70話.新たな仲間

「街に入るのに手間取っちゃったけど、入ったら今まで通りだね」


「門衛もまだ街の英雄って言ってたから話が伝わっていない、ということなんだろうな」


 サラカたちに真実を告げて排除された影響がルインの街の中にも表れているであろうと考えていたアキナは、以前と変わらぬ様子であることに驚くのであった。


「そもそもあいつらはまだ遠方にいるし、解放作戦は策すら定まらない状況だったからな。

 街の英雄となった者を排除する情報を流せるほどの環境が整っていないというのもあっただろうしね」


 クロムはそんな予想をアキナに説明しながら、ルーナのお店まで歩いていく。

冒険者ギルドやいつも泊まっていた宿屋の近くを通過する際に、一言挨拶したいという思いに駆られたが、今の状況ではやめておいたほうがいいというカルロの言葉を受け入れて断念するのであった。


 そして、ルーナのお店に到着したクロムたちは、勧誘の話はとりあえずあとにすることにして、食事をとることにした。


「あら、アキナとクロムさんじゃない!!

 後ろの方たちは…… お仲間さん???」


「ルーナ! ひさしぶり!!」


 ルーナに声を掛けられたアキナはルーナの元に駆け寄り、ルーナに抱きつきながら返事をした。

そんな様子を微笑ましく見ていたクロムがカルロたちを紹介し、食事がしたいことを伝えた。

 席に案内されたクロム一行はルーナがおススメする料理を一通り頼み、運ばれてきた料理を堪能することとなった。


「この店の料理はやっぱり美味いな♪」


「うんうん! いつ来ても美味しいよね!!」


 美味しい料理にテンションが上がる一方のクロムたちは、ここまで来た本来の目的を危うく忘れかけていたが、料理がほぼ食べ尽くされた頃に挨拶のために顔を出したルーナをアキナが呼び止めた。


「ん? アキナどしたの??」


「ちょっとルーナに話というか…… お願いというか…… があるんだけど……

 今、時間大丈夫かな?」


「大丈夫だけど、そんなに言いにくそうにどうしたの??」


 ルーナを呼び止めたもののどうやって説明をしようかを悩んでいるアキナを見かねたクロムが助太刀?? をすることにした。


「この中で話したほうが色々早いと思うぞ?」


 そう言ったクロムは二人の目の前にルームの入り口を生成し、二人を中に押し込んだ。


「兄貴…… それは無茶苦茶じゃないのか?」


「アキナとルーナの関係ならたぶん大丈夫だと思うぞ」


 クロムの無茶な行動に呆れて苦笑を浮かべている仲間たちを尻目にクロムは笑いながらそう言うのであった。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 



「「うわぁぁぁ!!!」」


 クロムにルーム内に押し込まれた二人は急な出来事に困惑していた。

しかし、今いる場所がルーム内に作り上げた竜人族の里のはずれであることに気がついたアキナはクロムによってルーム内に飛ばされたことを自覚するのであった。


「もぉ…… クロムはいつも無茶するんだから……」


「えっと…… アキナ??

 ここは何処でどうなってるのかの説明をしてもらえる……??」


 クロムの暴挙に一方的に巻き込まれたルーナは、何もかもがわからないといった様子で混乱し、アキナに説明を求めた。

アキナは自分がクロムと従属関係になっていることからダンたちに受け入れられなかったことまでのすべてを告白し、その上で自分たちの仲間となって一緒に来てほしいということを伝えたのである。


「……とても信じれないことだらけの話だけど……

 アキナが私に嘘をつくとは思えないし……

 全部が真実…… 

 ということなんだろうね」


「うん」


「真実であるとして…… なんで私を仲間に誘うの?

 知ってるでしょ? 私まったく戦えないよ?」


「えっと……

 (お、美味しいものを食べたいから……)」


「え? 聞こえないよ??」


「る、ルーナの作る美味しい料理を食べたいの!!!

 だからクロムに無理を言ってルインに寄ってもらったの!!!!」


 恥ずかしさの余り顔を真っ赤にして半泣き状態のアキナは、ルーナに叫ぶように目的を伝えたのであった。


「あははははは、もぉアキナは可愛いなぁ。

 そんなに可愛くお願いされたら断れないわよ。

 わかったわよ、仲間にはなるけど、その前におかみさんには挨拶させてね?」


 アキナは赤面したまま頷くのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る