第5話
筋トレクエストをしながらメイの働き方に感心する。
100坪に増えた土地の広さのお陰でランニングもできるようになったので、ランニングしながらスライムによる建築は着々と進む。
スライムの分解スキルによって木材は皮を剥がれ、酸弾によってくり貫かれる。大工要らずである。
たまに呼ばれるのは木を接ぐ時のみ。それ以外はメイにおまかせなのだった。
指示待ち族に分類されていた彼にとっては、趣味以外に脳みそを使うことはなかった。
残念な男である。
とは言うものの、慣れた人でも二週間かかる行程をほぼメイ一人でやりきった。
「こんな感じでどうですか?プルプル」
「ありがとうございます。」
家は完成した。ガラス素材はなかったので窓は木製である。
机、椅子、ベッドまでついて計四時間。
一人では出来なかったことである。
田中一はスライムに対して土下座しているのも無理はなかった。
その日から家での生活になったが…
「いつ、クエストから食料がなくなってもいいように畑を作ろう。」
この思い付きのせいで苦労するはめになる。
現状、周りは草原、耕しても水がなければ枯れるのは目に見えていた。
肥料も現状、自分の人糞をメイに分解してもらった分のみ(後で口直しにと自分のパンを半分あげている)
水源がないので川を探すことになった。
もらった植物や種を植えるには時々飲み水以上の水が必要だからだ。
魔法のレベルはまだ0のままである。
水魔法を覚えようにもレベルが1にならないと水滴すらでてこない。
しょうがないのでスマホの充電を兼ねた魔法の練習とトレーニングクエストを進める。
自分の家の北側に森が見えていたのでクエスト終了後に向かって仮想畳を北にむかってひっくり返す。
ひっくり返しはするもののそこにあるものがそのままひっくり返るわけではないので木も草もそのままに土地も手に入るのだ。
途中、うさぎやタヌキを見かけたが、殺生にまだ抵抗があったため、メイに倒してもらった。
「こんなの簡単なのにプルプル。ピュッ」
針のように酸弾を飛ばして首に指していくメイ。
「そんなんまだ、無理!!まだ、幼児!!」
「そうですか…でもこの位しないと…プルプル。
あ、お肉はいる?」
「いります!!てか下さい!!」
そういうと、メイはタヌキもどきや、ウサギもどきを自分の中に取り込んでいく。
皮と骨が剥がれ身と骨と皮がメイの中に浮いている。
「土つかないようにすぐ受け取ってね。プルプル。
ピュッ」
メイから出てきた肉や骨、皮を収納袋に入れる。
「肉と骨出てきたから塩で味付けしてスープでも作るか」
「僕のも作ってねプルプル。」
「わかった。とりあえずハンバーグもどきとスープだなぁ。野菜はないから…森の草に野菜の味の草ないかな…」
周囲を見渡すがそれらしきものは見当たらない。
「あ、忘れてた。鑑定アプリ起動!!お、これいいじゃん」
名称 ネビル
毒はない。味はのびるのような味がする。
「味気ない料理になるかも知れないけど久しぶりの肉だあ。」
久しぶりの単体の肉に心踊らせ、家に帰ることにした。
家に帰ると、早速脂身と肉を切り分け
肉をみじん切りにしてパンを叩いてみじんにした肉とコネ合わせる。
昔キャンプで培った火起こしで火をつけるとフライパンとなべに火にかける。
ナベには水とほねとネビルを入れてある。
「まず、脂身を焼いてから」
フライパンに脂身を染み渡らせる。
「臭みとりのためにネビルを炒めて、臭いが付きはじめたらネビルを取り出します。」
「次にこの油を使ってハンバーグもどきを焼いてと…あ、灰汁が浮いてきた」
鍋の方に灰汁が浮いてきたので慌てて灰汁をすくう。
すくっているうちにいい加減にハンバーグもどきに焦げ目がついてきた。
「ひっくり返して少しお水入れて蓋をします。今のうちに鍋を濾しましょう。」
こし布を当てつつボールに出汁を入れる。
「もう焼けてると思うから。ハンバーグもどきをとりだそう。先に炒めたネビルを入れて一品完成!!」
鍋から骨を取り出して、出汁を注ぎ込む。ぶつ切りにした肉を入れて塩で味を整える
「塩だけじゃ物足りないけど汁物も完成!!」
「できた?!プルプル」
森の木を切り取り小道を作ってきたメイが帰ってきた。
「お疲れ。」
「暖かいごはん。初めてプルプル」
表情が読めないスライムだが、長く付き合うと喜んでいるのがわかる。
「いただきます。」
「いただきます、プルプル」
メイの触手が、ハンバーグもどきをとらえて取り込まれていく。
「焼いた肉って美味しいね。プルプル」
「うん?!ほんと?じゃあ、え、臭みがない。」
ウサギやタヌキなどは臭みがあるはずだがメイが処理した時に血抜きがされ臭みがなくなっていた。
「臭いほうがよかった?!プルプル」
「いや、よかった。普通臭みがあるから…」
「暖かいごはんもっと作ってね。プルプル」
「わかった。」
味噌が欲しかったなどとは思うものの、肉が食えたので満足した田中一なのでした。
ハジメが次の日干し肉を作ったのはいうまでもない。
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