ACT.15 異端の教団


 粛清騎士ライ・コーンウェルが剣を振るう。

 瞬間、目の前のローブを纏った老人の首が、地に落ちた。

 そして、そのうす暗い洞窟の中で悲鳴が上がる。

 状況を理解したらしい、その影たちは一斉に洞窟の奥へとん逃げ込む。


「お許しを、お許しを!」


「【真実と混沌の神】よ! 我らを――!!」


 そんなことをのたまいながら逃げる彼らを、ライは追いかけながら、追いついた端から剣を振るって殺していく。


 ひたすらに、斬る。斬る。斬る。


 やがてむせ返るような、血の匂いにあふれた洞窟の中で、目についた人を全て殺しつくしたライは、こう吐き捨てる。


「――いくら邪教の輩とはいえ、虐殺とは気分が悪い」


 そう言いつつもライは、自身の職務を、使命を全うする為に、さらなる奥へと進んでいった。



▽▲▽



「――混沌教団、ですか」


「えぇ、今回の転生者は、邪教徒の隠し教団、そこにいると神託が下りたわ」


 すがすがしい風の吹き抜けるその庭園で、何てことなさそうに聖女はそう言った。

 聖教会が邪教認定する教団、それが神話で追放された【真実と混沌の神】を信仰する混沌教団だ。

「今回の神託で、隠されていた邪教のアジトも分かって、一石二鳥だったわ。転生者を粛清するついでに、根絶やしにしてきてくれる?」


 そういって、美味しそうに紅茶を嗜む聖女。

 だが、彼女の言ったセリフは、似つかわしくないほどに血なまぐさい。

 しかし、ライはその程度のことには、口を挟まない。

 ――そう、その程度。

 粛清騎士として三年間も活動を続けてきたライにとっては、邪教徒の殲滅など、造作もないことであった。

 邪教徒であっても、罪のない人を殺すことに躊躇いは無いのか?

 ライにとっては、それは否である。

 混沌教団は、ライにとっては存在自体が“悪”であった。

 それはひとえに、教団が転生者を神の使いとあがめ、祀っているからだ。

 ――そして、10年前の【アルドラの乱】。

 首謀者である転生者アルドラは、教団から支援を受けていた。

 その時点で、ライの中の天秤がどう動いたかは、想像に難くない。


「どの程度の規模か知りませんが、僕一人では全て殺しきれないかも知れません。誰か、もう一人、つけてくれませんか?」


 ライがそう言うのも無理はない。

 それは腕の問題でなく、数の問題。

 表だけでなく、裏からも責めなければ、最低限殲滅などできない。

 

「えぇ、元よりそのつもりよ。なんといっても、今回の転生者は、ひとりじゃないのだから」


「そうなのですか?」


「ええ」


 聖女は頷きながら、静かにその数を告げる。


「七人よ」


「――!?」


 その数を聞いて、ライは絶句する。

 いまだかつて、一度にソレだけの数の転生者を粛清した記憶はライには無い。

 否、それどころか、聖教会の記録にだって無いことだ。

 それを、聖女はこともなげに、何てことなさそうに答える。


「だからこそ、今回の相棒は、貴方と一番相性が良さそうな人を選んだわ」


「それは、どういう?」


 ライがその言葉に追及しようと声を上げたその時だった。


「――失礼する」


 二人だけが存在した、その花園に三人目の声がした。

 ガシャリという甲冑特有の金属音を響かせて、そこに現れたのは意外な人物だった。


「粛清騎士序列第4位、アスラン・アルデバラン。招集に従い参上いたしました――」


「――師匠」


 そこに現れたのは、ライの師匠アスランであった。

 ここにきて、師弟の再開は、実に三年ぶりの事であった。






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