本編

01.相浦 【一日目 八時二十分】



 その日、三十人の生徒がこの学校へと攫われた。


 気付くと教室の机で伏せっていた。顔を上げると見知らぬ人間ばかりで、誰もが違う制服に身を包んでいた。


 黒髪、茶髪、金髪、短髪、長髪、ポニーテール、ゴスロリ、眼鏡、あるいはその複合。学生の見本市のように多種多様な同年代の人間が集まっている。


 壁掛け時計は壊れているのか、十二時を指し続けていた。外部に連絡を取ろうにも、ポケットから携帯電話が消えている。鞄も見当たらない。


 更に深刻なことがある。俺は直前の記憶を失っていた。誰もがきっとそうなんだろう。何が起きているのか、起きようとしているのか分からずにいた。


「クラスメイトゲームへようこそ。これから皆様には、」


 スピーカーから突然、ゲームマスターを名乗る人物による奇妙なアナウンスが流れた。流れた時間はどれ程だろう。五分だろうか、十分だろうか。


 その説明によると、俺達はゲームに巻き込まれたらしい。


 窓の外では黒々とした山林が広がっていた。空は重い雲に支配され、その翳りが教室をむごく汚く見せる。


 安っぽく白々しい蛍光灯の光は、誰のどんな疑問へも明かりを灯してはくれない。


 教室が一時騒然となっていると、机の上にタロットカードのような形状の、奇妙な札が現れた。五芒星のマークを見せ、伏せられた状態になっている。


 悪魔じみた行為だと思う。この場所へと人を浚って突然ゲームに参加させたこともそうなら、何も無かった机の上にカードが現れることもそうだ。


「そのカードを捲って下さい。それが皆様に課された”配役”です」


 途端にクラスが、深い霧の中に沈むように静かになる。気持ち悪い声だった。男か女か、子供か大人かすらも分からない。

 

 俺は躊躇いを覚えた。札を捲ることはゲームに参加するのと同義だ。先ほどの荒唐無稽な説明を思い出す。


 この学校の生徒となった人間は、配役に沿った行動を義務付けられる。三十人で擬似学級を形成し、最長で三十日を過ごす。


 一方で《殺人者》と呼ばれる配役がクラスの中に潜み、生徒を一日一人”消す”らしい。いや、消すことが出来るのは《殺人者》ばかりじゃない。それ以外の生徒も特定の生徒を消せる。


 そんなゲームを仕掛けて来た相手に対する、最も有効的な手段は何か? 無視することだ。

 

 何人かの生徒が疑問を口にし、ゲームマスターに意義を尋ねる。教壇の上には、小型のスタンドに設置された集音マイクと思わしきものがあった。


「カードを捲らない場合は棄権と見做し、消えて頂きます」


 すると男子生徒が声を荒げた。

 消えるとは何だ。


「痛みの無い死です。理不尽に奪われるということです」


 続いて女子生徒が尋ねた。

 そんな権利があると思っているのか。


「死は誰に対しても権利を持っています」


 やがてカウントダウンが始まる。十から始まり、九、八、七。


 残念ながら無視できる状況じゃなかった。この場は否応が無い。覚悟を決めて俺はカードを捲る。


《主人公》


 役割を認識した瞬間、カードは霧散して消えた。頭に刻み付けられるように情報が流れる。配役に付随する特記事項と能力が、不気味にも自動的に認識された。


 どうやら俺は、クラスから《殺人者》を見つけ出さなければならないらしい。


 小さな悲鳴や驚きの声が教室内で上がる。皆も同じようにカードを手にし、役割を振り分けられたようだ。


 スピーカーからアナウンスが流れ、配役の説明が再度行われた。


《殺人者》《学級委員》《優等生》《不良》《傍観者》《オタク》《いじめっ子》《いじめられっ子》《陰キャ》《陽キャ》《リア充》《ひきこもり》《幼なじみ》《親友》《ライバル》《風紀委員》《放送委員》《体育委員》《保健委員》《給食委員》《図書委員》《書記》《霊感体質》《生き物係》《ガリ勉》《花係》《掃除係》《エロマスター》《高嶺の花》《主人公》


