第7話

亀さんが出てきた翌日、家の周囲は一変していた。

昨日の時点で家の横の草原が荒野に様変わりしたのだが。


「これってあれだよね…。」


「泥だらけですね。プルプル」


呆然と立ち尽くす中、後ろの亀さんは青い顔をしている。


「亀さん何かしましたか?!それとも何もしなかったからこうなってるんですか?!」


ハジメが問い詰めると、


「我のせいではないはず…だ。」


と否定をするも歯切れの悪い言い方をする亀


「その間はなんだ。何か知ってるんだな!!」


明らかにおかしい亀をハジメは問い詰める。

実際の実力差から言えば


ハジメ《《メイ《《絶対越えられない壁《《《亀(仮)


が本来の差であるが、亀(仮)のしてきたことによりこの土地にあったはずの国を潰したかもしれない罪悪感と、ハジメの前世でのイケメンに対する嫌悪感からか


亀(仮)《《《ハジメ《《絶対越えられない壁《《《メイ


に脳内補正されている。

亀(仮)自体は暴言吐かれても気にしないいいやつなのかもしれないが、それはそれ、これはこれである。


「……してたみたいで「声が小さい!!」我も眠ってて寒いと思ってたらちょうどよく水源があっての、自分の身体を当てたら気持ちいいのなんのって…。「GUILTY !!」えっ。」


「メイさんや、どう思う?」


「結局、この辺り草しか生えてなかったのって…亀さんが水源に蓋してたせいだと思う。プルプル」


「可愛そうに何年前か知らないけど飲み水なくなったら死んだ人もいただろうになあー。」


情に訴えるハジメに対して、遂に亀(仮)が陥落した。


「で、我は何をすればよいのだ。」


「一つ目は、あそこに向かって全速力で向かって」


ハジメは自分の行けない外の木を指す。


「一つ目って、いくつやれば良いのじゃ…。」


「たらたらしてないでさっさとやる!!」


「老人使いが荒いのぉ。」


亀(仮)は今は青年エルフの姿になっているのだが誰も突っ込まない。


言われた通りに走って行くも、ハジメとメイと同じく跳ね返される。


「うぬぬ。結界か小癪な!!」


大亀に変化して向かっていくが


"Gooooooon"


音が鳴り響くも一歩も外に出れない。


「やっぱりこうなるか」


ハジメが呟くと、


「お主分かっててやらせたのか?」


「うーん、わかんなかったからやってもらったんだよ。亀さんの力でも壊れないかあ。メイに何度か酸弾でも壊そうとしたけど、無理だったからもしかしてとは思ってたよ。」


「バカなことさせよって。もういいのじゃな。」


「まだあるよ。まさか、このくらいですまないよ。」


「ぐぬぅ。」


「じゃあ、二つ目。あの土地どうにかして。あのまま、泥だと畑にも、飲み水にも使えないし。」


その提案に対して


「そんな簡単な事か。」


「え、?こっちの方が難しいのに。」


意外にも帰って来た答えは簡単と言われた。


「魔法を使えばすぐじゃ。お主にもできるぞ。」


「え、それ本気で言ってる?」


二週間近く経ってもどの魔法もレベル1にもならないハジメにとっては青天の霹靂である。

なぜか昨日の井戸堀で採掘レベルは1に上がっていたのだが。


「お主、魔力はあるのに魔法は使えんのか?」


「練習はしてるけどなかなかできないんだよ!!文句あるなら自称神にいってくれ。姿覚えてないけど」


「むむ、お主の中身ちょっと見てみるかのぉ。」


というと、黙っていたメイさんが


「プルプル。亀さんエローい。」


と言うとすかさず


「俺もソッチのけはないぞ。」


と追撃をする。


「違うわい!!情報のみ取り出すんじゃ。」


と亀(仮)はいじりに対して不満げにこう言った。


「美青年姿で言われると怖いからやめて。で、それってこっちで言う。ステータス?」


「ステイタスとやらは知らんがだいたいのことはわかるぞ。」


フムと考え込むと…ようやくハジメは気づいた。


「スマホで自分取ればいいじゃん。」


「スマホ?なんじゃそれ?」


スマホのことを説明しようにも#語彙__ごい__#力のないハジメには説明できないので説明を断念する。


「いいから見といて。鑑定アプリで視点切り返して…え、え、なにこれ!!」


鏡がなく、自分の姿を確認して見ると映っていたのは五歳の頃の自分ではなく、茶髪の利口そうな美少年。


「うわっへこむわあ…。女の子にはモテるかも知らんがカマっぽい人には掘られそう。へこむわあ…。」


「ワケわからんことで悩んでないではよせい。」


と、亀(仮)にせかされる。


「見た目はいいかもしれないけど中身残念だから大丈夫プルプル。」


「大丈夫かあ。いいんだよね安全なんだ、よかった」


訳のわからんフォローに納得しながら改めてアプリで確認する。


アプリ使用回数により詳細数値が表示可能になりました。


名前 ハジメ

種族 人族?

