第31話

 トイレから出て席に着く途中、今まで顔をしっかり見ることのできなかったジーンズの顔を確認して、今日のシフト表を鞄から取り出して見てみると、課長と牧野さんと一緒にお昼に行くことになっていて、この三人だと『イタトマ』(イタリアン・トマト)に行く。靖国通り沿いにあるそのお店は、パスタを扱うチェーン店で、『パスタランチ』が六〇〇円なのが財布に優しく、新宿でお昼を外で食べようと思うと八〇〇円や九〇〇円もかかってしまうのが常で、だからといってお昼までハンバーガーを食べたいとは思わないし、仕事の合間に私語は厳禁だから(といっても話しまくっているけれど)お昼くらいしかゆっくりと話す時間がなくて、せっかく一緒に行ってくれる相手がいるのだから話をしながら楽しいお昼時間を過ごしたいし、そうすると、『イタトマ』はゆっくりできるし、(席によってエアコンの利きが違い苦労するけれど)職場からも近くて、常連になりつつある。だからまた、朝は『ロッテリア』、昼は『イタトマ』によって生きて行っている自分は「ファーストフード店でなりたっている」などと考えて、「それがどうした」と自分に突っ込みを入れた。

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