 それが教室に集められた、三十人の”クラスメイト”に課された配役だった。俺達は何処とも知れないこの学校で、それぞれの配役に沿って生きなければならない。


「ゲーム開始です。まずは状況をお楽しみください」


 ゲームマスターがふざけたことを告げる。幾ら待ってもスピーカーから音がしなくなった。


「え? マジ?」「っていうか、ここ何処なんだ?」「持ち物が消えてるんだけど。ねぇ、なにこれ」等と、教師がいなくなった後のクラスのように、そこかしこでクラスメイトが声を上げ始める。


 俺は廊下に面した席の、一番後ろにいた。


 立ち上がって今すぐにでも事態を収拾したかった。それが《主人公》という役割に求められている事柄かもしれず、何より混乱が始まる前に、皆で冷静になって現状を整理したいと思ったからだ。


 ただ……この教室の何処かに《主人公》と対になる存在、《殺人者》がいる。


 説明によれば《殺人者》はクラスメイトを毎日一人、消さなければならない。消さなかった場合、《殺人者》自身がゲームマスターによって消される。


 しかし、状況だけを与えられて、突然そんなことを言われて、誰が納得出来るというのだ。

 

「なぁ、さっきの話って本当なのかな? オレ、《優等生》なんだけどさ」


 初対面同士の集まりの中でも、順応性の高い生徒は少なからずいる。


 皆が探るように近くの席のクラスメイトと会話を交わそうとしている中で、三つほど前の席の男が立ち上がり、そんなことを言った。


 サッカーなどのスポーツでもしたら似合いそうな、クラスで中心にいるタイプの男子生徒だ。《優等生》。自分の配役を口にしたことで、自然とクラスの注目が集まる。


 自分が見られていることを自覚すると、ソイツは周囲を見渡した。


「えっと……俺さ、」


 名前を名乗り、簡単な自己紹介をする。出身の学校名も告げていたが、俺を含め、分かる人はいないようだ。


「突然こんなところに集められてさ、おかしくない? オレ、ここに来るまでのことを全然覚えてないんだ。皆もそうなんじゃない? それで、ゲームに参加しろだ? 最長で三十日になる? 《殺人者》は毎日一人を消すだって? まったく意味が分からないんだけど。テレビか何かの古臭い企画? それとも企業の実験?」


 共感を集めるように言うと、幾人かのクラスメイトが同調するような声を上げる。それを認めると、《優等生》を名乗った男はふっと微笑んだ。


「あと、何だっけ? 配役に沿ったことをしないと罰に見舞われるとかさ、その配役に沿ったことって、どんなことなんだよ。曖昧過ぎない? なぁ?」


 彼はもともと、クラス内の人身掌握には長けているのかもしれない。先頭に立ってそう言うことで、クラスメイトはソイツの言うことに耳を傾けようとしていた。


 そのことに《優等生》を自称する男は満足したのか、続いて大胆な行動に出た。隣の席に座る、《気弱そうな男》の胸倉を掴んだのだ。


「ちょっとごめんな」


 あぁ、お前は嫌な野郎だ。俺の眉間に軽く、皺が寄った。


 クラス内カーストとか、そういうものが俺は嫌いだった。そんな物は本当は存在していないのに、虚構に依りかかり、傲慢にもそれを信じている奴が少なからずいる。そして、そういう奴らは大抵が人を見下すことが大好きな連中だ。


 《気弱そうな男》が困惑しているにも関わらず、《優等生》は周囲に誇るように言う。


「例えばさ《優等生》が、こんな風に胸倉を掴んだら」


 口の端で微笑み、椅子に座っていた男子生徒を持ち上げようとした――その瞬間。


「は? あ、な、え? なんだ!?」

 

