第5話

 朝、隣にしゅうくんがいる安心感からかぐっすり寝むってしまった。

 と同時にすごいやってしまった感…。昨日の夜、私は何をした?えっと、しゅうくんにおやすみ言って、それから…

 あ、そうだ、あの日の夢を見たんだ。それで、しゅうくんがいるかを確かめるために部屋に来て、少し落ち着いて部屋に戻ろうとして…。

『行くな…。』

 そう言われて、しゅうくんの部屋で寝ることになってそれなら一緒に寝たいって言っちゃって…。

 ああああああああああああああ!何やってんだ私!いや、ほんとに!

 そりゃ記憶無くす前はよく一緒に寝てたよ!だけど、でも、今は…。

「ん、あ、はよ。」

「お、おはよ…。」

 しゅうくんには、その記憶は、ない…。

「よく寝れた?」

 それでもしゅうくんは何でもないようにそう聞いてくれる。戸惑ってるだろうに…。

「うん、おかげさまで…。」

「そっか、良かった。」

 その顔が、すごく懐かしくて、哀しくなる。

「しゅうくん、あのね…。」

「ん?」

 言いたくなる。もう、辛いよ。

「あのね、私達…。」

 そう言いかけて思い出す。言わないって『待つ』って決めたのに…。

「ごめん、何でもない。」

「そう、なのか。」

 何やってんだろ、私。しゅうくん、ほんとにごめんね…。


 しゅうくんは今日は夏海くんとお出かけしてて、撫子ちゃんはお仕事で…。家に一人きりだから散歩に出かけた。気分転換にもなるしね。

 久しぶりに一人になったのに、私はまた紫苑公園に来ていた。昔から一人になるとここに来ていた

 ここで少し、昔話をしよう。しゅうくんと私が出会った頃の話を…。


 私が小学生の時、両親と兄を交通事故で亡くした。親族をたらいまわしにされ、高校の時に叔父から援助を受けて独立した。独立後、生まれ育った家の近くにあった紫苑公園によく通うようになった。

 高校生になった初めての夏に、叔父に連れられ事故を起こした相手と会うことになった。その連絡を受けた私は紫苑公園にいて、そこでパニックを起こした。

『大丈夫ですか?』

 その時声をかけてくれたのがしゅうくんだった。

 私が事情を話すとしゅうくんは静かに聞いてくれてその後自分も両親を亡くしたこと、今は一人暮らしなことを話してくれた。

 それから私たちは惹かれ合っていった。そして高校卒業後、私たちは同棲を始めた。そしてそれから一年後、事故は起きた。


「しゅうくん、しゅうくん…。」

 気付くと私は紫苑の花の前で泣いていた。

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