「小説」に期待されている事
第12話 日本における「小説」、じゃあ世界は?
前の話で「小説」は文字で書かれている性質上、その言語を読める人以外が楽しむのは難しいと述べました。
また、人口減少が危惧されている日本において、基本的には日本人しか読めない、日本語で書かれた「小説」が成長産業となれるか。
斜陽産業だと言われる理由はこの辺りにもあるでしょう。
では、出版社は何もしていないのかと言えば、そういう訳でもありません。
IT mediaビジネスオンライン「新たに開けた「小説×世界」のマーケット 講談社の挑戦 」
(https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1802/23/news019.html)より
――以下抜粋。
トップ作家ですら、外国版の追加印税が“オマケ程度”だった時代も長かったという。
(中略)
それが変化してきたのは、5年ほど前だ。中国、台湾、韓国といったアジア圏の市場が大きくなってきたのだという。
(中略)
「実写化などのメディアミックスも、日本のコンテンツホルダーにとって魅力的に映ります。中国は放映されるドラマの本数が日本の数倍で、それだけ“原作”を求めています。中国で実写ドラマがヒットすれば、海外で原作小説の売り上げが大きく伸びる可能性があります。いろいろな出版社が中国にコンテンツを売り込むようになり、日本よりも先に中国で実写化される作品も、近い将来増えてくるのではないでしょうか」(講談社文芸第三出版部編集長:河北壮平氏)
欧米も、アジアほどの伸び率ではないが、日本のコンテンツの刊行数や売り上げは成長している。
(中略)
欧米のアニメ・マンガファンが集うポータルサイト「MyAnimeList」の「Top Novels」ランキングを見てみよう。並んでいるのはほとんどがアニメ化を果たした作品だが、2位と登録者数で大きな差を付けて1位に輝いているのは「空ろの箱と零のマリア」。御影瑛路さんによるライトノベルで、日本での知名度は他のランキング上位作と比べるとけっして高くはない。
(中略)
急成長するアジア市場と、まだまだ“人気作家”が生まれる可能性がある欧米市場。河北さんは「どちらも狙っていきたい」と意気込む。
講談社は以前から、西尾維新さんのアニメ化もされた「物語」シリーズなどを海外に展開していたが、海外市場に可能性を感じ、翻訳のスピードを速め、刊行点数も増やした。河北さんが編集を務める小説レーベル「講談社タイガ」も、約40タイトルを韓国で刊行する予定があるという。海外でも、講談社タイガのようなジャンルを売り延ばしていく構えだ。
「日本の小説は、マンガやアニメに負けない強度のあるエンターテインメントで、世界に通用します。これまでは海外の市場状況が伴っていませんでしたが、ようやく追い付いてきました。世界に向けてさまざまな方法で面白さを紹介していきたいですね」(河北氏)
――以上。
抜粋と言いつつ、殆ど引用してしまいました。
他にもあります。
Record China「まだまだ続く韓国の「日本小説ブーム」、今年の販売数が過去最高を記録=韓国ネット「反日は口だけ」「なぜノーベル賞をとれない?」」
(https://www.recordchina.co.jp/b177024-s0-c30-d0035.html)より
――以下抜粋
2017年11月7日、韓国・KBSによると、韓国で日本の小説が大人気を博している。
韓国の大手書店チェーン「教保文庫」が今年1月から10月までの書籍の販売数を分析したところ、日本の小説は約82万冊が販売され、過去最高を記録した。
(中略)
これについて、韓国のネットユーザーは「東野圭吾の作品はどれを読んでも本当におもしろい」「悔しいけど東野圭吾の良さは認める」「日本の漫画を見て育ったからか、日本の文学に親しみがある」「日本の本は永久保存する価値がある」「村上春樹がノーベル賞を受賞できないのは世界に残された謎」「日本特有の文化が大好き」などのコメントを寄せ、日本の小説に好意的な反応を示している。
(中略)
一方、日本の小説に否定的な意見としては「外国の小説を読むと、その国特有の思考が自然に脳に染みつくという。日本人の小説は日本の変わった情緒と排他的な傾向が感じられ、読んでも全く共感できなかった」などが寄せられた。
(中略)
「一体誰が読んでいるの?電車で本を読んでいる人を見たことがない。みんなスマートフォンを見ている。韓国人は本当に本を読まない」という声もあった。
――以上。
このように、日本の小説というのは、海外でもある程度の需要があるようです。
何度も話に出しているLINEは韓国検索最大手ネイバーが親会社ですから、「小説」に関しても何か新たな展開を考えているかもしれないですね。
Business journal「LINE、韓国・親会社ネイバーの意向で急速に金融会社化…採算度外視で赤字転落、懸念も」
( https://biz-journal.jp/2019/02/post_26651_3.html)より
――以下抜粋。
LINEは対話アプリからプラットフォーム(基盤)へと軸足を移してきており、事業領域ではフィンテックやAIに投資を拡大している。
出澤氏は、1月29日付日経産業新聞のインタビューで、「収益よりまず利用者集め」として、「フィンテックは2~3年、AIは5年後のスパンで考えている」と語っている。つまり、3~5年は赤字覚悟で投資を続けるということだろう。
――以上。
上記の記事だけでなく以前引用した、
『「LINEノベル」が提供するサービスは、小説の「読書」と「投稿」の2つ。同社がまず事業として可能性を見いだしているのは「読書」のほうだ。同社執行役員プロデューサーの森啓氏は「まずはプラットフォームを成長させることが大事。そのために読者数を増やしたい」と話す。小説を投稿するより、読むほうがはるかにハードルが低い。またいくら投稿があっても、読者がいなければ事業の芽は断たれる。そこで第一ステップとしては、LINEノベルのファンを増やしてビジネスの基盤を固めようというわけだ。』
(日経クロストレンド「LINEの新コンテンツ事業は「小説」 投稿から読書まで一気通貫」より抜粋)
という言葉にも表れているかと。
まあ、LINEはセキュリティ面で問題視されている点があるのですが、同調圧力の強い日本において、どこまで真剣に受け止められているかは甚だ疑問です。
興味がある方は以下の記事もどうぞ。
Make Brandnew Japan「韓国政府にも検閲されるLINEが危険な理由。個人情報を守る対策法」
(http://brandnew-japan.info/archives/255)
話を戻します。
日本の小説は国内だけでなく、今後海外にも発信していく必要があり、その動きは徐々に大きくなっている様子が見て取れました。
しかし、日本の小説はまず日本語で書かれるのですから、通常の作業に加え「翻訳」という大変なステップを踏まなければなりません。
また、海外は日本と異なる文化、慣習、視点を持っています。
ただ、英訳すれば良いという話でもありません。
では、どのような点が問題になっているのでしょうか。
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