第3話 LINEノベルの試み
前話で触れたLINEノベルの試みについて、今回は考えていきたいと思います。
〇『LINEマンガ』と同様に、いろんな出版社の人気小説作品が『読めば無料』で読めること
冒頭で述べた事ですが、公式作家の作品を全て丸々無料で読めたらアマチュア作家など見向きもされないでしょう。
それだけ、ネームバリューというものは強いです。
玉石混交であるWEB小説において、作品の面白さがある程度保障されているというのはとても大きいと考えられます。
そこで考えられたのが「話売り」という手法です。
具体的な内容に関しては下記の記事に詳細が載っていました。
日経クロストレンド「LINEの新コンテンツ事業は「小説」 投稿から読書まで一気通貫」
(https://trend.nikkeibp.co.jp/atcl/contents/watch/00013/00367/)より
――以下抜粋。
掲載作品(一般ユーザーからの投稿作品は除く)は1~3話を無料で公開し、4話以降を有料にする。現在のところ1話当たりの値段は未定。アプリ配信時に発表する予定だ。さらに読書時間に応じて、4話以降(有償コンテンツ)が無料となるチケットも配布する。読書時間が長いほど多くの無償チケットを手に入れる仕組みで、1週間継続すると、小説1冊を無料で読めるという。
――以上。
IT media NEWS「なぜ出版不況の今、LINEが“小説ビジネス”を始めるのか? 」
(https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1904/16/news124.html)より
――以下抜粋。
利用の促進に向け、課金なしでも読み進められる仕組みも用意。同サービスのコンテンツを一定以上閲覧したユーザーに対し、利用時間に応じて「15分間無料」「30分間無料」といったチケットを配布(1週間で失効)。「読書に対するハードルを下げ、20~30代の若年層などにもっと著作物を読んでもらいたい」(LINE広報担当者)としている。
オリジナル作品を書籍として販売する計画もあり、課金収入と販売収入を主な収益源とする。ユーザーの読みやすさを重視し、サイトやアプリには広告を表示させず、広告収入は得ない。収益目標や、黒字化のめどは現時点では非公開。
――以上。
つまり、色々な公式作品の1~3話を読むか、一般投稿の作品を読み漁るか。
この二つの方法を取り読書時間を一定時間稼ぐ事で時間単位での有償コンテンツの無料利用が可能になるという事でしょう。
個人的には「何話分無料」かと思っていたので、時間単位というのは少々驚きました。
「読むのが早い人ほど得」という話ではなく、読書を促したいにも関わらずじっくり読み込ませない施策には疑問を感じてしまいます。
結局は企業が利益を得るため「ゆっくり何度も読みたければ買ってね」という考えが透けて見えているようです。それが一概に悪いとは思いませんが。
まあ、あくまで現段階での方針ではあるので、今後変更される事は十分に考えられます。
閑話休題。
これは、「公式作家の人気作を読むために興味がない他の小説を読む」という理由付けでも構わないから、『ユーザーにとっての読書を習慣化したい』という意思表示の表れではないかと考えています。
勿論、課金をする事で公式作品の続きを読み、読書時間を稼ぐという方法もあります。むしろ、この選択をするユーザーの方が多いでしょう。
しかし、もしかしたら、「あれ? これ面白いじゃん。しかも有料じゃない(一般投稿だ)から最後まで読めるし。ラッキー」みたいな事が起こるかもしれない。
LINEノベルを利用するであろう多くのユーザーにとって、公式作品か一般投稿か。その違いは無いに等しいでしょう。面白ければどっちでも良い訳です。
であれば、運営側として読者を如何にして多くの作品に触れさせる事が出来るか。
これが「LINEノベル」のテーマの一つであると考えられるでしょう。
