第5話 令和小説大賞から見る可能性
今話では「令和小説大賞」について、さらに突っ込んで考えていきます。
正直、私の第一印象は「既存のコンテストと大差ないな」でした。
規模が大きいという点が違うと。まあ、その程度です。
しかし、段々と今後の「”小説”に対する姿勢」の変化が見て取れるのではないか。そう感じ始めたのです。
そう思ったのは「LINE×アニプレックス×日本テレビ」の3社が連携してコンテストを開催するためです。
何気なく流してましたけど、この3社。全て出版会社ではないんですよね。
勿論、メディアミックスという観点から言えば無関係どころか関係大ありなんですが、この3企業側からすれば別に紙媒体に拘る必要はない訳です。
けれども、企業は「小説」を求めている。
何故でしょうか。
私はこの時、「風の谷のナウシカ」の誕生秘話を思い出しました。
宮崎駿監督は「風の谷のナウシカ」の企画を出した際、「原作(漫画)がない作品を映画化しても売れない」と言われ当初は断られ続けていた話です。
当時は誌上で人気の作品を映画化する事でリスクを減らし、興行収入を得る事が当然でした。
何かと似ていませんか?
そう。”書籍化した人気作品をアニメ化する”、という流れにそっくりなのです。
現在ではアニメ制作会社のオリジナル作品など普通にありますが、宮崎駿氏は当時において革新的な考え方を持っていました。
そのため、「絶対に面白い!」という自信だけでは、映画化の企画が通らなかったのです。
現状も同じです。
どんなに面白いWEB小説でも「書籍化していなければダメ」という、空気が蔓延している気がしてなりません。
「面白いならどっちにしろ書籍化されるんじゃ?」と感じる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、「WEBでは人気でも書籍化したら売り上げはさっぱり」という例が珍しくない、という事にも本エッセイでは触れましたね。
では、逆転の発想をしてみましょう。
「書籍はさっぱりだけど、映像映えしそうな作品」は無いでしょうか。
「書籍よりもゲームシナリオ、サウンドノベルに合ってそうな作品」は無いでしょうか。
私はこの「書籍化」というステップを必ず踏まなければメジャーデビュー/メディアミックスできない現状に疑問を抱いています。
小説家とは紙の本を書く人ではなくとも良いと、そう考えています。
LINEノベルから発信される情報の多くは「投稿者が出版社を選べるシステム」を目玉として推しているように見受けられます。
しかし、ユーザー(WEB作家)からしてみれば、
「いやいや、そこじゃねえんだわ」
という感じが先行するのは、私だけではないはず。
だってこの構図、ただの”就活”じゃないですか。
企業(出版社)が新卒(WEB作家)を雇う図式は変わらず、企業が結局採用(受賞)を決めています。
大手は人(作家)が潤沢にいるから人材不足の中でも常に人気。中小企業は少しでも優秀(面白い作品を書ける)な新卒を採用しようと躍起になる。
そして、新入社員(新人作家)が増えても次々と辞めていく(売れない)。
そういった背景から、新卒が企業を選ぶ時代(LINEノベル)と言われるようになってきた。
驚くほど同じですね。ビックリ。笑
殆ど情報が公開されていない「有料チケット制度」とか「広告レベニューシェア制度」とか。
そっちの方が気になるよ!
つまりですね。
オファーを共有したところで、『出版社(編集)の方から行動を起こさなければデビューできない』という構図は今も昔も、そしてLINEノベルも。
まっっっったく、変わっていない!
という点が問題だと考えるのです。
ちなみに、持ち込みやコンテストは能動的なようでいて採用面接を受けているだけですし、判断を下すのは企業に他なりませんから。やはり同じ事ですね。
失礼、話が逸れました。
これら現状を踏まえた上で令和小説大賞を見てみると、「あれ?」と思ったのです。
――むしろこれ、書籍化はオマケなのでは?
注目すべきは、『WEB投稿作品を(間にステップを挟まず)映像化する』、という点にあると思います。
製作時間の関係上、書籍化が先でしょうからあまり気にならない人が多いと思いますが、映像化を確約している賞ってありましたっけ?
メディアミックスの流れで映像化する事もありますよ、ではなく。
ここからは私の妄想です。
何の確証も、情報も。
特にこれといった根拠などありません。
けれども、もしそうなったら、WEB小説は確実に世界が広がります。
LINEノベルはスタ誕的システムを採用していますが、ここに現在参画しているのは出版社のみです。
――ここに、アニメ会社やゲーム会社も参入してきたらどうなるのでしょうか?
WEBに投稿している作品をゲームシナリオに、アニメの脚本に。
そういったスカウトの形があっても良いと思います。
「原作=書籍」ではなく、「原作=WEB小説」という考えはもっとあっても良いと私は考えています。
つまり、WEB小説のメディアミックス化です。
その第一ステップとして、出版社の関わらない文学賞が開催されていてもおかしくはありません。
むしろ、この文学賞を切っ掛けに、今後そのような動きが生まれてきてもおかしくないと、私はそう考えています。
また、LINEの舛田CSMOも『当社はテキストベースのサービスにチャレンジし、多彩なコンテンツをデリバリーする仕組みを作る(IT media NEWS「なぜ出版不況の今、LINEが“小説ビジネス”を始めるのか? 」より抜粋)』とありました。
テキストベースの「小説」をLINEノベルで受け付け、「アニメ」や「ゲーム」という形(多彩なコンテンツ)をデリバリーする。とも置き換えられます。
「LINEノベル」自体が小説に特化したコンテンツである事に変わりはありません。
しかし、ここで問題になるのが、スケジュール管理や各種契約内容の確認など。
「書籍化していない=編集がサポートについていない」という事ですから。投稿者(作者)に全ての能力が備わっていると考えるのは楽観視しすぎでしょう。
そして、結局これでは『企業側から動く』という構図に変化はありません。
何だかんだで「なろうの二番煎じ」と言われるオチが見えてきます。
では、どうすれば良いのか。
出版業界はどこを目指すべきなのか。
そして、企業(編集)・作者・読者の関係は、どう変化していくのか。
私なりに考えていきたいと思います。
次話からは各立場において「小説」というコンテンツに期待している事について考えていきましょう。
いよいよ本題という感じでしょうか。
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