29話.オーク追跡

 キョトンとした顔をしているアキナも可愛いなと思いつつ、クロムは詳しく説明をすることにした。


「従属関係のメリットの1つとして説明したよな? ステータスの移譲も自由にできるんだよ」


「それは覚えてるけど…… 私にそんなに渡したら…… クロムがマズイんじゃないの?」


「あぁそういう意味か。

 全く問題ないよ、俺のステータスの1割くらいしか渡してないからね」


「え!!???

 クロムのステータスって、どうなってるの……??」


「強奪眼のおかげで苦笑するしかないようなステータスになってる…… かな。

 詳しくは宿に戻ったら見せてあげるよ。

 とりあえず今はあのオークを追跡しないとだな」


 クロムは洞くつ内に漂う自分の魔力残滓の所在を探った。

すると、この場所からゆっくりと離れていく魔力残滓を発見した。


「あったあった、そんなに遠くはなさそうだけど……

 ナビ、洞くつの地形情報と比較して奴らの巣の場所は特定できそうか?」


『全く…… 人使い粗いんだから……

 あんたが発見した残滓がもう少し先に進んだところに行き止まりになってる広めの空間があるわ、あんたがこの間ブラッディーベアとやった場所よ』


「ブラッディーベア!!?? 

 ランクBの中でも上位の魔物じゃない!???

 この洞くつってそんな高ランクの魔物までいたの!??」


「この洞くつの一番奥地に1匹だけいたね、たぶんこの洞くつの主だったんじゃないかな

 それをぶっ殺しちまったから配下のオークどもが調子に乗り出したってとこかもな……」


「ぶっ殺したって……

 でもクロムなら当然なの…… かな……」


「あそこの天井の穴は塞いでおいたから地上へは出れないだろうけど…… 

 この事態はやっぱり俺が原因か……

 ちゃんとケツ拭きぐらいはしないとだな……」


 クロムはアキナに周囲に最大限の注意をするように告げると、ナビに現地までの案内を任せて向かうことにした。

しかしさすがは奥地…… 魔物の出現量もそれなりであった。


「また大蛇か…… アキナも毒の完全耐性持たせてあるわけだし、強くなった力を確認してみるか?」


「え? 私??」


「急にあがった力にある程度馴染んでおかないと、緊急時にうまく戦えないかもしれないしな」


「…… わかったわ、少しは私も仕事しないとだしね……」


 アキナは恐る恐るではあったが大蛇の前に対峙した。

大蛇は咆哮を上げてアキナを威嚇し始めたが、それを無視したアキナは思い切って大蛇の元に飛び込んでいった。

すると、大蛇は突進してくるアキナを吹き飛ばそうと尻尾をムチのようにしならせて横向きに薙いだ。

アキナはそれをジャンプで躱しつつ腰より双剣を抜剣させ、すれ違う瞬間に大蛇の尻尾を斬り刻んだ。

それにより切断こそできなかったが深手の切り傷を付けることに成功したのだが……


 それが大蛇の逆鱗に触れたようであった。

激怒した大蛇は着地したアキナに向けて大きな口をあけて突撃してきた。

大蛇がその鋭い2本の牙でアキナに食いつこうとした瞬間、アキナは双剣を交差させて受け止めつつ後方に流した。

流された大蛇はアキナの後方に突っ込んでいくしかなく、アキナはすれ違いざまの大蛇の胴体を徹底的に斬り刻むのであった。

大蛇がそのまま壁にぶつかった時にはすでに瀕死となっており、大蛇の頭の上に飛び乗ったアキナが双剣を脳天に差し込むことで大蛇は絶命した。


「ふぅ…… 疲れたし怖かったけど……

 私じゃないみたいに強くなってる……」


「お疲れ様、無事に上がったステータスを使いこなさせてみたいだね」


「うん、ちょっと自分じゃないみたいだけどなんとか振り回されないようにはできたわね」


「あれだけできれば、熊以外なら問題ないね。

 まぁもう熊はいないはずだけど……」


「居たとしてもブラッディーベアの相手はしたくないからお任せするわよ……」


「わかったよ、じゃあガンガン進もうか」


 アキナが問題なく戦えることを確認した二人は、そのまま洞くつの奥地に……

オークが巣食っているであろう空間に向かうのであった。

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