わっていったのです。


 すると、どうなるでしょうか。


 企業は売り上げを確保するために、今までは他社よりも良い製品を作ってきました。

 しかし、いくら良くても「安く」なければ売れなくなってしまったのです。


 それでは困るので、企業は必至に価格を抑えようとします。

 安くなればそれだけ収益は減るので、より多くの商品を消費者に買ってもらわなければならなくなり、製造コストだけでなく営業も広告も圧迫されます。



 そして導き出されたのが、『薄利多売』という現在のモデル。


「Amazon」というプラットフォームが、という事です。



 アマゾンがこういった展開する理由に、「顧客志向」を貫き通す経営戦略があります。

「商品」というデバイスではなく、『サービス』を売っている訳です。


 例えば、Alexaは音声入力という付加価値を製品に与えるため、価格設定は既存品より高くなるのが普通です。


 しかし、実際は高いどころか通常よりも少し安いくらい。

 これは製品がデバイスであるためです。


 つまり、”Amazon prime”といったサービスで利益を出すから、物理的な製品には利益を追求していないのですね。


 こうして、小売業界は従来の販売モデルから薄利多売へとパラダイムシフトを起こされました。



 こうした世間の流れの中で生まれたのが、電子書籍です。


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