第26話

「国道一号線を真っ直ぐ行けば関西まで行ける」と石田が(この通りに)話していたのだけれど、地図を見ると愛知県で北上して行く国道一号線は名古屋市内で直角に曲がっていて、その交差点を左折しないで真っ直ぐ行ってしまうといつのまにか国道四一号線に繋がっていて、石田が言ったように「真っ直ぐ」を素直に受け止めると、岐阜に行ってしまう。

 と、どうして考えているのだろうと不思議に思い記憶を辿ると、その前は国道四一号線を南下すると国道一号線になってしまうと考えていて、国道四一号線のことを考えていたのは、『エア・フロント・オアシス』という公園が国道四一号線の近くにあるからで、高校時代付き合っていた恋人と時々遊びに行った公園なのだけれど、デートコースに公園が含まれているなんて田舎の高校生らしくて、今となってはちょっと恥ずかしい気もするのだけれど、『エア・フロント・オアシス』の「エア・フロント」の由来はすぐ近くに名古屋空港があるからで、空港とのあいだに道路をひとつ挟んで作られた公園は、飛び立つ飛行機を真正面、そして真下から眺められ、空を飛んでいる(飛び始めたばかりの)飛行機の窓のひとつひとつが確認できるほどに近くて、飛行機に乗るため空港へ行き、そこで見る飛行機は大きいのだけれど、「あれが飛ぶんだ」という(飛ぶこと自体は)想像のものでしかないし、乗り込めばその大きさはあまり感じることがなくて、でも、飛び立ったばかりの飛行機を真下から眺めると、本当に「鉄の塊」(材料は鉄ばかりではないと思うのだけれど)が飛んでいる「実際」の感動があって、僕はその公園が好きだった。(以前、自然界で一番強靭な繊維は『蜘蛛の糸』というのを聞いたことがあって、蜘蛛の糸を鉛筆ほどの太さに束ねると、その一本でジャンボジェット機を持ち上げられるらしい)

 で、どうして名古屋空港のことを考えていたかというと、名古屋空港よりも先に北海道の千歳空港を思い出していて、「チトセ」という言葉から連想したのだけれど、昔のテレビアニメで『きんぎょ注意報』というのがやっていて、なぜか主人公の名前よりも「チトセ」という生徒会長をやっていた(はずの)キャラクターの名前を覚えていて、『きんぎょ注意報』が終わると、同じ時間帯で『美少女戦士セーラームーン』が始まって、セーラー服の女子高生(中学生だったか?)が世界を救うのだけれど、主人公たち(僕は火野レイが好きだった)はいつまでもセーラー服で、『ジョジョの奇妙な冒険』でも「空条承太郎」はエジプトへ行っても学生服を脱ぐことはなくて、学生はどこにでもいるような感じがする。などと感じたのは『ロッテリア』が誰でも受け入れる場所であって、今の時間は仕事に行く前のサラリーマンやOLが多いし、昼になれば主婦や学生も来店して、平日休日関係なくどうして学生は学生服で街の中にいるのだろうと考えはじめたときに、『ジョジョの奇妙な冒険』や『バビルⅡ世』や『美少女戦士セーラームーン』のことを考えてしまったから、巡り巡って国道一号線のことを考えることになってしまって、『思考の発端』を捕まえることができて満足していると、目の前のテーブルでは旅行の話になっていた。

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