68話.意外な一面

 アキナのその一言でその場にいるものたちは笑顔になった。

その状況がヤケに恥ずかしかったアキナは思わず叫びだした。


「もぉぉぉぉ!!!

 みんな笑いすぎ!!!」


「あはははは、だって……

 まさかアキナがそんなこと言いだすとは思わなくてさ」


 アキナの叫びにクロムが反応したが、笑いの余韻により息が上がっていた。


「でも、アキナのその意見は一理あるな。

 上手くいくかどうかはわかんないけど、ルインに行こうぜ!!」


 一気に場の空気を和ませ、クロムにルイン行きを決断させたその言葉は……


「美味しいものを食べたいの!

 だから、ルーナを仲間に勧誘しにいきたい!」


で、あった。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 



 恥ずかしさの余り赤面しているアキナを余所にクロムは、今からダンに報告へ行くために出発することを決めていた。


「アキナ~、置いていくぞ??」


「待ってよぉぉぉ……」


 アキナは置いて行かれそうになり慌ててクロムを追いかけながら尋ねた。


「ダンさんに報告ってことは……

 またあの村に行くんだよね??」


「あぁ、たぶんまだあそこにいるだろうからな

 流石にあまり目撃されるわけには行かないから今日の夜にダンのテントに忍び込む…… かな」


「そうなると、かなり急がないとだね」


「まぁ移動そのものは<ゲート>があるから一瞬で済むんだけどね」


 クロムは特に急いで移動する必要はないが、ダンが一人になるところを見計らうために向こうで待機する必要があることをアキナに伝えた。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 



「ふぅ…… 予想通りとは言え今日もまったく進展がないとはのぉ……」


「唯一の打開案を提案してくださったクロムさんを排除した結果、何も話が進まないんじゃ笑い話にもなりませんよ」


「サラカよ……

 ワシも含めて皆それぞれ面子メンツってもんがあるのじゃから、あの場では仕方がなかったことじゃよ、あいつには申し訳ないと思っているがな。

 あれだけ酷い対応をしたワシらは、あいつに襲撃されないだけ有難いと思うべきじゃろうな」


 クロムが抜けたあとの王都奪還のための会議は難航に難航を重ねており、サラカとダンは今日も進展なく終わった会議についての愚痴をダンのテントにてこぼし合うのであった。


「襲撃なんてする気もなければ、そこまで暇でもないよ」


 2人はテントに人の気配が入ってきたと感じると同時に聞き覚えのある声を耳にすることになった。


「ま、まさか……

 その声はクロム…… なのか??」


「そうだけど、騒がないでくれよ?

 伝えておきたいことがあって寄らせてもらっただけだからな」


 ダンたちの前に姿を見せるクロムとアキナ。

ダンたちが突如姿を見せた二人の意図を測りきれずに戸惑っていると、アキナが話し始めるのであった。


「警戒しないでください。

 さっきクロムが言った通り報告だけしたらすぐにでも出ていきますから」


 アキナは柔らかい口調で二人を諭すようにそう言った。

その言葉で少し冷静さを取り戻すことができたサラカがクロムたちの真意を確かめることになった。


「報告…… とはなんでしょうか??」


 サラカの問いに対してクロムは淡々と事実のみを答える。


「いい報告なのか悪い報告なのか、判断は任せるが……

 カロライン王国の王都および王城に巣食うもの達の排除が完了した。

 どこの誰が首謀者でどう対処したとかについては教える気は無い」


「「はぁ!!!????」」


「声が大きいぞ」


 クロムは、興奮と混乱で声が大きくなるダンたちを注意しつつ、王都を占拠していた者の排除が完了済であることを伝えた。


「俺たちはこのことを他言はしないから、お前たちの手柄として処理してくれ。

 それを伝えにきただけだからもう行くよ」


 伝えるべきことを伝え終えたクロムたちがその場から立ち去ろうとした時、ダンより声がかかることになった。

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