 男はその男子生徒から手を離し、両手を頭に抱えて苦しみ出した。


「ふ、ふざけ、あ、あぁ、うあぁあああぁああああああ!」


 俺はその光景を、目を見開いて迎えた。男は頭を抱えて激しく身を悶え、叫んでいた。


 冗談や、演技で出来ることじゃない。目の端には涙のようなものさえ見て取れる。のみならず、口の端からは本来は食べ物を溶かすための分泌液が、垂れ出していた。


 教室中のクラスメイトが、《優等生》の叫びを、痛みを聞いている。


 どうにかして痛みをやり過ごそうとしているのか、男は体を机にぶつけながら、覚束ない足取りで俺の横を通り過ぎた。教室後方へと向かい、胸の高さにある、連なったボックスロッカーの上に身を倒れ込ませた。


「いてぇ、いてぇよ。なんだよ、これ、マジで、なんなんだよ」


 痛みは過ぎ去ったのか、涙するように男が言う。いや、俺には実際、激痛に耐えかねて泣いているように聞こえた。


 スピーカーから不穏なぶつ切り音が鳴り、ゲームマスターの声が響く。


「クラスメイトは自分の配役通りに振る舞う義務があります。それを逸脱した行為を取った場合、死にはしませんが、死ぬほどの頭痛を味わうことになります」


 再び訪れた静寂の中で「んだよ、それ」と《優等生》が呟く。直後、苦悶の呻きに似た声が《優等生》から上がり、叫ぶように口から痛みを吐き出した。


 《優等生》が悪態を吐く。ただそれだけのことで、逸脱行為と見做されるのか。

 俺たちは声を押し殺した。誰がそんな状態で声を上げられるだろう。


「わ、わたし。わたし、《学級委員》」


 だというのに、暫くすると教室前方から椅子を引く音が聞こえた。髪を後ろに括った快活そうな女性徒が、教壇の近くで立ち上がった。


「確か……《殺人者》以外でも、特定の生徒なら消せるんだよね? 説明通りなら、《学級委員》は《優等生》を消せる。な、何だろうね、それ。真面目な人間は、クラスには二人もいらないって、そういうことなのかな。はは、ははは」

 

 顔は笑っていたが、目は笑っていなかった。《学級委員》を名乗る彼女が、ゆっくりと歩を進める。ロッカーに臥せっている《優等生》が、目を見開きながら振り向いた。


「消すって、どういうことなんだろう。痛みの無い死ですって言ってたけど、そんなこと、本当に出来るのかな? 嘘なんじゃない。罰だって怪しいよ。それ、どうやってやってるの? さっきの突然現れたカードといいさ、おかしなこと、多すぎだよね。《優等生》くん……君、演技してない? ねぇ、聞いてる? いきなりそんなことしてさ、ゲームマスターと、グルじゃないんだよね」


