98話.クロムの想い
クロムが言い放った言葉の意味を理解できないままのバロンは、互いに
そんな主の様子を心配に思った守護騎士の一人がバロンに声をかけるのであった。
「バロン様……
勝負は時の運とも言いますので……」
バロンはこの時初めて自分が険しい表情をしていることに気が付いた。
そして守護騎士たちはその理由をクロムに敗れたからであると判断しているようであった。
「そのような気遣いは不要ですよ。
歴然とした力量差の結果の敗北ですからね」
プライドの高いバロンがあっさりと自分より力量が上であることを認めたことに守護騎士たちは驚愕を隠せずにいた。
そして主であるバロンが今何を感じて何を思っているのかを全く理解できてないということが不安を募らせるのだった。
「そんなことより……、クロム殿」
バロンは少し離れた場所で談笑を続けているクロムたちのほうに歩みよりながら話しかけた。
「勝負は私の負けです、お約束通りここは引かせてもらいますね」
「そのことなんだけどさ……」
バロンが約束通りに撤退の意思をクロムに伝えると、クロムはなぜか煮え切らない口調で話を始めるのだった。
「約束を守ってくれるのは嬉しいんだけどさ……
バロンさん、このまま帰ったらマズいんじゃないのかな?」
「……」
「悪魔王サタンから先遣隊としてこの街を制圧し拠点化しろと言われていたはず。
それなのにバロンさんが撤退するということは、悪魔王サタンからの命令を
「そうですね、完全な命令違反ですね。
運が悪ければ極刑もあるかもしれませんね」
「……
バロンさん一つお願いがある、俺の元に下ってくれないかな?
俺はこれから悪魔王サタンとの謁見を目指す。
色々と調整や交渉は必要になるけど、この街を俺の拠点として悪魔王を迎える形でね。
その時、俺の配下として一緒に迎えをしてほしい」
「意図がわからないのですが……」
「単純なことさ、悪魔たちとできれば争いたくない。
争ったら尋常じゃない被害がでることは確実だろうしね。
それに…… 神たちの思惑通りになりすぎるのは気に食わないというのものあるけどね」
「私がクロム殿の軍門に下るかどうかは一旦置いておきますが……
サタン様に謁見するには相応の資格が必要になります、そしてクロム殿はそれが足りていません」
「バロン男爵に勝った、これでは足りないのか?」
「私より強い悪魔は多数おります、残念ながら私程度への勝利では王への謁見資格にはなりえません」
「その時はサタン王がでてくるまで目の前に現れた悪魔たちを倒し続けるさ」
「あははは……
豪胆というべきか、無謀というべきか……」
「会ってみたいと思ってもらわなきゃ始まらないような内容の話がしたいわけだし、そのための無茶はするさ」
「一体どんな話を……」
「転生者ならではの話になるんだが、詳細はまだ内緒にさせてほしいな。
それより……
バロンさん、俺の仲間になってくれないか?」
「……
仕方ありませんね、クロム殿の軍門に下らせてもらいますよ」
そして、握手をするために右手を差し出したバロン。
クロムがそれを受け取ろうと差し出した右手は
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