『「LINEノベル」が提供するサービスは、小説の「読書」と「投稿」の2つ。同社がまず事業として可能性を見いだしているのは「読書」のほうだ。同社執行役員プロデューサーの森啓氏は「まずはプラットフォームを成長させることが大事。そのために読者数を増やしたい」と話す。小説を投稿するより、読むほうがはるかにハードルが低い。またいくら投稿があっても、読者がいなければ事業の芽は断たれる。そこで第一ステップとしては、LINEノベルのファンを増やしてビジネスの基盤を固めようというわけだ。』
(日経クロストレンド「LINEの新コンテンツ事業は「小説」 投稿から読書まで一気通貫」より抜粋)
そのための「話売り」。
そして「読むと無料」のシステムだと推測できました。
続いて。
〇書き手への還元サービスとして、『有料チケット』制度や『広告レベニューシェア』制度があること
これは三木一馬氏の言葉を借りると、『『作家ファースト』の考え方をもとにしてます。書き手への応援として、読者からのコメントだけで無く、運営を介した金銭的なバックアップをシステム化します(note「滅びが近い出版業界を復活させる、たったひとつの冴えたやり方」より)』。
との事です。
そのため、ここで言う”書き手”とはいわゆる”アマチュア作家”であると想定します。
そして、運営を介した金銭的なバックアップの具体例として挙げられているのが、「有料チケット」制度と「広告レベニューシェア」です。
一つずつ見ていきましょう。
・有料チケット制度
前述したシステム「読むと無料」になる。これがチケット制であった事から、有料チケット制度とは、本来は無料であるはずの一般投稿作品を有料化する事ではないかと推測できます。
昨今のWEB小説の潮流を見るに、WEBで人気な作品には馬鹿にできない程の読者が付いています。
例えば、小説投稿サイトAから別のサイトBへと活動の場を移した人気作者がいると、それについてくる読者がサイトBへ大量に流入してくる事などがありますね。
それほどまでに人気があると、書籍化の話も当然くるでしょう。
しかし、ここで重要なのが、如何に人気な作品でも書籍化していなければ無償という点です。
これに対して有料チケット制度があれば、作者が自身で投稿作品の閲覧を有料化でき、書籍化していなくとも作品からの収入を得られるのです。
カクヨムでも2019年秋に収益化を目指す動きがありますが、この収益化は「広告」と「投げ銭」によるものです。
よって、カクヨムの収益モデルは読者の好意による支払になるのですが、LINEノベルは読者に支払わせる、という事ですね。
ここで問題となるのがユーザー数。
如何に収益モデルを打ち立てても、見てくれる、払ってくれる人がいなければ意味がない。
しかし、LINEは媒体が元々抱える潜在的なユーザーをターゲットとしていますから、この課題をクリアする可能性が高くなっているのでしょう。
若干楽観視している気がしないでもないですが、そのための「話売り」・「読むと無料」というシステムですね。
どのような効果が認められるかは今夏以降のグランドオープンしてからのお楽しみでしょうか。
続いて問題になるのがチケット単価ですが、これは公式作品の話単価が決まっていない以上、議論できる情報がありませんのでスルーします。
以上の情報、推測を踏まえた上で結論づけるならば、作者が疑似的に電子書籍を販売すると考えるのが一番分かりやすそうです。
・広告レベニューシェア制度
まずは言葉の意味について。
レベニューシェア(Revenue share)とは、簡単に言えば事業収益の分配率をあらかじめ決める事です。簡単にと言いながらちょっと難しいですね。
では、折角なのでLINEノベルの試みを具体例として説明してみましょう。
今回は広告レベニューシェアという事なので、広報活動について考えます。
普通、作者が自作品を宣伝する場合、出版社と契約した書籍化作品は別として、作者が全て自分で企画立案、プロデュースをしていかなければなりません。
お手軽なところではTwitterでしょうか。
他にも絵を書く、動画(PV)を作る等々。カクヨムでは他の作品を読みに行くことを”営業”と表現したりもしますよね。
しかし、宣伝を突き詰めようと思えば、それ相応の金銭とスキルが必要になります。
誰にでも簡単にできる、とはとても言えません。
そこで!
その手のプロ、ここで言えばLINEノベルという運営企業、に「私の作品の広報をして下さい!」とお願いできたら楽だとは思いませんか?
