第6話

家の北の森を自分の土地にしつつ一週間程経ったが相変わらず、水源は見つからない。


「水見つからんね…。森あるのに見つかんない。」


スマホも充電が一目盛りから上がらないので魔法の練習も否応なくさせられている状態ではある。

だが、未だに魔法が使えない。


「なぁ、メイさんや。」


「何ですか?肉ですか?肉ですよね。プルプル。」


「肉から離れんかーい!! 一週間、水も魔法も進歩しないのだけどこれどういうこと?」


「肉じゃないんですね。プルプル。

魔法?そういやそういうものもありますよね。

水?掘ったら水出るんじゃないですか?

昨日雨降ったとき、収納袋開きっぱなしでアホなことしてましたがそのためですか。プルプル」


「え、今なんて。」


「肉欲しいプルプル。」


「そこじゃなくて」


「掘れば水出てくる?収納袋に水詰めてたの忘れてたことですかね?プルプル」


「それ!!井戸だよ!井戸!!あ、入れてた水は忘れてた。少しづつ使うはず。メイ覚えといてね。」


「スライムに記憶を頼るってどうなんすか…プルプル」


と、いうわけで井戸を掘る作業も追加です。


「手当たり次第、掘っても無駄だったような気が…」


「あそこ、掘ればいいじゃないですか。プルプル」


「えっ。出るの?!」


「だって聞かれなかったし。言葉発したと思えば川、川、川。それ以外草ばっかり鑑定してるからですよ。プルプル」


「お前だって肉ばかりじゃないか!!人間は野菜必要なの。おとといショウガに似たショウの木を使った肉料理散々食って保存食失くしかけたのわすれたとは言わさないよ。」


「それは…。とりあえず井戸ですか。井戸を掘ればいいじゃないですか。あそこたぶん水出ますよ。プルプル」


「おお、忘れるとこだった。俺は掘ってるから自分で肉取ってこいよ!!」


鍬を取り出して土を掘り起こすことにしたハジメだが、五歳時体型になってることを忘れていることが多い。

確かに、この一週間で幼児とは思えないほど運動しているので多少腹筋は割れてきてはいるのだが、、。


「どうせ、今日は掘れないでしょうから。お肉が絶滅しない程度に狩ってきますよ。プルプル」


「何を!?吠え面かかしてやる。」


「期待しないで待ってますプルプル」


そういうと、メイは森の中に消えて行った。


「はあ、昔の漫画だとぽんぽん上手く行くはずなんだがなあ。現実は世知辛い。」


とぼやきながら土を掘り起こし、運搬用の袋に入れる。

土を移動させないと同じ場所を掘るので二度手間だ。

穴堀に関してハジメは自信があった。

小さいころに周囲に迷惑をかけまくるくらい落とし穴を堀った前世での経験からである。


五時間もすると4m近く掘ることができた。


「日も高くなってきたし、そろそろ上がるか…」


カツーン。鍬から金属音が響き渡る。


「うわ、岩盤にあたった。まじか…oh」


固い岩盤の場合、穴を開けないといけないため時間がかかる。ましては今幼児。腹筋割れてきてもまだ無理だろう。


「もう、せっかく掘ったのに!!」


やけになって鍬を振り下ろす。

カーン。


「あースッキリした。よし帰ろ。」


事前に設置していた縄ばしごを上ろうとしていた瞬間、



Wohoooo………………!!!!!



音が響き渡るそれと共に、地面が揺れはじめた。


「え、え!?なにこれ!!」


土がボロボロ崩れ落ち、みるみるうちに4m掘っていたはずの穴はなくなり、足場は完全に家のある地上にある。というかハジメは現在、自分の家を見下ろしている。


「え、なに?!この無理ゲー。」


更に目の前の土が盛り上がりようやく正体が見えた。

ハジメもこれを見たことはあるがこの大きさではない。


「巨大な、、か、か、亀ぇ?!」


"小さきものよ、われを起こしたのはおまえか!?"


頭の中にガンガン鳴り響く。


「えっ。なにこの気持ち悪いの!?この亀がいってるわけ?!」


"いかにも、我だ!!"


「すみません、少しボリューム下げてもらえません?!お怒りとは思いますが、吐き気で死にそうで」


"ムム…このくらいで良いか"


さっきより音がクリアに聞こえる。


「ありがとうございます。で、亀さんにはお怒りのとこ悪いですがここから僕出られないので…ここ出て行けないんですよ。…だからって、食べないで下さいね…できるだけ…」


"なぜソナタを食わねばならぬ。そもそも、今何年だ?

だいぶ寝たから世の中のことがわからぬ。

前人間と会ったときは城のようなのが隣にあったはずのだがなくなったのか?"


「いや。亀さん、今来たばっかりでよくわからんのですが、ご覧の通り…森と草原しかありません。 」


"うむ、ちと寝すぎたようだな。前も起きたら目の前に城ができていて小さきものたちがおいかけっこしていたな。いつの間にかいなくなってしまったがかくれんぼでもしてるのかと思ったのじゃが"


「亀さん、それ。逃げてる人間。」


"ムム…こんなにフレンドリーでプリチーなのになぜ逃げる…"


「いきなり、こんなに登場したら誰でも驚いてにげるわ!!地面が揺れ盛り上がるとか無いわあ。絶対ないわあ。自分も出れたら逃げてるし。」


"それで、ワシはいままで小さきものたちに相手にされなかったのか…"


明らかに残念そうにうなだれる亀さん。


「せめて小さくなって似たよな姿になれれば人間も相手してくれると思うぞ。」


"そ、そんなことでよかったのか!それならば可能じゃ。ちと、降りてくれんか。"


「ああ、悪い。乗ったままだったな。おりるよ」


草滑りの要領で、土運び用の袋を使い滑り降りた。


"降りたようじゃな。では姿を変えるぞ"


そういうと、亀さんの体から光が放たれ、、大量の土と、ほこりが舞った。


「げほ、げほっ、こんなになるなら先に言ってよ!」


「すまんな、ワシも小さな物になるのにこんなことにげほっ。げほっ。」


「本当だよっ。っ。マジで変わってるけど…お前それどうにかしろ!」


「え、これではないのか?!」


ハジメが慌てているのは、念話が切れて直接会話していることや、亀が金髪の耳長の睫毛の長い鼻筋の通った中肉中背の美形エルフ(男)になっていることでもない。


「服着ろ服を!!」


その日、ハジメの敷地に住民(裸族)が現れた。


速攻、クエスト報酬のポンチョを着せたのは言うまでもない。


その後メイが帰って来てビックリするかと思ったが


「私の取り分(肉)が減るじゃないですか」の一言

そっちの方が怖かったのは言わないで置こう。


そんなこんなで一日大変だった。

「今日は疲れた。おやすみなさい。」
















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る