第11話
気が付くと朝になっていた。私、あのまま寝てたんだ。しゅうくんは、まだ目を覚まさない。ぐっすり寝てるみたい。
「おはよ、しゅうくん。」
そう言って頬を撫でれば、前なら顔を真っ赤にして起きたのに、今はなんだか幸せそうに笑っている。なんだかそれがかわいかった。
でも、そのうち不安になる。一か月も目を覚まさなかったこともあったから、またそうなったらどうしようと思う。
「しゅうくん…。」
私はまた泣いてしまった。
「失礼します。」
そうしているうちに看護師さんが入って来た。若い女の人で、優しそうな人。しゅうくんが目を覚まさなかった間、しゅうくんの担当看護師をしてくれてた人だった。
「おはようございます。」
「おはようございます。大丈夫ですか?」
泣いてる私を見て看護師さんは心配そうにそう言って来てくれた。
「すみません、大丈夫です。」
泣いてるのが恥ずかしくて無理やり笑った。
「…まだ目を覚ましませんね。」
「はい。なんだか気持ちよさそうに寝てます。」
そう思うと少し安心な気がした。倒れた直後は苦しそうな表情をしていたけれど今は幸せそうな、気持ちよさそうな顔してる。良かった。
「あ、そうだ。よければこれ、もらってください。」
そう言って差し出してくれたのは可愛い包装の飴だった。
「これ…。」
「私、こういうの大好きなんです。あの、元気出してほしくて…。」
「…ありがとうございます。私もこういうの好きなので嬉しいです。」
「そうですか、もし時間があったらお話ししましょう?少しは気晴らし来なるかもしれないですし」
「そうですね。それは嬉しいです。」
私がそう言うと看護師さんはホッとした様子で笑った。
「じゃあ、何かあったら呼んでくださいね。」
そう言って看護師さんは出ていった。
「しおーん!ご飯持ってきたよー!!」
しばらくして撫子ちゃんたちが来てくれた。
「撫子ちゃん、夏海くん。ありがとう。」
「とは言えコンビニのおにぎりだけどね。」
「悪いな、あんまいいものじゃなくて。」
「ううん、十分だよ。ありがと。」
そう言うと二人は恥ずかしそうに笑った。
「しかし、こいつは気持ちよさそうに寝てるな…。ったく、心配を返してほしいぜ…。」
夏海くんがそう言って苦笑いする。そう言えば夏海くんは昨日ここに来なかったんだっけ。
「うん昨日の夜からこんな感じ。」
「そうか。…詩音は?大丈夫か?」
「うん。大丈夫。」
「そうか。」
もともと無口な夏海くんはそう言うとおにぎりを渡してくれた。
「ありがとう。」
でも、おにぎりをもらっても食欲が湧かない。せっかく買って来てくれたのに…。
「詩音、食べなきゃもたないよ。」
「うん。分かってる。」
撫子ちゃんに言われてようやくおにぎりを開ける。昨日の夜から何も食べてなかったからすごくおいしく感じる。
「おいしい。」
「良かった。」
おにぎりを食べ終わると二人は仕事向かった。二人が帰って来るまでに目を覚ますといいな。
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