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長い、沈黙が降りた。












「は?」


かなり力の混もった威圧的な擬音が口から飛び出る。


はっきりあり得ないこと聞こえたんだけど~。



目の前の綺麗な顔をねめつける。


何を考えている。


注意深く相手を観察する。









「どうする?してくれたら、黙っててやるけど」




藤堂冷はニヤリと悪どい笑みを浮かべた。これが本性なんだろう。似合ってんじゃん。あのニコニコした分厚い上っ面よりかは幾分か。


ストンと腑に落ちた。

イかれた話しの最中だが

、コイツはなぜだか気に入った感じがある。






「その綺麗な顔ズタズタにしてやりたいとこだけどお、まあ、黙っててくれるなら………………いいよ」





わたしは肩を竦めて、頭ふたつぶん上にある藤堂冷を見上げる。

彼の少し驚いたような、それでいて意外そうな表情をじいっと見つめた。



二重のぱっちりしたアーモンド形の目に、黒々とした長い睫毛。つんと高い鼻に、薄い唇。中性的だ。至近距離で見ると、顔の造りがいいことが身に染みてよおくわかる。成る程、これは女子が放っておくわけがない。







「言っておいてなんだけど、軽いな」


「んーファーストキスだよお」






言うが早いがすぐに藤堂冷の唇に自分の唇を重ねた。


すぐに離れるつもりだったが、後頭部に手を回されてかなわなかった。








「んっ」


口をこじ開けられて、舌を入れられる。


おいおいおーい。初めてって言ったのにさあ。


普通ディープキスに持ち込む~?なんなの飢えてたの~?他の女の子にして欲しいよ全く。


突き飛ばせるけど、そうしたら‘趣味’をバラされるかもしれない。


それはキツイ。


わたしはぐっと堪えた。




舌の

ぬるりとした感覚。ああ、熱いのか冷たいのか、なんだかどろどろにふやけて溶けそう。




気がつけば、わたしは藤堂冷に抱き締められながら彼から与えられるキスに夢中だった。


わたしって結構ビッチだったのかも~。


初めて話す相手とこんなイケナイコトしちゃうなんてさあ。


少し失望しながら、行為は暫く続いた。


ちょっと疲れて藤堂冷の胸を叩けば、すっと離れた。糸が引いているのがもうそれは恥ずかしくて見てられなかった。


どくん、と胸が音を立てた。


とろけるみたいに甘い瞳を藤堂冷がしていたから。



どうしよっかあ、本当に逃げられなかったら。


毒が心臓にに回ったみたいにぴりぴりと甘く痺れる。


おかしい、初対面のキスしろなんてイカれたこと言ってきた男に、縛られてみたいだなんて。

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