 その言葉に、《優等生》は顔を引き攣らせた。


「は? な、なに言って。んなわけ、んなわけ」


 教室の広さには、限りがある。女子の歩幅でも、十数歩で距離を埋められてしまう。《学級委員》を名乗った彼女は、もう《優等生》の目の前にいた。


「やりかた、わかんないけどさ。消すのって、どうやるのかな? こう?」


 力なく振り返っていた《優等生》の顔を覆うように、右手を開く。


「う、嘘だろ。なんだよ、違うよ、グルなわけないだろ。なぁ、おい、オレ、違うんだ。ただ、ちょっと格好つけたかっただけでさ。なぁ、なぁ!?」


 必死になって縋りつくような声に、《学級委員》が冷静に返す。


「大丈夫? 《優等生》がそんな風に《優等生》でなくなると、また、頭が割れちゃうんじゃない」


「え? あ、オレ、ち、ちが、」


 皆が教室後方に振り返り、その事態を見守っていた。俺は、止めなくてはならないという意識よりも強い得たいの知れない恐怖に鷲掴みにされ、動けないでいた。


 《学級委員》だという彼女がその事態を動かす。


「な~~んてね。《優等生》くん、クラスの和を乱しちゃダメだぞ!」


 そう言うと彼女は、笑顔でも向けたのか軽く首を傾げる。手を下ろした。《優等生》が半笑いの表情のまま、床に崩れ落ちる。


 また、教室は静かになった。それを一人の男子生徒が打ち破る。


「ひゅ、ひゅ~~~! 《学級委員》ちゃん、マジ、半端ねぇ!」


 そんな言葉遣いなどしたことがないだろう、《小太りの真面目そうな男》だった。《学級委員》と呼ばれた彼女は振り返ると、ぎこちなく、だがはっきりとした笑みを咲かせた。


「こ~ら、はしゃがないの。そういう君は、《陽キャ》君かな?」

「え、あ……そ、そうです。見た目通りの《陽キャ》、ひゃっほぉ!」


 教室が徐々に、騒然とし始める。消すということが、消されるということが、どういうことなのかは未だ分からない。


 だが、痛みは確かにそこにあるようだ。プライドの高そうなクラスの中心人物が、恥も外聞も捨て、泣き喚くような。


 そして自分も配役に沿った行動を取らないと、同じような痛みに襲われる可能性がある。


「おぉい! だ、誰かぁ。《優等生》を、ほ、保健室に連れていってやれよぉ」

「お、おぉ。じゃあ、俺、放送、《優等生》が保健室に行くこと、放送するよ!」


「って、どんな放送だよそれぇ!?」


 分かり難くはあったが、オドオドとしながらも机に足を乗せて声を上げた小柄な女の子は《不良》で、それに続いた短髪の男は《放送委員》だろうか。


 場の雰囲気に飲まれてか、配役に沿った発言をしようとしたクラスメイトに、《陽キャ》を名乗った男が突っ込みを入れていた。三人は誰もが真面目そうな生徒だった。それぞれの配役を演じようと必死になっている。


「ふ、ふざけ……良くないぞ!」


 愛想笑いを浮かべながら和気あいあいを演じている――そんな異様な場に、誰かの強い声が放たれる。目を向けると《優等生》だった。


「人を、人を馬鹿にすることは、良くないことです!」


 そう言って、立ち上がる。目は怒りに燃え、同時に痛みのためか潤っていた。本当は先程も、「ふざけるな」と叫びたかったのだろう。だが自制心を発揮して《優等生》は《優等生》を演じていた。


「が、《学級委員》も、クラスの和を乱すのは、良くないですよ。どうして彼女には、罰が訪れないんですか。ギリギリのラインだったということですか。何ですか……それ、不公平です! オレ、いや、ボクは、そういうの、許せません!」


 荒い息を吐きながら、《優等生》が《学級委員》に歩み寄る。


「《学級委員》を消せるのは、誰でしたっけ。そうだ、《高嶺の花》だ。誰ですか? 《高嶺の花》は? この人を消してくださいよ。あぁ、ひょっとしたら、この人が《殺人者》かもしれない!」


 半狂乱になったように、《優等生》が言葉を散らかす。教室が三度、息を飲む。


「止めておけ、自分の配役は漏らさない方がいい」


 そんな《優等生》に向けて冷や水を浴びせるように、冷静に言い放つ男がいた。通路を隔てて俺の隣にいる、《眼鏡の男》だ。


「親切心から言ってやるがな。自分の配役を明かすのは止めておいた方がいい。そこの《優等生》と《学級委員》、あとは《不良》と《放送委員》か? お前らは既に丸裸みたいなものだ」


 彼が睨みつけるような視線を送ると《学級委員》以外の人間は、途端に臆したようになった。


「生徒を消して利益を得るのは《殺人者》ばかりじゃない。自分が消すことが出来る配役を消した生徒は、《殺人者》には消されなくなるという、大きな利益を得る。なぁ、おい、聞こえているかゲームマスター? 先程の説明によれば、つまり、そういうルールでいいんだよな?」


