11.明日夢【五日目 十四時三十六分】
死体を捜しに旅に出る物語の名前がスタンドバイミーなら、《殺人者》を探しに旅に出る物語の名前は、何と言うのだろう。
主人公一派とでもいうべきグループが結成され、表立って行動をし始めた。彼らは仲間を作り、配役を確定させ、《殺人者》探しをしている。
彼らの物語を眺めるような心地で、僕は廊下の窓から別棟を見つめていた。そこを根城に主人公一派は活動している。
「面白い奴が現れたな」
いつの間にか、《魔女》が僕の隣にいた。同じように別棟を眺めている。
全ては上手く進んでいる。本当なら、僕が何かを言う必要は無い。それなのに口は、何かを言いたがっていた。
「この道より、我を活かす道はなし。この道を行く」
「ふん、武者小路か」
呟くように言うと、《魔女》は即座にその言葉に反応した。彼女はニヤリと自覚的に笑みを作ると、その真っ直ぐな双眸で僕を捉えた。
「次に消すのは《幼馴染》だな。目星はついている。分かり易いからな」
僕と彼女は、結託していた。
今があるのも、全て彼女の協力があってこそだ。僕たちはチームを一日目にして既に作り上げていた。暗黒の同意は既になされている。
急ごしらえの主人公チームは、僕たちに追いつけるだろうか。
視線を彼方に向けていると、視界の端で此方に向かってくる二人を見つけた。《風紀委員》と《体育委員》がその場に合流し、《魔女》が楽し気に彼女らを迎えた。
「二人とも。遅かったじゃないか」
「どうする? あの《主人公》くん、色々と動き回ってるみたいだよ」
僕たちが揃っていることを認めてか、《風紀委員》が尋ねて来た。僕は視線を外に固定したまま話に耳を傾ける。
「あはは、ボク達、完全に悪の組織みたいだね」
能天気に構える《体育委員》に《魔女》は問題ない旨を伝えると、号令を下す。
「計画は変わらない。今まで通り”消す”人間をピックアップし、順次遂行していく。《花係》にも伝えておいてくれ。引き続き《書記》を通してリストを送る、とな」
《魔女》は僕に代わって必要なことを全て伝えてくれる。僕はただ心安らかに、全ての痛みを引き受ければ良い。それが僕のあり方だった。
振り返ると、二人の委員は一瞬だけ緊張したような顔になった。
口元を引き絞り、《体育委員》が答える。
「分かったよ。ボス」
そう、僕は一人じゃない。
《殺人者》と《魔女》が織り成すクラスメイトゲームは、ここにある。
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