広告レベニューシェアの場合は、広告に必要な費用の一部や全てをLINEノベルが賄う代わりに、作者がその広告から得られる収益をあらかじめ決められた配分率でLINEノベルにも分配する、という仕組みです。
言ってしまえば、先述した有料チケット制度との併用によって、初めて効果を発揮するシステムと考えられます。
一般投稿は基本的に無料な訳ですから、広告を打って読者が来ても閲覧数しか増えず収益は発生しませんし。
ただ、LINEノベルの場合は全く読まれない等の危惧がある事から、一部費用を前金として払う必要はあると考えられます。
流石に全て負担だとLINEノベル側に旨みが少ないですから。
以上の施策は(自分の知る限りでは)三木一馬氏のnoteでしか現状語られていないので、本当に実施されるかはまだ分かりません。
しかし、書籍化がされなくとも一定数の読者を獲得できれば収益を増加させる事ができるこういった仕組みがあれば、執筆・投稿へのモチベーションは上がるでしょう。
私はアマチュアにとって非常に良い制度だと思います。
作品を投稿しても読まれない。
今まではそこで嘆いているだけだったけれど、LINEノベルであれば「じゃあ広告だそっかな」と考えられる訳です。
さらに、「話売り」と「有料チケット制度」を用いれば「10話までは無料にして11話以降は有料にしよう」とか「とにかく読んでほしいから最終話だけ有料にしよう」とか作者が自分で考えて自作品を有償化できます。
その結果、読者が少しずつ増え評価も高まり、さらに広告を大きく打つ事ができる。
最終的には書籍化となってデビュー。
っというのが理想でしょうかね。
まあ、そこまで簡単でもないでしょうけれど。
また、WEB小説からの書籍化あるあるの一つとして、WEBでは人気だったけれど書籍の売り上げは悪い、という事があります。
デビューしても結局売れずに逆戻り。
切なくなりますし、一度成功した分ショックも大きいでしょう。
しかし、書籍化しても変わらずLINEノベルで公開を続けていれば収益を得る事ができます。
以前より名も売れていますし、WEBで新作を投稿した際には広告を打たずとも始めから有料化するなど、作者の自由に挑戦できます。
そして、書籍は買わないけどチケットを買ってWEBで読むという人は、特に若年層に多そうだと予測できます。
つまり、無理に書籍化に拘らなくても良いのではないか。
そういう解釈すら出来るようになると、私は素晴らしい思います。
音楽で言うなればWEBがインディースで、書籍化がメジャーでしょうか。
活躍の場がどちらにしろ、小説家としてより自由に活動できる土壌が出来上がりつつあるのかもしれません。
夢が広がりますね。
『LINE広報担当者によると、斜陽化がささやかれる出版関連ビジネスにあえて取り組む理由は、「スマホ時代を席巻するコンテンツサービスを作るため」。ユーザーが自由にコンテンツを配信・販売できるサービスはピースオブケイクの「note」などがあるが、noteではユーザーの体験談やオピニオンをまとめた作品も取引されている。LINEノベルはあくまで“小説”にこだわることで差別化を図る。
(中略)
舛田CSMOも「スマホ時代の象徴となるノベルサービスはいまだに登場していない。だからこそ当社はテキストベースのサービスにチャレンジし、多彩なコンテンツをデリバリーする仕組みを作る」と意気込む。』
(IT media NEWS「なぜ出版不況の今、LINEが“小説ビジネス”を始めるのか? 」より抜粋)
とあります。
出版業界における既存の考え方をぶち破ろうという気概を持っているのでしょう。
ただし、これは私が情報収集と考察をした結果、LINEノベルはこういうコンテンツになるのではないか? と予測しただけにすぎません。
正直、色々考えているんだったらきちんと発信してくれ。でないとユーザーには全く伝わってないぞ。
と言いたい。
さてさて。
ここまで、LINEノベルに関して様々な可能性を考えてきましたが、もう一つ。
LINEノベルの公開と供に発表された要素があります。
『令和小説大賞』です。
新元号を関する文学賞には、並々ならぬ気合が見受けられますね。
次話はこの小説大賞について考えていきたいと思います。
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