第12話
目を覚ますとベッドの上にいた。ここは、家じゃないよな。病院か?詩音もいないし、どうしたらいいんだ?とりあえず起きるか。
そう思ってたらドアが開いて、詩音が入って来た。
「しゅうくん…。」
そう言って駆け寄ってくる。相当心配させたんだな。
「大丈夫?痛いとこない?私のことわかる?あ、看護師さん、看護師さん呼ばなきゃ。待っててね。」
そう言って詩音は出ていった。せわしない奴だな、ほんと。
しばらくして詩音が先生たちを連れて戻って来た。
「気分はどうだい?」
「あ、はい。大丈夫です。あの、記憶、戻りました。」
俺がそう言うと全員に緊張が走るのが分かった。
「ほ、ほんと?しゅうくん。」
「ああ、えっと、何て言えばいいか分かんないけど…。夢を見たんだ。前の俺が昔の事話してくれる夢。そこで色々教えてもらったんだ。」
「そう、前のしゅうくんが…。」
俺が言うと詩音は少し複雑な顔をした。
「まあ、この後は二人でゆっくり話してください。」
先生はなんだか嬉しそうにそう言うと出ていった。
「しゅうくん、ごめんね…。」
いきなり詩音が謝って来た。
「何が?」
「いろいろ、ウソついてたこと。」
そう言って詩音は俯いてしまう。嘘ついてた、か。そうだよな、詩音と俺は『仲のいい友達』ってことになってたもんな。それが本当は結婚の約束までしてた仲だったなんて、思いもしなかった。
でも、そんなの昔の事だ。
「ちゃんと言おうとしてくれてただろ?」
「うん…。でも…。」
「それだけで十分だよ。」
そう、十分だ。言おうとしてくれて、俺は嬉しかったんだ。
「なあ、少し話さないか?これからのこととか。」
「うん。はなそ、これからのことだけじゃなくて、色んなこと。」
「…ああ、そうだな。」
その後も、色んなことを話した。話したことで、詩音は俺が本当に記憶を取り戻したのを分かって、しばらくして「良かった…。」と言いながら泣いていた。
数日経って退院することになった。記憶も戻って通院する必要もなくなった。色々思い出した俺は3人と一緒に昔話をした。また、社会復帰をするために就職活動もした。詩音は「家に一人でいることは寂しい」って言ってたけどさすがにこのまま夏海と撫子に甘えてばかりじゃいられないからと言うと納得してくれた。何社かは落ちてしまったが何とか就職も出来た。
そして、数ヶ月が経った。
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