閑話.クロムとアキナ


クロムとアキナが濃密な時間を過ごした夜も明け、朝日が降り注ぎ始めた頃。

クロムは部屋の外が騒がしいことに気が付き目を覚ました。


すぐに外の状況を確認をしたい気持ちに駆られたクロムであったが、左腕の中で気持ちよさそうに眠るアキナを起こしてしまうことは躊躇われたためらわれたのである。

クロムは改めてアキナの幸せそうな寝顔を眺める。

見ていると吸い込まれてしまいそうなそんな可愛い寝顔に思わず見惚れていると……


「私の顔に何かついてるかしら? 王子様♪」


「思わず奪いたくなるほどの魅力的な唇が付いているよ、お姫様」


クロムはそういうとアキナにそっと口づけをするのであった。


「!!!!!」


アキナはいつも揶揄われているからかわれていることへの仕返しのつもりで言った言葉だったのだが、逆にクロムに翻弄されてしまうのだった。

こうなるとアキナは赤面させた顔を隠すために、より一層クロムの腕の中に潜るしかなくなるのであった。


いつもであればクロムがそんなアキナを抱きしめて、アキナが夢心地に包まれる。

そうなる状況ではあるのだが、今日のクロムは一味違っていた。


クロムは、自分の左腕の中に完全に埋まってしまっているアキナの顎を右手でそっと持ち上げてアキナの目を見つめる。

クロムの目にはアキナが、アキナの目にはクロムが。

二人の間に静寂が流れる中、それぞれの目の中には相手の姿しか映っていない。


「アキナ、これからもずっと一緒にいてくれ」


「当たり前じゃない、私はクロムのことを愛してるわ」


「俺もだよ」


そして次第に近づく二人の顔は、やがてゼロ距離となる。


先ほどの不意打ちの口づけとは異なり、互いに想いを高めあい、めいっぱいの想いを込めた口づけである。

互いの高ぶる感情を乗せあった口づけは徐々に激しさを増してゆき、互いに相手を抱きしめる手にも力がこもり始める。


そして二人が溶け合い、交じり合い、重なり合い、一つになり……

二人の間には昨晩以上に濃厚な時間が流れてゆく。



その後、二人は幸せそうな寝顔で二度寝についたのであった。


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