第8話
次の日。俺は詩音に言われて部屋で待っていた。机の上にはアルバムと日記。その二つを今日、やっと開くんだ。
「ごめん、お待たせ。」
そう言って詩音が入って来た。俺の隣に座ると詩音はアルバムと俺を交互に見た。
「大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。」
そう言ったものの手は小刻みに震えてるし正直怖い。でも、知りたいなら、見るしかない。
「よし、開くぞ。」
「うん。」
そうしてアルバムを開いた。そこに写ってたのは、俺と詩音ばかりだった。
二人で遊園地に行った写真。水族館の写真。イルミネーションの写真…。いわゆるデートのような写真が多かった。それぞれの写真に詩音が解説してくれる。ただ、一枚だけは何も教えてくれなかった。それは最後の写真。
最後の写真は、お揃いの指輪の写真だった。
「これ…。」
「…。」
詩音は俯いたままだった。どういうことだ?だって、俺たちは仲のいい友達なんじゃ…?
「…日記も、見てみる?」
「あ、ああ、そうだな…。」
写真の事、何も言わないのかよ。日記まで見たら聞いてみよう。そう思って日記を開いた。詩音にも見えるように。
【4月1日
今日から詩音と同棲スタート。やばい、めっちゃ緊張する。好きな人と一つ屋根の下ってやばいな。でも、まだこれからだ。これから俺はやらなきゃいけないことがあるんだ。頑張ろう。】
同棲?ルームシェアじゃなかったのか?あと、前の俺も詩音が好きだったのか?それに、【やらなきゃいけないこと】ってなんだ?
それからしばらくは普通の日記。【今日は詩音とこんなところに行った】とか【詩音とこんな話をした】とか、大体は詩音とやったことばかり。詩音もたまに「あ、この時はこうだったよ」とか、楽しそうに話してくれる。
【9月10日
久しぶりに詩音と紫苑公園に来た。そこで花言葉の話になった。詩音の花言葉。『君を忘れない』って詩音にぴったりだよな。その紫苑を花束にして、明日プロポーズする。撫子と夏海にも協力してもらえる。絶対成功させるんだ。】
そこで、日記は終わっていた。
まさか、そんな事って…。だって、俺たちは仲のいい友達なんじゃ…。
「…ごめんね。」
最後まで読んで、少ししてから詩音がそう言った。
「ウソ、吐いてたの。お医者さんから、隠しておいた方がいいって、言われて…。」
「そう、なのか…。」
「うん…。私達、ほんとは恋人同士で、あの日、私にくれた指輪も、ここにあるよ。」
そう言って詩音が出したのは、黒く小さい箱。その中には小さくも輝く指輪が…。
そこで、頭が痛くなってきた。
「しゅうくん?大丈夫、しゅうくん!?」
詩音がそう言ってるのが遠くに聞こえて、俺の意識は途絶えた。
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