30話.対オーク戦
『一応忠告だけしとくわ。
たぶんないとは思うけど、大きな集落を作ってしまっていた場合…… オークロードくらいはいるかもしれない……
僕たちがあそこを通過してから数日程度だからオークキングまでは発生していないでしょうけど、オークロードくらいならあり得なくはないわ』
「オークロード!?
さすがにそれはマズイんじゃ……」
「ん~、たぶん大丈夫じゃね? 精々ブラッディーベアと似たような強さ程度だろ?」
『そうね、あんたが油断したところに異常な物量でこられたらマズイかもね? ぐらいよ』
「なら、油断なく速攻で殲滅させるようにするから大丈夫だよ。
それにナビがそう言いだすってことは、ロードは確実にいると思うべきだな」
『……それは褒められてるとは思いにくいわね』
「たぶん褒めてはいるよ、きっとな」
『……』
「ま、そろそろ真面目にいくぞ」
そういうとクロムは真剣な表情となり、目的地の目前まで来ると足を止めて作戦を説明し始めた。
「遠慮なく、油断なく、殲滅させる……
そのために、俺はここから先を完全な氷の世界に変える。
それだけで大半のオークは倒せると思うが、生命力の強い個体やロードなどが生き残っている可能性はあるだろうから、突撃して順次殲滅してゆく。
アキナはここで後方からくる魔物を排除しつつ、逃げ出してくるオークを殲滅させること」
『大胆不敵で大雑把な作戦なことで……』
「俺もそう思うが、最適な作戦でもあると思うけどな?」
『まぁ今の戦力ではベターな作戦ではあるわね』
「クロムが危険すぎるとは思うけど…… きっとクロムなら大丈夫なんだろうね……
わかったよ、それでいきましょう」
みんなの同意がとれたのでクロムは早速作戦を実行した。
クロムは両手を前に突き出し大量の魔力を練り込む。
そして、その魔力を前方の空気と混ぜ合わせるイメージをしながら次々と空気そのものを氷へと変換させていった。
この時クロムがイメージしたものはマイナス40度とかの冷凍室。
あの冷凍室をここより先の空間全体で再現し、中にいるであろうオークたちを冷凍マグロなどのように完全に氷つかせるイメージを強く思い描いて魔力を練り込み続けた。
そして……
数分後には目の前の空間は恐ろしいほどの冷気を噴出させる空間に変わっていた。
「ふぅ、初めてやる魔術はどうしても時間かかるな……
さて、殲滅させにいってくるよ!!!」
そう言うとクロムは極寒の空間に飛び込んでいった。
クロムが飛び込むとそこは見渡す限りの氷の世界であった。
氷の世界に氷の彫像となって佇む膨大な数の元オークたち……
時間が完全に停止したと錯覚してしまうような光景の中わずかであったが
クロムは即座にその場に急ぐと、半身を凍らせた巨大なオークを発見した。
「こいつがオークロードか……」
そう確信したクロムはエアカッターでオークロードの首を刎ねた。
首を失ったオークロードは動きを徐々に鈍らせて、やがて停止した。
「なんていう生命力だよ……」
オークロードの生命力の強さに驚愕しつつも、残りの生き残りの探索を再開した……
発見しては首を刎ねる……
これを繰り返すこと10回。
「ふぅ…… これで全部かな……
ナビ、生存している奴がいないか確認してくれ」
『相変わらず人使い荒いわね…… まぁいいけど』
ナビは文句を言いつつも周囲の生存反応を探査した。
『総勢どれほどいたのかよくわからないけど…… 無事殲滅完了してるわよ』
「そっか、確認ありがとな」
クロムは殲滅を終えた確認をすると、アキナが待っている場所へと急行した。
後続の相手を任せているアキナが心配であったからである。
(大丈夫だとは思ってはいるけど、心配にはどうしても……)
そしてアキナは急に現れたクロムに驚くことになる。
「大丈夫か!!」
「ク、クロム!??
大丈夫も何も…… まだクロムが突入してから10分程度しかたってないし、魔物は1匹も現れてないよ?
それよりそっちは大丈夫だったの??」
「よかった……
こっちは殲滅完了、ナビのお墨付きだよ」
「え?? もう???」
『こいつはこういう奴よ、あんたも慣れるしかないわよ』
「あはは……」
クロムはナビからいつも通りの扱いを受けつつも殲滅完了の報告をアキナにするのだった。
そして、アキナが無事であったことを心より喜び安堵した。
「さて、帰り道で銀鉱脈探して、そのまま報告にいこうぜ!」
「こっちのことでいっぱいになって、銀鉱石の採掘を忘れてたわよ……」
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