 冷徹さと鋭敏さを感じさせる《眼鏡の男》が尋ねると、スピーカーが震え、ゲームマスターが応えた。


「その通りです。《殺人者》でない生徒も、例外を除き、《消すことが出来る配役》の生徒がいます。生徒を消すことに成功した場合、消した人間は《殺人者》から消されることはなくなります。但し、指名を間違えると消えるのは自分となります。消された生徒の机には、翌日になると花が置かれます」


 その答えを聞くと、《眼鏡の男》は鼻を鳴らすように笑った。


「まったく、ふざけたゲームだ。だが配役を明かさなければ、《殺人者》にだけ注意を払えば良いことも分かる。《殺人者》を見つけ出す方法は幾つかある。万人による万人の監視だ。オレはこの方法を提案したい。誰も勝手にこのクラスから動くな。トイレなどに赴く場合も、最低でも三人一組で行動しろ。そうすれば、」


 《眼鏡の男》が一見して抜け目の無い提案を投げかけていると、不安の声が上がった。先程の《優等生》とは異なる、見るからに《爽やかそうな男》だ。


「いや、でもそれって……」


 彼はそれから先の言葉を、留保した。その間がクラスメイトに、先の言葉を図らずも自然と考えさせてしまう。いや、でもそれって……。


 《殺人者》を犠牲にしようということなのか。

 自棄になった《殺人者》に、誰かが消される羽目にならないか。


「さ、殺人者ENDってのも、さっきゲームマスターが言ってなかったか?」


 続いて言葉を発したのは、《放送委員》らしき男だった。


「それって、どんな条件なんだ? ゲームでいうと、バッドエンドみたいな感じなのかな。《殺人者》が、クラスメイトを皆殺しにするとか? は、はは。全体監視もいいけど、結局はそれ《殺人者》を炙り出そうってことだろ。《殺人者》が強行して誰かを消したら……何人かは必ず犠牲になる。もっと言うと《殺人者》とクラスメイトで泥沼の戦いにならないか?」


 俺たちはつい先程まで、ただの高校生だった。それが奇妙なゲームに巻き込まれ、無理やり配役を宛がわれている。それは《殺人者》にとっても同じことだ。


 その《殺人者》を見つけ出すことは、犠牲を払えば出来ないことはない。しかし、それでは結局ゲームマスターの手の内で踊ることとなる。


 どうすれば良いだろう? 口に出せないことばかりだが、主人公ENDのことを皆に伝えてみるか? いや、それは危険過ぎる。《主人公》は誰からも消される存在だ。なら……なら……犠牲を出してでも、やはり《殺人者》を捕らえるか?


 その考えに、ぞくりと震えた。一体、俺は何を考えているのか。思考が麻痺して、上手く物事を考えられない。だけど、それは皆にとっても同じじゃないのか。


「え? な、なんだよ、え? ちょ、おい、お前」


 そのとき、《優等生》が怯えた声を上げた。視線を送れば、《学級委員》が再び《優等生》に手をかざしている。深遠を覗き込むような目をして彼女は言う。


「《殺人者》に、消されなくなる方法があるんだよね。それが、消せる配役を消すこと。なら、それをやった人間は……《殺人者》の犠牲にならないってことだ」


 彼女は、深遠を覗いているのではなかった。覗き込まれていた。ゲームの最初の犠牲者がいるとするなら、それは……。


「ねぇ、《優等生》くん。消えてみる? いや、」


 それから《学級委員》は微笑んだ。悪戯に、明確に。


「消えちゃえ、消えろ」


 パンッと爆ぜる音がして、《優等生》の存在が弾け飛んだ。血も、何も降らない。ただ弾け飛んだ。虚空に収束されるように、存在を弾き飛ばされた。


 《学級委員》が目を見開く。


 クラスメイトゲーム。

 それが俺たちが参加させられている、ゲームの名前だった。


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