🖤

藤堂冷に秘密を握られてから、数日。


わたしは吉池とたべりながら、昼食を取っていた。ぱくり、タマゴサンドを齧る。



吉池はいい奴だ。分け隔てなく人と接することの出来るから、友達のいないわたしにもよく話しかけてくれる。好感がもてるクラスメイトの男子だ。





「兄ちゃん達に連れられて居酒屋行ったんだけどよー、やっぱ俺酒強くねえんだよな」


「飲むな飲むなまだ未成年っしょ」


常識に習って返答する。だらしなく頬を緩めて、吉池はでへへと笑った。これは笑顔でスルーというやつだな。






「帰りに道路の真ん中で座禅組んでたみてえでさ、全然覚えてねえんだよ」



「ウケんだけど」



「そのあと家帰ったら仕事中だったはずの母ちゃんが帰っててぶちギレててよ、3

時間ぐらい兄ちゃん達と正座して謝ったんだ」


そらそうなるわ。


わたしらしらけた目を吉池に向けた。



吉池は真面目な方ではないので、そういう素行がよくないような話しは他人からもよく聞く。煙草を吸っているのを校舎裏で発見した時にやっぱりなあって思ったもんねえ。









アホな話しに相槌を打ちながら、わたしはメッセージを受信して震えたスマホを確認する。







「げっ」


「どしたよ」


「お母さんからあ。忘れ物したから届けるかどうかって。ちょっと電話してくんね~」








そう言って、席を外す。


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