31話.変化
ギルドへの帰還途中に銀鉱脈を無事に発見したクロムたちは、銀鉱石を採掘しギルドへ報告に戻ってきていた。
「クロムさん、アキナ、おかえりなさい!
その様子だと無事達成した…… ということでしょうか?」
クロムはストレージより銀鉱石を出しつつ、オークの調査の依頼について話し始めた。
調査した結果、オークが集団で狩りをしているところを発見したため洞くつが巣穴と化してると判断して、巣穴にいるオークたちを殲滅させたと伝えた。
「え……
調査ではなく、殲滅…… ですか?」
「あぁ、あの洞くつについてはちょっと詳しくてね、俺が殲滅すべきだと判断したんだよ」
「え…… ちょっと冒険者証をお借りしてもいいですか?」
不思議に思いつつも冒険者証を手渡すクロム。
クロムから受け取った冒険者証を受付の奥にある機械に通したスズは、びっくりした表情を浮かべながら奥へと走っていった。
クロムたちが何が起こっているのかわからずに戸惑っていると、スズはダンを連れて戻ってきた。
「クロムとアキナ、ちょっとワシの部屋までこい」
ダンはそれだけを言うと、再び奥へと戻っていった。
意味が分からずにいる二人であったが、スズの案内でダンの部屋へと通されることになった。
「ここまでこいって、どういうことです?」
「まぁとりあえず座ってくれ」
クロムたちが席にすわるとダンはおもむろに話を始めた。
冒険者証には魔物の討伐履歴が自動的に保存される仕組みになっているらしくクロムの今日の討伐履歴を見た結果、オーク87匹・オークロード11匹と表示されたそうだった。
それによりクロムの報告が真実味を帯びたこととFランク冒険者が達成できるはずもない偉業であることから、ダン自ら詳細を聞きたいということであった。
そしてクロムが詳細を説明すると、ダンの顔つきがドンドンと険しくなっていったのであった。
「とても納得できる内容ではないんじゃが……
討伐履歴がおぬしの言葉を証明しておるしな……
それに生き残りがいる可能性もあるわけじゃから、今回の結果は公表して洞くつとその周辺への警戒をせねばならん。
そこで問題となるのが…… おぬしのランクじゃ……」
「そうなのか?」
「ギルドでは、オークはCランクの中位、オークロードはBランクの下位の魔物と位置付けておる。
それらを殲滅したのがFランク冒険者では、笑い話にもならんわい。
そこでだ……
ギルドマスター権限でクロムをAランク、アキナをBランク、チーム<蒼天の猫>をAランクとする」
「え!!?
私もですか!!!??」
「こうでもするしかない状況じゃ、ランクに見合う強さを持っていることは先日の試験でも今回の結果でも十分わかるしの……」
「ダンさんの言いたいことはわかりますけど……
急なランクアップは無駄なやっかみを生みますし、それにAランクってなんか義務的なものも発生しそうなんですが?」
「やっかみに関しては多少は我慢せい、それだけのことを勝手に達成したおぬしが悪いわい。
義務に関してはギルドからの特別指令を受ける義務が発生するが、できるだけおぬしたちにワシが出さなければよいだけじゃ。
まぁ今のルインの冒険者にはSランクがおらぬからの、おぬしを含む8人のAランクがルインでは最上位の冒険者になるのぉ」
ダンの提案にクロムたちは抗議したが、決定じゃ! の一点張りでまったく譲ることはなかった。
根負けする形でダンの提案を受け入れたクロムたちはルーナのお店で買い出しをしてから宿で休息をとることにした。
宿に入ったクロムたちはルーム内に移動し、そこでゆっくりすることにしたのであった。
買いだした食事をつまみつつ、クロムは洞くつ内で約束した通りアキナに自分のステータスを見せることにした。
クロムのステータスはアキナの想像の遥か上をいくものであったが、アキナは苦笑しつつも色々と納得するのであった。
(やっぱりクロムってすごい……)
「と、とりあえず俺のステータスはこんな感じだよ、俺も久しぶりにちゃんと見て若干引いてるけど……
まさか魔眼が成長して<鑑定眼>なんてもん覚えてたとは……」
「あははは、強くて悪いことはないし頼りになる相棒で嬉しいよ」
『そうやって、こいつの異常さに慣れていくわけね……』
いつも通りのクロムの異常さををオチとする会話を3人で楽しみながら、せめて今だけはとゆっくりと流れる時間を楽しむであった。
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