ACT.22 泥を啜り、血の河を渡る(Ⅲ)


「がぁぁぁあああああ!!」


 剣を引き抜く動作を利用して、そのまま防いだ剣先を外へずらす。

 そしてそのまま半身に構えて盾で強く押すように、アスランの盾を叩く。


『!!』


 衝撃で半歩下がったアスランにすかさず盾で追撃を放つ。

 ガインッと金属が激しくぶつかり合う音が部屋に響く。

 更に、俺は盾でどんどん追撃を放ち、押して押して押す。

 そう読心が効かなければ、使わなければいい。

 俺には、アスランより秀でた部分があるじゃないか。

 技術も経験も足りない、そんな俺にも今の彼を唯一超えているところが。

 ――それは、若さ。

 純粋に若い、バイタリティにあふれた肉体だからこそ存在する筋力。

 それだけは、老騎士たる彼に無くて、俺にあるモノーー上回れるところ。

 だからこそ、それを活かしきって押し切る。


「どりゃぁぁぁぁぁあああああ!!」


 騎士にあるまじき怒声を上げながら、ひたすら盾同士をぶつけ合う。

大声を上げ、自分自身を奮い立たせ、力任せの猛攻を仕掛ける。


『ぐ、ぅ!?』


 徐々にアスランは押され、後退していく。

 だが、まだだ。

 まだ、致命的な隙は見せてない。

 ここで強引に畳みかけては、反撃を喰らう可能性がある。

 この猛攻の果て、狙うはそう――。

 

『――しまっ!』


その瞬間、アスランは思わず足運びを誤った。

 理由は単純。

 地面に転がった青年の亡骸。

 そこから流れた血糊に、足を取られたのだ。

 一瞬、ほんの一瞬だけ僅かに態勢を崩したアスラン。

 それは、俺が待ち望んだ致命的な隙だった。

 瞬間、半歩下がり軽く助走をつけて、アスランの盾に強烈な体当たりを仕掛ける。

 がんっという大きな音を立てて、アスランの姿勢が更に崩れる。

 その隙を狙って、剣先をアスランの盾の縁に引っ掛けるように差し込み、勢いよく外側に弾く。

 強引に盾による防御姿勢を崩されたアスランは咄嗟に残る右手の剣を用いて、次なる剣戟に備える。

 そして俺は、剣で盾を弾いた軌道をそのまま活かし、その場で軸足に力を入れて回転する。

 横なぎの力に、遠心力、円運動エネルギーの全てを注ぎ込んだ、渾身の一撃が、炸裂する。


 防御の為に立てた剣ごと、俺の剣が横なぎにアスランのヘルムをかち割る。


『がっ――」


 ガシャン。

 そんな音を立てて、アスランが崩れ落ちた。


「――師匠。師匠!?」


 ここにきてようやく、今自分が何をしたのかを把握してしまった俺は、倒れた師匠のもとに駆け寄った。





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