種族レベル1

体力 250

魔力20000

敏捷 150

運 105

知力15(50)

※知力に関しては通常時と興味がある時期と異なります。


スキル(使用回数/レベル上昇使用回数)

農業レベル5(168/500)

採掘レベル1(27/200)

料理レベル1(2/100)

魔法レベル0 (2798/10000)


称号

頑強(必要以上に体を酷使した人間に送られる称号)

体が頑丈になる。

魔法の加護

全魔法使えるようになる。

※ただし、どの種族よりも発現時期は遅い。


従魔

スライム


…………誰一人として、言葉を話さない。


「うん、よかったの。全属性使えるんじゃぞ」


「ハジメはハジメだから大丈夫。プルプル」


慰めながら、二人?とも小刻みに震えている。


「一万回練習しないといけないのがそんなに悪いのか?!」


「いや、ソッチじゃないわい、ぷぷぷ」


「笑っちゃ可哀想。プルプル」


「じゃがの、知力15って…分かってはおったが15…ふあっはっはっはっあー、あー、涙出る。」


「ハジメはハジメだから、大丈夫。プルプル」


メイはそういうものの、明らかにいつもと震えかたが違う。


「ソッチかよ。五歳は成長期だから伸びるはず…だよな。」


自分に納得させるように、言葉を発するハジメの姿に笑いがおさまった亀(仮)はさすがに可愛そうになったのか。


「まだ、魔法つかえんようじゃから。我が行ってくる。」


そういうと泥の中に入って行った。

何秒も経たないうちに家に近い所から徐々に地面が固まっていく。


「スゲー、魔法!!!」


地表の固まりが終わった頃、その中央には池が出来ていた。


しばらくすると亀(仮)がエルフの姿で浮き上がってきた。


「こんなもんかの。」


「魔法すげーなあ。あ、もう一つ亀さんに頼み事が…。」


誉められてまんざらでもない亀(仮)にここぞとばかり頼み事を追加する。


「これから、あの大きな姿にならないで欲しい。」


「むぅ、威厳がなくなるではないか」


「でも、もし大きな姿で寝返りを打たれたらうち潰れるよ。また、なにもしてない人間に被害を加えるの?」


「しかしの、我も己の身を守るために仕方ない「出れないし、攻撃されないのに?」うむぅ。」


しばらく亀(仮)は考え込んでいたが、


「わかった。じゃがの我からも頼みがある。」


と即断した。


「いいよ。なに?」


「亀さん、亀さんいうが、小物感が出ておる。新しい名前はないか?」


「名前ねー。あんまり得意じゃないんだよな。うん…でも考えてみる。うーん、確か、亀にも神様いたな。玄亀だとおかしいし。飼ってた人が別名があるってシュエングイだっけか。長いし。そうだ。シュエン。シュエンでどーよ。亀さん。」


「シュエンか良さそうじゃな。我はシュエン。よろしく頼むぞ。」


と、言うとぽつぽつ服を濡らしたまま、家の方に向かっていくシュエン。


「おい、それって俺の家。」


「メイのやつに、変わった料理を作ると聞いておる。それに沸かした湯に入ると聞く。お前のいうことはきいたのじゃ。我も言うことをもう一つ聞いてもらわねばな。我の世話もよろしく頼むぞ。」


「うぅ。わかった。」


「ハジメ。今日のお昼は肉がいいな。パンもいいけど、プルプル」


「メイさん、昨日も肉だったでしょ。」


「ハジメ、あの池じゃがの。水路が繋がっておって魚がすんでおる。魚もたまには頼むぞ。」


「わ、か、り、ま、し、た、あ。」


畑につながる近くの池を手に入れたハジメだったがなんだか腑に落ちないまま、昼食を作るのであった。


新規住民 シュエン



















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