なんでもアリな異世界は、なんだか楽しそうです！！

６９話．ルイン帰還

「……なぜじゃ。

　……お前たちを排除し、追い出したワシたちになぜ……」

　ダンはクロムに対して負い目を感じていた。

自分が排除されるリスクを顧みず（かえりみず）、問題を解決できうる案を提案したクロムを自分たちは保身のために排除したのであるから。

　そんな自分たちの前に数日ぶりに姿を見せたクロムは、そのことに対して憤る（いきどおる）わけでもなく、ただ淡々と問題を解決してきた、そして手柄はそのまま譲ると告げたのであるから当然の疑問であった。

「別にダンたちのためにやったことじゃないさ。

　個人的な目的や用事のためにやったことであって、王都解放はおまけだよ」

　クロムの大胆な発言に呆気にとられるダンとサラカ。

クロムたちはそんな二人に一言だけ残して去っていくのであった。

「このあと、ルインに少し寄るけど邪魔はするなよ」

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ダンたちへの報告を終えたクロムたちは、＜ゲート＞を使って一気にルイン近郊までやってきていた。

「兄貴……　

　さすがにこの魔術は反則じゃねーか？？」

「それには俺も同感ではあるけどな、でもまぁ使えるもんは使わなきゃ損だろ？

　それに移動に時間を浪費できるほど今の俺は余裕がある状況でもないしな……」

　カイリとの戦闘はクロムだけではなく、仲間たちにも自分たちの未熟さや特訓の必要性を痛感させていたのである。

「あのお嬢さんの強さは異常であったな……

　ワシは自分がそれなりに強いと思っておったのじゃが……　

　あの娘には高くなっていた鼻を見事にへし折られたわい」

　カイリとその死霊術に翻弄されてしまったことを思い出し、皆が落ち込みかけたときクロムが話を始めた。

「いっぱい反省していっぱい修行すればいいだけさ、全員生きているんだからな。

　いっぱい強くなるためにいっぱい美味いもん食おうぜ？　な、アキナ♪」

　悪戯な笑顔（いたずらなえがお）でアキナに声をかけるクロム。

アキナは先日の自分の言葉も思い出して、赤面するのであった。

「ぶぅぶぅ……

　クロムはそうやってすぐいじめるんだから……」

　赤面しながら拗ねるアキナを見てみんなの表情が一気に明るくなる。

そのことでさらに拗ねるアキナであったが、クロムに頭を撫でられると徐々に機嫌を直してゆくのであった。

「とりあえず美味いもん食いにいこうぜ」

　クロムたちがルーナの店に向かうためにルインの中へと入ろうとすると、門衛に呼び止められることになった。

ゴランとトーマが鬼族であるからだ。

「クロムさん……

　いくら街の英雄であるあなたのお仲間と言っても鬼族を街の中にいれるわけにはいきません……

　そんなことをしたら住人は大混乱になってしまいます」

　門衛のそんな言葉を聞いたクロムが殺気を放ちかけた時、クロムの肩にゴランが手を乗せた。

「クロム、こんな程度のことで揉めることはないぞ。

　ワシとトーマがルームで待って居ればよいだけのことじゃ」

　笑ってそういうゴランを見てクロムは、苦笑いを浮かべるしかできなかった。

「すまない、そうしてくれ……

　みんなで美味いもの食いたかったんだけどな……」

「あははは、ルーナとやらを勧誘してくるのであろう？

　ならば今日じゃなくてもその機会などいくらでもあるじゃろう」

　ゴランのそんな言葉に救われた気持ちになったクロムは、ゴランたちにルームで待機してもらい、その他のメンバーでルインの中に入っていくのであった。